※最初に謝っときます。すんません・・・。
「う・・・ん・・・。」
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「橘花・・・愛してる・・・。」
「左京・・・。」
「・・・ね、左京・・・。」
「ん?」
「ワタシが・・・してあげる・・・。」
「え・・・。」
「・・・ね、じっとしてて・・・。」
「そ・・・そんなの・・・。」
「あ・・・橘花・・・そんなこと・・・。ダメ・・・。」
・
・
・
「う・・・。」
「はっ・・・。」
「ゆ・・・夢か・・・。そう・・・だよな・・・。」
「やべー・・・。目が覚めてよかった・・・。」
橘花を抱きたい、という欲望が大きすぎて、こんな夢を見てしまうのだ、と左京は飛び起きた。
あのまま・・・夢の続きを見続けていたら、大変なことになっていた。
「・・・圭介さん・・・気付いてない・・・よな・・・・?」
もしや、声でも上げていなかっただろうか・・・と不安になった。
「俺・・・相当溜まってんな・・・。」
このままでは、とても眠れそうにない。
左京は足音を忍ばせ、階下に降りた。
「んっ・・・。」
「・・・う・・・。」
「あぁ・・・っ・・・。」
「・・・んっ・・・。」
「あ・・・。」
「き・・・橘花・・・。」
「うっ・・・。」
「・・・ふぅ・・・。」
「・・・。」
「・・・しかし・・・。」
「・・・この年になって自家発電とは・・・情けない・・・。」
生々しい夢のせいで、どうにも自分で処理しなければならないのが情けなかった。
橘花の肌の温もりや、熱い舌使いまで感じるような・・・そんな夢だった。
「こりゃ、早急になんとかしないと・・・。」
激情に駆られて、何かしでかしそうで怖い。
早く橘花にちゃんと自分の決意を伝え、ちゃんと抱かないと・・・頭がおかしくなりそうだ。
「・・・っと失礼!」
「いや。大丈夫だよ。(・・・あぶねー・・・)」
「・・・お前、ひょっとしてもう起きたの?今、何時だ?」
「三時半だ。左京、お前は?」
「あー・・・なんか目が覚めちゃって・・・。」
「も一回寝よ。」
「ああ!おやすみ。」
「こんな時間に目が覚めるなんて・・・よっぽどイヤな夢でも見たんかな?」
「・・・っていうか・・・なんかイカ臭いよな・・・1号・・・。」
「ぴー・・・」
「・・・なにやってんだ?あいつ・・・。」
「な、橘花。今日、ちょっと出掛けないか?」
「え?」
橘花を抱きたくて堪らない。
どこかに誘い出して、そして二人きりで過ごしたい、人目を憚らず抱き合いたい、と思っていた。
「え・・・あ・・・ワタシ、今日用事があって・・・。」
「・・・どっか行くの?」
「エリックの・・・ところ。」
「あ・・・遺産のこと・・・話に行くの?」
「うん。」
「どうするか決めたんだね。」
「うん。実はね、エリックに、使い道を考えて、って言われた時に、もう決めてたの。」
「そっか。・・・一緒に行こうか?」
「・・・左京、仕事は・・・?」
「別に毎日行かなくってもいいさ!夜でもいいし。」
「ダメよ。ちゃんと行って。それに・・・一人で話したいから。」
『・・・あ・・・吸い込まれる・・・。』
・・・と思った時には、もう遅かった。
「橘花・・・。」
「ん・・・。」
「・・・ん・・・っ・・・。」
「・・・さ・・・左京・・・。」
「く・・・苦しい・・・。」
「・・・あ・・・ゴメ・・・。」
「・・・そんなに激しくしないで・・・。」
「・・・ゴメン・・・。」
「じゃあさ・・・迎えに行くよ・・・。」
「ううん。パパに迎えに来て貰う。もう頼んであるの・・・。」
