「お。来たな。」
エリックが満面の笑みを湛えて、やってきた。
「持ってきたか?エリック。」
「もちろん!いや~・・・探しましたよ~。しかし・・・これを見て何かわかるのかな・・・。」
「御託はいいから見せてみろって。」
「圭介さんったら・・・橘花ちゃんは?橘花ちゃんに会いたいなぁ。会って、ハグしたいなぁ。」
「御託はいいと言ったはずだ。」
「う・・・。すみません・・・。」
「分かったらはよ出せ。」
「・・・なんか・・・手掛かりがあったんですね・・・?」
「・・・チャールズの霊が・・・出た。」
「なんと!!見たんですかっ!?」
「僕が見たわけじゃない。けど、何人かが見てるんだ。」
「では・・・チャールズの墓は・・・。」
「この家の敷地内のどこかにあると想定される、ってわけだ。」
「しかし・・・チャールズの時代から、この家は何回か改築している。ワタシも10年前に建て替えたんだ。その時には・・・なにもなかった。」
「お前が実際に工事したわけじゃないだろう?」
「確かに、業者に任せはしたが・・・図面を見ても、何もなかったし・・・。」
「だから、古い設計図を持ってきて貰ったんだ。何か落とし穴が・・・見落としていることがあるはずだ。」
「エリック!!」
「おお!橘花ちゃん!さ。私の胸に飛び込んで・・・。」
「図面は?」
「・・・ハグは?」
「御託はいいから、さっさと出して!!」
「・・・はい・・・。」
「・・・と、その前に・・・。橘花、左京を呼んで来い。」
「左京・・・?どうして?」
「あいつ、観察眼が鋭いからな。それに、お前のこと、気にしてたし。」
「・・・え?気にして・・・?」
「お前、ろくろく飯も食わないで庭、掘り返してばっかりいるから、大丈夫だろうか、何か手伝えることはないだろうか、って。」
「・・・そっか。分かった。呼んで来る。」
一瞬、ドキッとした。
圭介にバレてしまったのかと思った。
しかし、左京が圭介に打ち明けるはずがない。
『橘花のヤツ・・・俺に似てきたな・・・。』
その時、圭介が考えていたのは、こんなあさってなことだった。
「・・・さて、エリック。出して貰おうか。」
「結構探すの苦労したんですよ。倉庫の書棚を引っくり返したんですから・・・。」
「はいはい。・・・さて、一番古いのは、っと・・・。」
「そっちじゃない?」
「いや・・・。これかな?」
エリックが持ってきた古い図面を広げ、圭介は覗き込んだ。
「ふーん・・・。面白い造りだな。母屋が二つある。」
「昔のことだ。一族がみんな住めるようにそういう造りになってるんだろう。」
「今で言う、二世帯住宅ってヤツか。昔はそれが当たり前だったんだがな。」
「二つの母屋とはまた別棟があるな・・・。エントランスの脇に。これはなんだろう。」
「貯蔵庫じゃないかな?」
「貯蔵庫か・・・。」
「・・・ふぅーん・・・。階段が・・・あるじゃないか。地下に降りる。」
これは、エリックも知らないことではあったが、この貯蔵庫に、使用人であったエヴァンス親子は住んでいた。
キャロルと結婚したアーネストは、その後、母屋に移ったが、ユージンはそこで一生を終えたのだ。
「地下があるのか!?しかし・・・この敷地に地下室があるなど聞いたこともない。
次の時代の図面には地下室などないし、建て替える時に潰したんじゃ・・・。」
「次の時代・・・チャールズが暮らしていた家を、一番最初に建て替えたのは誰だ?」
「図面に書かれた記録によると・・・年代で言うと・・・アーネストか・・・。」
アーネストは、チャールズが亡くなった数年後に、最初の建て替えを行っていた。
しかも、設計したのはアーネスト自身だった。
「・・・こういうのはどうだ?チャールズの時代には地下室があった。けれど、アーネストが意図して、その地下室を隠した。」←圭介です。
「なんの為に?」
「もちろん。遺言に効力を持たせるためさ!」
「ふ~む・・・そうかもしれない。しかし・・・建て替える時に気付くとは思うんだが・・・。」
「そりゃそうだな。ハズレかな?」
「けど・・・この場所を探してみる価値はあるんじゃないですか?」
「うん?」
「図面見てて思ったんですけど・・・この貯蔵庫があった場所・・・最初の時代以降、そこを避けるようにして建物が建てられてるような気がするんですけど・・・。」
「そう言われてみるとそうだ。」
「・・・ま、思い付きですけど。」
「ちょっと待て・・・!」
「エリック。この家の設計は誰がした?」
「親戚筋の者で・・・。」
「その前は?署名を見ろ!ファーストネームは違うが・・・クロムウェル・・・みんな同じ名字じゃないか!!」
「クロムウェル家というのは、アーネストの妻になったキャロルの実家で、アーネストとキャロルの息子の一人が養子に入って継いだ、いわばエヴァンス家の分家・・・。」
数回建て直された家。
年代はバラバラ。だが、設計者の名前は・・・すべてクロムウェル姓だった。
「アーネスト・エヴァンス・・・。やっぱすごいヤツだ・・・。」
「え?」
「これは推測でしかないが・・・クロムウェルの家系でも、アーネストの遺言に縛られていたんじゃないか?」
「・・・は?」
「アーネストはたいしたヤツだが、その子孫のお前は、たいしたことないな。
チャールズの墓を見つけるヤツが現れるまで、家を設計する時に制約をつけられていたんじゃないか?
