「ここね・・・。」
田吾作に意を含められ、京子はクレメンタイン・ハウスにやってきた。
ただ、彼女は、左京が好きになる女性はどんな人なのか、と単純に興味を持ったというのが最大の理由だった。
「いるかしら・・・。」
その女性が・・・例えば左京に似合わないような女だとしたら、田吾作に味方して、仲を裂く手助けをするかもしれない。
けれど・・・その人が、左京にとっていい影響を及ぼすような人なら・・・。
「こんにちは!どなたかいらっしゃる?」
おとないを告げると、奥から一人の女性が姿を現した。
「お姉さん、だーれ?」
「こんにちは。私、桐生院京子って言います。」
「きりゅういん・・・さん?」
「左京くんのマネージャーやってる、米沢の知り合いです。」
「左京は仕事行ってるよ。」
「あら・・・そうなの。」
この子だろうか・・・。可愛い子だが、しかし、ちょっと左京の彼女、というイメージではないような気がする。
「あなた・・・お名前は?」
「あたし?ロッタ。ロッタ・リドリー。でもね、もうすぐ名前、変わるんだ~。」
「え・・・まさか・・・結婚するの?左京くん・・・と?」
「あたしが結婚するのは、ギルなの。左京のカノジョは橘花だよー。」←お前・・・
「きっか・・・さん?」
「うん!」
「きっかさんは・・・いる?」
「たぶんいるよ。最近あんまり出掛けてないから。」
「そう。入ってもいいかしら?」
「うん。」
やはりイメージが違う、と思った通り、この子ではなかった。
京子は家の中に入り、きっか、という子の姿を探した。
「あら・・・あの子かしら?」
キッチンで見かけた子・・・。この子だろう、と直感で思った。
『・・・うん!左京くんのイメージに・・・ピッタリだわ!』
話をしてみたい。どんな子なのか知りたい、と興味津々で、京子は、橘花の後を追った。
「こんにちは。」
「・・・はい。」
「あなた・・・きっかさん?」
「・・・はいそうですけど・・・。柑崎橘花っていいます。」
「きっか、ってどんな字書くの?」
「タチバナの花です。・・・あの・・・。」
橘花は警戒していた。
もしや・・・左京のファンがここまで入り込んできて、また自分に危害を加えるのではないか・・・そんなことまで考えていたのだが・・・。
「あ!ゴメンなさい!私、桐生院京子って言います。左京くんのマネージャーの米沢の知り合いの者です。」
「左京のマネージャーさんの・・・?」
「ええ!そうなの。・・・橘花っていい名前ね。」
「ありがとうございます。父がつけてくれたんです。」
そう言って微笑む笑顔が、まだあどけなさを残している。
左京に比べ、ずいぶん若い・・・ということが気にかかった。
「橘花さん、あなた・・・左京くんと付き合ってるの?」
「えっ?」
「まさか!そんなことあるわけないじゃないですか!」
「あら。そうなの?」
橘花は、京子がマネージャーの知り合いだ、と聞いて、余計に警戒心を抱いていた。
この人はここに、何をしにきたのだろうと、それをずっと考えていた。
「左京がワタシみたいな小娘、相手にすると思いますか?」
「どうかしらね・・・。」
この子はしっかりしている、と京子は思っていた。
さっき会ったロッタとは違う。
初めて会った自分に対し、警戒を怠らないが、気を悪くしないように丁寧な態度で接してくる。
「・・・橘花さん。」
「はい?」
「私・・・彼から、左京くんに好きな人がいるらしいから、探ってきてくれ、って言われたの。」
「マネージャーさん・・・ですか?」
「ええ。彼は私のフィアンセなの。」
「そう言われてここに来たけど・・・あなたを見て、なるほど、と思ったわ。」
「・・・え?」
「・・・最近の左京くん・・・すごくセクシーなのよ。」
「左京が?」
「前からカッコよかったけど、最近ますます色気が出て来て・・・だから人気も上がったんだと思うわ。」
「・・・。」
「誰かを・・・愛してなきゃ、あんな風に歌えないわ。それがあなたなら・・・納得がいく。」
「え・・・わ・・・ワタシ、違いますって・・・。」
「誤魔化してもダメダメ!さっき、ロッタちゃんっていう子が言ってたわ!左京のカノジョは橘花だ、って!」
『・・・もうっ・・・ロッタったら・・・。』
「・・・ね、橘花ちゃん。私、あなたのこともっと知りたいわ。どこかに出掛けない?」
「え・・・。」
京子があまりにも正直に、ここを訪問した理由を話したので、橘花は戸惑っていた。
しかし、まだ橘花は京子に対して心を開けない。
「あっ!橘花やっぱりいたんだぁ!よかったね!きりょおいんさん!」
「・・・桐生院よ。京子、でいいわよ。」
「分かった!」
「ねーねー、橘花ぁ。まだ元気にならない?ビスチェ、買いに行こうよぉ。」
「ロッタ・・・ゴメン・・・。」
「なぁーに?ビスチェ?」
