「よぉ!久しぶりじゃないか!・・・ああ。元気さ!」
「・・・うん?へぇ・・・そんな伝説があるのか・・・。そりゃ面白そうだ!」
「うん。また連絡する。」
「・・・っと・・・。いいタイミングだったな。」
「・・・ま、もともと橘花が謎を解くまで、ってつもりだったしな。」
それは、取材の依頼の電話だった。
クレメンタイン家の謎はすべて解いた。
そろそろここを離れる時がきたようだ。
「・・・書き出しは、こうだ。『辿りついた土地は、その半分が水没し、湿地帯の広がる荒野だった。』」
「『流れの速い二本の河に挟まれ、住む人もなく、忘れ去られた土地。』・・・」
「・・・うーん。もう一つ捻るかなぁ・・・。主人公の名前は、なんにしよう・・・。」
エリックから書籍化の許可はまだ貰っていなかったが、おそらくエリックは承諾する。圭介は今まで何度となく読み返した記録を改めて見直し、出版する為に、手を加えようとしていた。
「あっ!左京、ちょっといい?」
「ん?」
「あのさー・・・えーっと・・・。」
「なに?」
左京に対して直球で勝負する!・・・と意気込んだ割には、いざ、本人を目の前にすると、ダニエルは聞けなくなってしまった。
しかし、ここはうまく話を持っていかなければ、宗太に顔向けが出来ない。
「えーっと・・・あ!ギルとロッタ、結婚すんだってな!」
「ああ!春になったら、式挙げるって言ってたぞ?」
「びっくりしたよ!あのロッタがなぁ~。」
「ロッタちゃんは最初っからギルのこと好きじゃないか。あいつのこと追っかけてきたんだし。」
「そうだけどさぁ。ロッタあいつ、いろんなオトコ、口説きまわってんぜ?俺、いつか誰かに刺されるって思ってたんだけど・・・。」
「まぁ、あの子に口説かれると、オトコは悪い気はしないからな。」
「結婚なんかして、大丈夫かよ!?」
「結婚を決めたってことは、もうそんなことしないって覚悟の表れなんじゃないかな?
ダニエル、お前、最近ロッタちゃんに誘われたか?」
「・・・いや・・・そういえば・・・。」
「だろ?」
「結婚ってのは、生半可な覚悟じゃ出来ないよ。憧れとか、そんなんだけじゃダメだろ?」
「・・・うん・・・。・・・左京は・・・?」
「ん?」
「もう一回結婚したいとか・・・思う?(・・・うまい!俺っ!)」
「なんで?」
なんで?・・・と問われると、これまた言葉に詰まる。
左京の方が、一枚上手だ。
「いや・・・したいのかな・・・って・・・。」
「したいだけじゃ出来ないだろ?そういう女性に巡り会わなきゃ。」
「・・・じゃ、巡り合ったら・・・どうする・・・?」
「する。」
左京がそう即答したのに、ダニエルはぎょっとした。
「・・・えっ・・・。」
「するさ。」
「あ・・・そう・・・なんだ・・・。」
いつものように軽い調子で聞いたダニエルに、左京は真剣な顔で答えた。
今までの左京とは違う。
左京は確かに人気のあるミュージシャンで、ステージに立てば輝くようなオーラを放っていたが、家にいるときはごく普通の、自分たちと同じように生活している人間なんだ、と感じていた。
だが、今の左京は、なにか・・・覚悟とか決意とか・・・そんなものが漲っているような顔をしている。
「・・・あ・・・俺、論文読まなきゃいけなかった・・・。」
「・・・ああ。」
『・・・なんで聞けないんだ・・・俺・・・。』
そんな左京に、橘花のことをどう思っているのか、などと問い質せなくなり、ダニエルは逃げ出していた。
『・・・ダニエル・・・悪いけど俺は結婚するさ。橘花と。』
『・・・あれ・・・?』
パソコンのキーを叩きながら、圭介は、背中でずっと二人の会話を聞いていた。
『左京って・・・もしかして・・・いや・・・有り得ないことじゃない・・・か・・・。』
ダニエルが左京に絡んで、軽くあしらわれている・・・。そんな会話だった。
ダニエルは、橘花に惚れている。そのダニエルが、妙な具合に左京に絡むのは、つまり・・・。
『・・・トップレベルのミュージシャンと、20歳以上年の離れた追っかけの女の子の恋物語・・・。・・・小説なら・・・フィクションなら面白い設定だ・・・。読者も惹きつけられるし、大喜びだ。けど・・・現実となると・・・いや・・・。』
『・・・左京はいいオトコだ。あんなオトコに惚れられたら、女冥利に尽きるってもんだ。』
『・・・本気なら・・・な。』
圭介は、今、ようやく気づいた。
なぜ左京が、あれほどまでに橘花を気遣ってくれていたのか。
そして、自分に対して、なぜ一歩引いた態度を取っていたのか。
左京は橘花に惹かれている。
もしかすると、二人の間には、もう既に何かあったのかもしれない。
『はぁ・・・疲れた・・・。』
『リハとミーティングばっかり・・・。ライブの方がなんぼかマシだな。』
『橘花・・・もう寝ちまったかな・・・。顔・・・見たいな・・・。』
ライブツアーの為に、地元でのライブの本数はかなり絞っている。
けれども、全国に打って出る為に、その準備に追われていた。
「うーん・・・もうだいぶ遅いしなぁ・・・。」
もしも橘花がもう、部屋で休んでいたら、ちょっと覗いて寝顔を見るだけでもいい・・・そんなことを考えていた。