それともアーネストに言い含められて、クレメンタインの子孫が見つかるまで、事実を封印していたかだ。」
「あ・・・。」
「お前と同じように、代々、アーネストの遺言に従っていたのかもしれないな。」
「なるほど・・・。」
アーネストならやりかねない。
クリスの血筋に繋がる人間を探すのは、直系の子孫に託し、その子孫が見つかるまで、チャールズの墓を守ることを、分家の子孫に託す・・・。
それほどアーネストは、クリスに対して深い懺悔の念を抱いていたのかもしれない。
そして、なんとしてでも、自分の子孫の人生を台無しにしてでも、チャールズの無念を晴らしたかったのかもしれない。
「場所は・・・今のプールがある辺りだな。」
「早速探すわ!」
「今日はもう暗くなってきたよ。明日にしろよ。明るい方がいいと思うよ?」
「そう?平気なのに!」
「橘花。近所迷惑だよ。」
「あ、そっか。じゃ、明日!!」
そう言って橘花は、目に強い光を湛えた。
『・・・これだ・・・この瞳が・・・俺は好きなんだ・・・。』
『橘花・・・すべてが終わったら・・・俺たち・・・。』
一緒になりたい・・・。
左京はその一言が言いたくて溜まらなかった。
だが、吸い込まれそうな彼女の瞳を見つめながら、その言葉をぐっと飲み込んだ。
・・・図面を広げる・・・ってシーンが出来なくって・・・(ノ_-。)
図面じゃなくて本だし・・・。雰囲気でお察しください・・・。
こんにちは~、ポティロンです。
返信削除結局あの後しばらく読み進め、まだ途中ですが
だいぶ内容が分かってきました。
いや~、面白いですね!
すごいすごい!!シムズでこれだけのストーリーを作られるなんて。
自分も以前ストーリーめいたものを作ったことがありますが、(結局データが駄目になってしまい、途中で終わってしまいましたが)
シムって思うような動きをしてくれないし、どんなに頭の中にストーリーが出来ていても、それを静止画で再現するというのが難しいと思っていました。
今は「Clementine Share House」の途中ですが、
終わったら「以蔵とヒイナのアドベンチャーな日常」
を拝見したいと思います。
左京の昔の話が出てくるんですよね?^^
ユズさんのストーリー、本当に面白いですよ!
純粋にすごいなぁと感じました。
昨日は3時まで頑張りましたが、まだ読破できず・・・^^;
続きはまた今度読ませていただこうと思います。
良いサイトを見つけました。
ありがとうございます。
ポティロンさん、こんにちは!
返信削除きゃあ!!読んでくださってるんですか!?
も・・・申し訳ないやらありがたいやら・・・。
最初は・・・なんといいましょうか。
アンビションを買って、彫刻家、というのをやってみたいと思いまして、それと、見知らぬ男女がシェアハウスで生活する話って面白そうだな、と思って始めました。
ストーリー仕立てにするのって、本当に非常に難しくて・・・。でも、シムズでそういうストーリーものをやっているサイトを拝見しているうちに、だんだん話しが出来上がってきたんですよ。
以蔵とヒイナの方は、本当に単純に、シムの一生を追ってるだけなんですが、その中で生まれた左京とか、宗太をどうしても使いたかったんです。
だって、イケメンなんだもの(^-^;)
・・・あ、ポティロンさんのサイト、拝見しました!!
スライドショーなんですね!!面白ーい!!
ちゃっかりリンクも、今、貼ってしまいました(^-^)
まだ、全部見れていないけど、キレイなシムさんがいっぱいいて、目の保養になります~♪
また、じっくり拝見させていただきたいと思います!!
こちらこそ、ありがとうございました!!
こんばんわ♪
返信削除なんかなんかいよいよって感じですね!
っていうか見てる方はゴクリって感じなのに
エリックが面白くて(笑)
「図面は?」
「・・・ハグは?」
「御託はいいから、さっさと出して!!」
「・・・はい・・・。」
このシーンで何故かウケてしまって(笑)
さて、物語はかなりかくしんについてきましたね。
そうか、キャロルの家も絡んでいたのか…。
そうですよね、キャロルは最初は、クリストファーの婚約者だったんですもんね。
と言う事は、アーネストは自分の子供、全部に思いを託したって事かな?
違ってたらごめんなさい…。
なんとなく私の頭の中でパズルがつながっていきました。
アーネストの思いは凄いものだったんですね。
なんだか切ないわ…。
そして左京。二人はどうなるんだろ?
ドンっと背中を押してあげたいです!
頑張れ、左京!ダメなら私がいる!
と、結局そこに戻ってくるまことんであった(笑)
まことんさん、こんばんは!!
返信削除いよいよ謎解きのラストスパートですよ~(^-^)
エリックはああいうキャラ・・・っていうか、ふざけたところのある人なんで、うまいこと笑いを誘ってくれます!
ワタシ、書くの忘れてたかもしれないけど、アーネストとキャロルには5人子供が出来て、(男3人女2人)そのうちの二人を養子に出しました。
その一人が養子に入った先が、キャロルの実家だったんです。
キャロルは、クリスの子供を捜す、そして、チャールズの悲願を果たすことを、アーネストと同様、望んでたから、全面的にアーネストに協力したわけです。
その通りですよ!!
アーネストは、自分の子孫すべてに、クレメンタイン家の復興を託したんです!!
その辺り、エリックの語りでの説明になりますが、今後出てくる予定です。
分かっていただけて嬉しい~(^-^)
左京の顔・・・
こいつ、なんでこんな切ない顔するんだろうか・・・。
ホント、早くしろ、って感じですね(^_^;)ゝ
でも、左京にもちょっとしたことが持ち上がります。
夜中にアップする予定です。
0時になったらすぐ。
・・・死なないでね?