「うん!結婚式の時、ドレスの下に着るの!!」
「あら、いいわね!・・・そうだ、三人で行きましょうよ!」
「え?」
「ね、橘花ちゃんも一緒に!」
「わ・・・ワタシは・・・。」
「橘花ぁ。行こうよ!ねっ!」
「そうそう。女同士、出掛けましょ!」
二人に押し切られ、橘花は仕方なく着いていくことにした。
「ワタシが行っても・・・ビスチェとかよく分かんないんだけど・・・。」
それでも、盛り上がっている二人に水を差すのは憚られ、二人の後に従った。
「ここ。ここ!」
「あれ?ここって・・・委託販売所・・・。」
「二階に試着が出来るところがあるのよ。」
今まで何度も通った委託販売所だったが、そんなスペースがあるとは知らなかった。
「こっち、こっち。」
店の奥の階段を上がると、確かに試着用のドレッサーがあり、服が並べられている。
「こんなところがあったんだ・・・。」
「ねぇ。ワタシもロッタちゃんの結婚式に参加したいわ!いつなの?」
「来週の土曜日なんです・・・。ね。ロッタ。」
「うん!」
「招待客じゃなくても大丈夫かしら?」
「うん!大丈夫!来て来て~っ!!」
「お客さん、たーくさんいたほうが嬉しいもんっ!」
「じゃ、彼も一緒に連れて行くわ。あなたのドレス姿・・・キレイでしょうね。」
「橘花と一緒に選んだんだよ!」
「そうだ!橘花ちゃん。私たちも、ロッタちゃんの式に出る時の服、探しましょ!」
「いえ・・・ワタシは・・・。」
橘花は、ロッタの結婚式を待たずに、ツイン・ブルックを離れるつもりだった。
ここで生活できるのもあと数日・・・。
だから、衣裳を選ぶ必要などない。
「えー。橘花も可愛い服、選びなよー。・・・ね、こないだのドレスは?」
「ワタシがウェディングドレス着たってしょうがないでしょ?」
こうやって女三人で出掛けて、話をしてみると、橘花が年の割にはしっかりしている子だというのが京子には分かった。
けれど、橘花は心から楽しんでいない。
黙り込むと、ふと暗い表情を見せることがある。
人見知りをする性質で、初めて会った自分がいるので、臆しているのかもしれない。
京子はもっと深く、橘花の心の奥を覗き込みたくなっていた。
「ダニエルさん。」
「なんだよー。お前。俺、寝るトコなんだけど・・・。」
「こんな早い時間に寝るの?まだ9時だよ?」
「お前、正しい生活は、よく寝てよく食べて、よくクソすることだ。お前、まだ眠れないとか言ってんじゃないだろうな?」
「なんか・・・気分が落ち着かないんだよ・・・。お父さんと喧嘩してから・・・。」
「うぉ!?左京と喧嘩!?いつ??」
「もう何日も前なんだけど・・・。それからあの人と話してないし・・・。」
正確に言えば、左京と諍いを起こす以前からずっと、落ち着かない気分はあった。
眠れない夜が続いていたし、家の中にいてもなにかしなければ・・・という焦りが常にあった。
「お前さー・・・言ったろ?左京とやりあったって、いっこもいいことないぜ?」
「もう遅いよ。ダニエルさんの話し、聞く前だもん。」
「ふーむ・・・。」
まだ顔に翳りがある。
本当なら、心療内科にでも行ったほうがいいのかもしれない。
けれども自分は医者だ。
そんなことになる前に、なんとか手助けは出来ないだろうか・・・。
「お前・・・こないだ、研究途中のクスリでもいいって言ったな?」
「う・・・ん。」
「まだ実験結果が出てないんだけど・・・。」
「・・・人体に害はないことは確かめてある。」
「睡眠薬?」
ダニエルは、クスリを取り出し、宗太に示してみせた。
「どんな効果が出るかは分からん!」
「試してみる勇気・・・あるか?」
「も・・・貰うよ。」
「人体に害はないっていうんだったら・・・。」
「うん!それは保障する!」
「ぱくっ。」
「う・・・。」
「・・・どうだ?」
「・・・あっ!なんかお腹痛くなってきた!!」
「ん?」
「う・・・吐きそうっ!!」
「便所行ってこいっ!」
「う・・・うん・・・。」
宗太がバタバタと部屋から駆け出していく後姿を見て、ダニエルはにやり、と笑っていた。
いつまでもぐじぐじと悩んでいる宗太に、ちょっとしたイタズラをしてみただけだ。
これが自分なりの治療法だ。
「・・・なーんちゃって。それは市販の下剤だ。いい加減大人になれ、って。宗太。
♪大人の階段のーぼる~♪・・・あっ。あいつはシンデレラじゃないか。」
これに懲りて、変なクスリに頼ろうなんて気は起こさなくなるといいのだが、とダニエルは思っていた。
それに・・・自分も院長という地位に着けば、今までのように実験薬を作っては試す、などということは出来なくなる。
「あっ!!そうかっ!!これから実験なんか出来なくなるんだっ!!うぉぉぉぉぉーーーっ!!」
今頃、そんなことに気がついた。
