「・・・ただいま帰りました・・・。」
「おかえりなさい。ちょうどよかったわ!もうすぐ食事が出来るから!」
「はい。・・・あの、京子さん・・・。」
「なーに?・・・はい、出来上がり!」
「さっ。食べましょ?」
「はっ・・・はい・・・。」
田吾作が夢見ていた、彼女の待つ幸せな生活・・・。
なのに、左京の様子がおかしいせいで、心から楽しめない。
「・・・どう?」
「うんっ!美味しいです!!」
「よかった!田吾作くんの好みの味付けを、覚えなくっちゃね!」
「・・・あの・・・京子さん・・・。」
「なに?」
「・・・向こうで話しませんか?」
「いいわよ。」
田吾作が自分に何を聞きたいのか、京子には分かる。
左京の好きな相手・・・それがいったいどんな女性なのか、知りたがっているのだ。
「あの・・・京子さん・・・。」
「はい?」
「この前・・・左京さんのところに行って貰いましたよね?」
「うん。」
その時のことを、京子はあえて、自分から話さなかった。
ただ、『左京には会えなかった』と田吾作に告げただけだ。
「その・・・そこには・・・女の人はいましたか?」
「ええ!いたわよ。二人。」
「二人・・・。」
「二人とも可愛かったわ~。一緒に服を買いに行ったのよ。やっぱり女同士っていいわね!」
「あの・・・それで・・・左京さんの好きな女っていうのは・・・。」
「・・・ねぇ、田吾作くん。」
「はい?」
「・・・左京くんが恋をしちゃ・・・いけないの?」
「えっ?」
京子が何を言い出すのか、と田吾作は訝しんだ。
あの家で、京子は何を見たというのか・・・。
「左京くんだって、私たちと同じ、普通の人間よ?恋をする権利くらい、あるでしょ?」
「・・・左京さんは・・・普通の人じゃありません。」
「えっ・・・。」
「あの人は・・・僕の夢なんです。」
「・・・夢?」
田吾作は、サンセット・バレーで暮らしていた時のことを思い出していた。
遠い目で、思い出を手繰り寄せ、京子に話し始めた。
「僕は・・・サンセット・バレーで、左京さんのライブを見ました。何度も何度も見ました。あんなに魅力的なアーティストは、他にはいない。僕はあの人に憧れて、この業界に入って、そして、左京さんのマネージメントをすることようになって・・・。本当に嬉しかった!!憧れの左京さんのマネージャーになれるなんて・・・。だから僕は決めたんです。」
「・・・何を?」
「僕はあの人を・・・世界がひれ伏すトップ・スターに押し上げる、って!!」
「その為には、恋なんかしてるヒマはないんですよ!スキャンダルなんか、起こさせちゃいけない!!」
「・・・はいはい。」
思い込んだら一途なところ・・・。
それこそが、京子が田吾作に惹かれた一番の要因なのだが、こればかりは自分も譲れない。
「でもね、田吾作くん。左京くんが誰かを愛して、そのことが彼を更に魅力的にしてるのだとしたら?」
「そんなことはありません。」
「どうしてそんなことが言えるの?左京くんは・・・以前とは変わったわ。好きな人が出来て、急激に売れ出したんじゃないの?」
「違います!!」
「僕のマネージメントの腕ですっ!!」
「ずいぶん、自信あるのね。」
「もちろんです!」
「違ったらどうするの?」
「そんなことは・・・ない!」
「明日も左京さんを迎えに行かなくっちゃ。」
「・・・私も行くわ。」
左京が売れた一因は、確かに田吾作のマネージメントもあるだろう。
しかし、それ以上に、橘花への愛の深さが、左京を歌わせている、と京子は思っていた。
「・・・左京、寝てるのか?」
「・・・いや・・・。」
横になって目を閉じても眠れない。
いったい、今何時なのだろうか・・・。
「お前・・・夕方、お前のマネジャーとか言うヤツが、ぎゃーぎゃー騒いでたぞ。」
「ああ。・・・いいんだ。」
「仕事・・・行ってないのか?」
「・・・行く気にならないんだ・・・。」
橘花には、左京の面倒は見てやらない、と言ったものの、どうやら一日中引きこもっていた様子の左京を心配して、ギルは部屋にやってきたのだった。
「どうしたんだ、お前・・・。」
「俺たちの結婚式は三日後だ。結婚したところで、今までの暮らしとそう変わるわけじゃないが、これからはそうそうお前の相談に乗ってやれないかもしれないぞ?」
「・・・分かってる・・・。」
「しっかりしろ!左京!!」