「なんだ・・・そっか・・・。(ちぇっ・・・圭介さんじゃしょうがないな・・・)」
『・・・ってか、俺・・・またやらかした・・・。ちくしょ・・・今夜もまた自家発d・・・(ry』
『・・・左京・・・やめて・・・。』
抱き締められ、激しく口付けられて、橘花は身体の芯が熱く疼くのを感じていた。
左京のことが好きでたまらない。
抱かれたいと思うし、抱き締めてあげたいと思う。
『・・・止まらなくなる・・・。』
抱きすくめられると抗えなくなる。
けれども、そんな激情に身を任せてはいけない。
きっと・・・また左京に抱かれれば・・・左京を自分だけのものにしたくなる。
『・・・自転車・・・やめとけばよかった・・・。』
左京に突き上げられた時の感覚を思い出しそうになる。
「あ・・・あの家かな・・・?」
そんなことを考えながら、自転車を走らせていたが、やがて、町のはずれにぽつんと建てられた家が見えてきた。
ここがエリックの住まいだった。
「いるかな?」
来る前に連絡を入れてみたのだが、電源がオフになっていた。
恐らく仕事中だったのだろう。
いなければまた来ればいい・・・と思っていたが、橘花がここに来るのが窓から見えたのか、エリックが飛び出してきた。
「橘花ちゃん。よく来たね。」
「うん。」
「さ、入ってくれたまえ。」
エリックに導かれ、橘花は家の中に足を踏み入れた。
「エリック・・・一人暮らしなの?」
「ああ。そうさ。」
「男やもめの所帯って感じ・・・牛乳パック落ちてるし・・・。」
「・・・掃除する暇がなかったんだよ・・・。」
さほど散らかっているわけではなかったが、広さの割には物が少なく、あまり生活感のある家ではなかった。
「・・・橘花ちゃん。遺産の話をしにきてくれたんだね。」
「うん。」
「向こうに座って、ゆっくり話をしようじゃないか。」
「ううん。長居するつもり、ないから。ここでいいの。」
「・・・そうなんだ・・・。残念・・・。」
「・・・じゃ、早速聞こうか・・・。」
「うん。まず一つ目。ワタシはクレメンタインの名前を継ぐつもりはないから。」
「え・・・。のっけからそれかい・・・?」
「橘花・クレメンタインなんて、収まり悪くってイヤよ!」
「う・・・いや、しかし・・・それでは事業団のメンバーが納得しない・・・。」
「・・・でもね、クレメンタインの名前は、この街に残したいの。」
「お・・・。」
「だから・・・街の美術館を買い取って?新しく建ててもいいわ。そして、そこを『クレメンタイン記念館』って名前にして。」
「そこにクリスの絵を飾るの。・・・あの地下室みたいに、クリスの絵を壁一面に飾って・・・その真ん中に、チャールズとクララとそして・・・クリスのお墓を置いて欲しいの。クリスのお墓もちゃんと作ってあげて?あれじゃ・・・可哀想だもの・・・。」
「き・・・橘花ちゃん・・・。」
「そのくらい、お安い御用だ!」
「ホント?よかった・・・。」
「何を言ってるんだ!!そんなんじゃ、まだまだあの遺産は使いきれないよ!!」
「じゃ二つ目。病院を買い取って?そして、そこも、『クレメンタイン記念病院』って名前にするの。」
「病院・・・?なぜ・・・。」
「だって・・・ダニエルが、自分の家を再興したいって言ってたから。ダニエルを院長にしてあげて欲しいの。」
「いや・・・それは・・・。」
「出来ないの?」
「そんなことはあの遺産があれば簡単に出来る!そうではなくて、君がなぜ人の為にそこまでする必要がある!?」
「あの遺産は、必要としてる人の為に使うべきよ。三つ目・・・。」
「橘花ちゃん!」
「聞いて。三つ目。あの家・・・クレメンタイン・ハウスは、そのまま今まで通り、エリックたちが管理して。」