「・・・っと・・・あれ?まだ起きてたんだ。(俺、ツイてるっ!)」
「うん。見たい番組があって・・・。」
そんな左京の願いが通じたのか、橘花はまだ起きていた。
「なに見てんの?」
「うん。ドラマの再放送なんだけど、見逃しちゃってて。」
「ふーん・・・。」
「左京、仕事だったの?」
「うん。」
「・・・。」←ドラマ見てる。
『誰も・・・いないな・・・。』
「・・・。」
「・・・。」
「・・・しょっと・・・。」
『よしっ。』
幸い、深夜で家の中は静まり返っている。
『えーっと・・・。』
橘花は食い入るようにテレビの画面を見つめている。
邪魔してはいけないので黙っていたが、こうやって傍にいるだけで、左京は癒された。
「・・・あ、ねぇ、左京。全国ライブツアー、決まったんでしょ?」
「えっ・・・。なんで知ってんの!?」
「もう、ファンの間じゃ知れ渡ってるよ?」
「なんだ・・・そうなのか。」
自分の口から橘花にちゃんと伝えたかった。
そして・・・一緒についてきて欲しい、と言うつもりだったのに、なんだか出鼻をくじかれてしまった。
「ワタシ、左京の追っかけ、何年やってると思ってるの?」
「えーっと・・・5年くらい?」
「15年よ!」
15年間ずっと・・・左京の姿を追い続けてきた。
憧れて憧れて恋焦がれた左京と、今、こうやって話していることが、夢のようだ。
けれど・・・夢はいつか、覚める時がくる。
「もうすぐだね。」
「まだまだ!もー・・・リハばっかで疲れるんだよなぁ・・・。」
「ツイン・ブルックでは、もう・・・あんまりライブ、やらないんだね。・・・寂しいな。」
「・・・そ?」
「うん・・・。」
そうやって、本当に寂しげに自分の瞳を覗き込む橘花が、たまらなく愛おしい。
「でも・・・全国ツアーか・・・。左京、すごいな、やっぱり・・・。」
「・・・。」
「左京のこと待ってるファンが、全国にいるんだよね・・・。」
その寂しげな横顔をみると、ずき、と胸が痛んだ。
「橘花・・・。」
「・・・あ・・・。」
「・・・な、今度・・・さ。二人でゆっくり・・・出掛けよう・・・。」
「・・・。」
「・・・今は・・・ツアーの準備に専念して?」
「え・・・。そればっかじゃ疲れるんだよ・・・。」
「・・・お願い・・・。」
「・・・なんだか眠たくなってきちゃった・・・。おやすみ。」
「・・・うん。」
『橘花・・・。』
あの強い光を放つ瞳で見据えられて、『お願い』と言われると、左京は操られたように、橘花の言いなりになってしまいそうだった。
『・・・思うに・・・。』
どうしていつも、肝心な話しが出来ないのだろう、と左京は考えていた。
『・・・俺が我慢出来なくなって、橘花に触れてしまうから・・・いけないんだよな・・・。』
『でも・・・我慢出来ないんだよな・・・。・・・いてて・・・。』
顔を見ると、話をするより先に触れたくなる。
触れれば抱き締めてキスをしたくなる。
キスをすれば当然・・・抱きたくなる。
橘花を抱きたい・・・痛切にそう思いながら、左京は眠りについた。
なんかなし次回に続いてる感じで。
こんにちわ~♪
返信削除何からどう喋っていいか分かりませぬ~~!
もうね、色んな事に突っ込みをいれたくて(笑)
まずはダニエル。
「もう一回結婚したいとか・・・思う?(・・・うまい!俺っ!)」
とかってひたってるのに左京になんでって言い返されて、結局全然うまくないし(笑)
巡り合ったらどうする?って言われてすぐに『する』って即答されてるし(笑)
もう全然負けてるじゃ~~ん!
後ね、左京がツツツツーってソファを移動してるの、めっちゃ可愛い~~!
橘花にノックアウトもいいとこノックアウトですね(笑)
最後に左京が席を立つときに「いてて…」
あれには吹きました(笑)
そして圭介がやっと気づいたようですね~。
いよいよ気づいたか…。
さあ、どうする?先が楽しみです♪
ふぉふぉふぉふぉっ~~wwww
すみません…意味不明で…。
まことんさん、こんにちはー!
返信削除ふふふ・・・ダニエル、太刀打ち出来なかったです(^-^;)
逆に、一刀両断にされてしまいましたw
冗談半分に、によによしながら、「巡り合ったらどうする?」って聞いてみたのに、もー完全に負けてますねー。
タイトルの『Resolution』は、『決意』って意味です。
絶対に曲げない、っていう左京の決意。
それに敵うはずがないのよ。ダニエル。
ソファー移動するとこ、可愛いでしょ♪
なんか離れて座ったんで、隣に座りなおすように指示したら、こうなりました!
てっきり一度立ち上がって座りなおすもんだと思ってたんで、ビックリ!・・・と同時にSS撮りまくりでしたよ~(^-^)
左京、橘花に惚れ抜いてます。
橘花もそうなんだけど・・・ね。
ま、あんなスリムなジーンズ履いてたら、イタイって(笑)
圭介は、気付いちゃいましたが、内心の動揺を押し殺して、穏やかです。
でも、やっぱり最後らへん(ずーっと先ですが・・・)には、左京との対決(?)があります!
・・・田吾作パパみたいな感じではないですけどね(^_^;)
も~全然意味不明じゃないですよ!!
ワタシのコメントの方が意味不明・・・。