「う・・・。」
そう檄を飛ばせば、いつもの左京なら一つ頷いて、顔を上げる。
だが、この時は違った。
「・・・うっ・・・えっ・・・。」
「えっ・・・え・・・っ・・・。」
「え・・・?お・・・おい・・・。」
「う・・・わぁーんっ!」
「さ・・・左京っ!どうしたっ!!」
ぼろぼろと泣き出した左京を見て、ギルは驚いた。
「お・・・俺・・・俺・・・橘花に嫌われたら・・・。」
「もう・・・歌なんか歌えない・・・。生きてけない・・・。」
「左京!!」
ここまで追い詰められているのか・・・とギルは左京を抱き締めた。
「うっ・・・えっ・・・えっ・・・。」
これが・・・佐土原左京か・・・。
ステージに立てば大勢のファンを切り従え、魅了して、自信たっぷりに歌い上げる佐土原左京が、たった一人の女の愛を得られない、と自分に縋って子供のように泣きじゃくっている。
それほどまでに橘花を慕い、焦がれ、求めているのだ。
「左京・・・左京、よく聞け。橘花はお前のこと、嫌っちゃいないぞ。」
「・・・うぇっ・・・うっ・・・ウソだ・・・。だったらなんで・・・俺と顔合わせないようにしてるんだ・・・。」
「ウソじゃない。本当だ。一生、お前を好きだ、っていう気持ちは消えないって・・・そう言ったんだ。」
「橘花・・・が・・・?」
「そうだ。ほら、顔、上げろ!」
「くっ・・・。」
「・・・な。いい子だ。左京・・・。」
「・・・ギル・・・。」
自分より、ずいぶん年上のはずの左京が、自分の息子のように思える。
この純粋さ・・・。
誰にでも見せる顔ではない。
普段は大人の顔をして、クールに、何事にも動じない、という態度で振舞っている左京が、自分の前ではこんなにも小さく、ボロボロになって泣きじゃくっている。
「ほら。顔上げろ。鼻水を拭け。」
「う・・・ん・・・。」
「俺、昼間、橘花と外に行ってたんだ。お前のこと好きか、って聞いたら、好きだ、ってあいつ、二つ返事で答えやがったぞ。」
「ほ・・・ホントに・・・?」
「・・・えっ・・・え・・えぐっ・・・。」
「な・・・泣くなって!!」
「お前がそんなんでどうする!!橘花のヤツ、ほんっと口数少なくてまいっちまうんだけどよ。それだけははっきり言ったから。」
「俺・・・。」
「・・・けど左京。あいつ、気になることを言ってた。」
「・・・え?」
「自分は・・・お前の足枷になる、って言ってたんだ。」
「あ・・・足枷!?なんだよ、それっ!!俺・・・そんなこと、一度も思ったことないよ!!」
「だから橘花とちゃんと話し合え、って言ってるんだ。お前のその気持ち、伝わってないぞ?」
「そ・・・そんな!!」
「・・・ものすごく迷った顔をしてた。あいつが何を考えてるのか、俺には分からん。
でも・・・時間がない、とも言ってた。」
「時間・・・?」
「時間ってなんだ?時間がないのはこっちの方だ。」
「だからお前がぐずぐずしてるからだろ。・・・左京、すごく嫌な予感がするんだ。」
「・・・え?」
「お前・・・今から橘花を連れ出せ。」
「こ・・・こんな夜中に・・・?」
「ね・・・寝てるだろうし・・・部屋に鍵が・・・。」
「お前・・・そんなことばっかり言ってると、ホントに一生そのままだぞ?・・・もうすぐ夜が明ける。鍵がかかってたら俺がこじ開けてやる。」
「・・・ギル・・・。」
「・・・ま、お前が一生このままでいいって言うんなら、俺はもう、お前らのことは知らない。お前がどうなっても、手を貸してなんかやるもんか!いい加減、勝負に出ろ!」
「・・・。」
「・・・分かった。」
「よし!」
「・・・左京・・・お前があいつの迷いを断ち切ってやれ。お前にしか出来ない。あいつが何を考えていても、お前はしっかりそれを受け止めてやるんだ。その為には・・・お前が迷わないことだ。」
「そう・・・だよな。俺がしっかりしなきゃ・・・俺がふらふらしてるから、あいつも頼れないって思ってるのかもしれない。」
「頑張れ!左京!もうお前の泣き顔見るのなんか、ゴメンだ!」
「すまなかった・・・。本当に・・・本当にありがとう、ギル。」
「行け、左京。もう夜が明ける。」
「ああ。」
「行くよ。」
そう言って微笑んだ顔には、まだ涙の痕が残っていた。
けれども、少年のようなその笑顔は、いつもの左京に戻っていた。
yuzuさん、こんばんは!