「ん?」
「あのまま・・・シェア・ハウスとして、残して。そして・・・夢を追ってこの街に来る人たちに、無料で貸してあげて欲しいの。」
「ワタシ・・・あの家でいろんなことを学んだわ。いろんな体験したし、素敵な仲間とも巡り合えた。だから・・・夢を追ってる人たちに、夢の続きを出来るだけ長く、見せてあげて欲しいの。貧乏とか、お金持ちとか、男とか女とか年齢とか・・・そんなのはどうでもいいの。ただ・・・夢を追ってる人なら・・・条件は、それだけでいい。」
「橘花ちゃん・・・。君はあの家には・・・?」
「だって、ずっとツイン・ブルックにいるわけじゃないわ。」
「え!?それはいったい・・・。」
「・・・結婚して出て行く事だってあるでしょ?」
「それはそうだが・・・。」
「遺産の残りは・・・事業団でちゃんと管理して。そして、今まで通り、街の発展の為に尽くして欲しいの。」
「ちょ・・・ちょっと待ちたまえ!じゃ・・・橘花ちゃん・・・君は!?君のための遺産なのに・・・。」
「ワタシはあの絵を貰ったわ!あれだけで、クレメンタイン家の謎を解いた対価には十分すぎるほどだわ。」
「そ・・・そんな・・・。」
「それと・・・クリスから才能を貰った。それだけで・・・もう十分・・・。」
「そ・・・それでは事業団のメンバーが・・・。」
エリックにしてみれば、橘花の話は到底納得出来るものではなかった。
それでは、我々が困る、と言い掛けた時、誰かがこの家を訪ねてきた。
「橘花。話は終わったかい?」
「圭介さん!」
「パパ、ちょうどよかった。」
「襲われてないかい?」
「大丈夫!そんな隙、与えないもん。」
「ふ・・・二人とも・・・ひどい・・・。」
時間を見計らって迎えに来て欲しい、と橘花は圭介に伝えてあったのだ。
「話は終わったわ!パパ、帰ろう!」
「うん。」
「ちょ・・・ちょっと待ってくれ!」
「いかん!橘花ちゃんは我々の上に立ち、クレメンタイン家の・・・。」
「お前・・・橘花の決定に従うって言ってなかったか?」
「う・・・しかし・・・。」
「・・・エリック。じゃ、こういうのはどう?」
「ん?」
「クレメンタイン家の当主としての命令よ!ワタシを祭り上げたりしないこと!今の話・・・必ず守ること!」
「ふむ・・・そりゃいいや。」
「け・・・圭介さんっ!橘花ちゃんっ!!」
「必ず守って。それが・・・チャールズの・・・クリスの血を引くワタシの望みなんだから。」
「・・・。」
そんな風に言われると、エリックは黙り込むしかなかった。
これで・・・また事業団のメンバーに責められる・・・そう思うと気が重かったが、橘花が、クレメンタイン家の血筋の者が決定したことに、アーネストの血を引く一族が、異を唱えることなど出来なかった。
yuzuさん、こんにちは。
返信削除地震の影響は大丈夫ですか?
私は千葉県民なんですが、
コンビナートでは火災もありまして怖かったです><
余震があるので昨日の夜はなんだか眠れませんでした。
なんだか気になる絵があるのですが~
改めて物語は読ませて頂きます!
Naonさん、こんにちは!
返信削除ウチとこは福岡県なので地震の影響は特にありません!
千葉!千葉の方、かなり揺れたようなので、本当に怖いのではないでしょうか。
どうかご無事で・・・(>_<。)
ちょっと流れが止められなくって、更新はしていますが、読むのは落ち着いてからにされた方が良いと思います。
でも、みなさんが落ち着いて、ここに来て元気になってもらえれば、良いな、と思って、更新は進めておきますので・・・!
どうかお大事に・・・。