返信削除左京さん、泣いちゃったーー\(゜ロ\)(/ロ゜)/オロオロ
左京は本当に橘花のこと好きなんですね。
だからこそ悩んで落ち込んでそして泣いてしまった・・
それでも仕事を全て完璧こなしている左京。
やっぱカッコいいです^^
でもギルの活躍なくしては語れません!
ギルも本当にカッコいい!!
決戦前夜ということでこれからが本番ですね!
橘花も意地を張らず、素直に左京の思いを受けれてほしいな~><
さてさて余談ですが本編のタイトルをみて、
ドリカムの決戦は金曜日が頭の中でリピしちゃいました♪
Naonさん、こんばんは!!
返信削除タイトル、『決戦は金曜日』にしようかと、ずいぶん迷ったんですよ(^_^;)ゝ
でも、ギルとロッタちゃんの結婚式が土曜日・・・その三日前だから水曜日のはず・・・なので、やめたんです。
この辺りから、タイトルに、歌の題名が続いたりするので、イメージしながら読んでくださると嬉しいです♪
えへ(*゚ー゚)>左京、泣かしちゃった。
ずっと泣かせたかったんですよ。
男でも泣くだろうな、って思って。
仕事を完璧にこなしてるのは・・・ミュージシャンなんかやめてやる、っていうのと、状況次第では続ける、っていうのと、左京が両方考えてるからです。
このままミュージシャンを続けられるのか・・・それは田吾作次第♪えっ( ; ロ)゚ ゚
ギルは大活躍です♪
ホント、包容力があって、頼れるんですよね~(^-^*)
これからロッタちゃんと結婚して、いい旦那様になって、ゆくゆくはいいパパに♪
甘えさせてくれる人って、周りにいるとすごく安心感あるんですけど、左京はもう、ギルに甘えてばっかりいないで、今度からは橘花に甘えさせてもらわなきゃ!!
ああ~・・・今、あさっての分の記事を書いてるんですが・・・一人でニヤニヤしてしまう~( ´艸`)
春はもうすぐです!!
こんばんわ!!
返信削除今日はいっぱい読み進みました☆
ダニエルが可愛いww
あと1号2号www
めっちゃ可愛いですね!「ぴっ」て(*´▽`*)
それにしても、ユズさんのところの京子さんはステキな服着てますよね。
私のところにも出演していただいてるんですが、DLしてうちのところに来たら上下真っ白な服装で。。。
着替えさせてないのでなんだか申し訳ない状態です(^^;
左京さんと橘花ちゃんがどうなっていくのか。
ハラハラドキドキしながら読み進めます☆
是非リンク貼らせていただきたいです!よろしいでしょうか??
ネコさん、おはようございます!!
返信削除わ。ダニエル、可愛いなんて言ってもらえて、きっと大喜びですよ!!
最近、左京ばっかりに人気が集中しちゃってるんでб(^_^;)
1号と2号も可愛いでしょ?
最近、あんまりしゃべらせてないんですけどね。
京子さんですね、DLしてきた後、別データでアクティブにして、その時髪型とか胸の大きさとか身長とかメイクとか、服とか替えて、それからカタログに入れなおしたんですよ~。
あの服は、たぶんレイトナイトに入ってるデフォの服です。
今まであんな感じの服が似合う女の人がいなかったので、嬉しい(*^-^)
マスターコントローラー(というMOD)があれば、非アクティブでも、服を替えたり出来るので、重宝してます♪
左京と橘花は、もうそろそろ大詰めです。
どうなるのか、楽しみにしててくださいね!
リンクですか!?喜んで!!
どうぞどうぞ!!ご自由に!!
ワタシもネコさんのブログのリンク貼りますね!
ありがとうございます!!