自分も階段を一歩、昇らなければいけないのだ、と思うと、院長という地位と引き換えに、自由を奪われたような気がした。
「ねぇ、橘花ちゃん。」
「はい。」
三人で出掛けた後、京子はまたここに戻ってきて、橘花と話をしていた。
普通・・・女の子なら誰しも、キレイな服を選んだり、試着したりすれば、心が浮き立って、明るく笑うものだ。
けれども、橘花はそうではなかった。
「あなたは・・・左京と付き合ってないって言い張るけど、私には分かるわ。あなた、左京のこと・・・好きでしょ?」
「好きですよ。小さい頃からずっとファンだったんです。」
「小さい頃?サンセット・バレーに住んでたの?」
「いいえ。テレビで左京を見て、それからずっと・・・。初恋なんですよ。」
「素敵じゃない!じゃ、この恋、全うできたら、最高よね!」
「全うできれば・・・ですね。」
そう言って、また陰のある笑顔を漂わせる。
「橘花ちゃん・・・。今日は帰るわ。」
「はい。」
「楽しかったです。ありがとうございます。」
「また・・・近いうちに来るわ。」
「来週、ロッタの結婚式で会えますよ。」
「そうね・・・。」
京子がどんなに橘花の心の中に踏み込もうとしても、橘花は鍵を開けてくれなかった。
もっと時間をかけて・・・この子の心を開かせなければいけない、と京子は半ば、意地になっていた。
そして、田吾作には・・・まだこのことは報告しないでおこう、と思っていた。
くノ一の裏切り。
どうする!?田吾作!!
ロッタちゃんが幼児退行してるような気がするけど、スルーで(笑)
こりゃ強敵が現れた~
返信削除京子さんのまっすぐで鋭くてそれでいて大人で柔軟。
こんな人が来たらマズイですね。どんな難問も解決してしまいそうです。
困った時の京子頼み。
yuzuさんこんばんわん!
この間の通りすがりの人さん、こんばんはー!
返信削除京子さんは橘花の味方ですから!!
ホント、困った時の京子頼み(^_^;)ゝ
田吾作~どうするどうする~?
やっぱり、京子さんにユッサユッサして貰いたくってww
この物語ってば、大人な女性がいなかったので、なんだか楽しい~♪
こんにちわ~♪
返信削除wwww京子さん、確かに股開きすぎww
前の記事でそれを見た時、思わず吹き出しちゃいました(笑)
いよいよ京子も左京と共演!
なんだか凄いな~
しかしロッタ…きりょおいんさんって(爆笑)
京子はあっさり田吾作を裏切ったと言うかなんて言うか(笑)
さすがは京子です♪
やっぱり京子は綺麗ですね~
なんか第三者的に見ると特にそう思いました。
綺麗なお姉さんって感じ!
京子の登場が、橘花にどんな影響をおよぼすのか凄く楽しみです!
きっと京子なら何かやらかしてくれる…
そう思いつつ、今後の展開をワクワクしながら待っています♪
それにしても京子と田吾作のディープ…
デリシャス!(笑)
追伸 左京のピアノシーン、見ましたよ!前から見てたんですが、言うのが遅れました。本物のピアニストみたいでしたね!素敵~
まことんさん、おはようございます!
返信削除京子さん、出させていただきました(^-^*)
すっごいキレイです!!
おっぱいも大きくしてあげました(笑)
大人の女性の魅力、満載です!!
田吾作のディープキス、デリシャス!!
橘花はまだ、京子さんのこと警戒してるんですが、京子さんの言葉の一つ一つに反応はしてます。
でもこの子、頑固なので・・・。
股はあんまり開かないで欲しいです(^_^;)ゝ
田吾作が鼻血吹いちゃうよww
そうなんですよ。京子さん、『桐生院京子』って名前なんですよね。(今更)
難しくて、ロッタちゃんには覚えられません(>_<)
そのうち『米沢京子』になりますけどね!
田吾作と合わせ、京子さんにもしばらく出ていただこうと思ってます。
左京のピアノは~・・・いや、誰が弾いても同じだと思うんですが、やっぱ絵になるんですよね~。
ギター弾いてるとこもカッコいいし、ドラム叩いてもなかなかのものです。
でも、ベースの練習中の顔はバカっぽいので、とっととスキル上げさせようと思いました(笑)
こんにちは~(●^o^●)
返信削除左京さんのイラストに興奮……w
ダニエルさんごめんなさい、私ちょっとやっぱり左京…w
本格的に京子さん登場ですね♪
やはり彼女は大人ですね(*^^)v
橘花ちゃんに何かこう…ドーンと影響をあたえてくれそうです♪
あ、あの…もしよろしければ…私のブログにリンクを貼ってもよろしいでしょうか??(*^_^*)
こくいさん、こんにちは!!
返信削除おっと。左京、見ていただけましたか(^-^*)
頑張ってセクシーに描いたつもりなんですが、ワタシの画力ではあれが精一杯(^_^;)ゝ
ダニエル~残念だったね~。
やっぱ左京がいいんだって!(笑)
なんだか、左京の人気が一人歩きしているような感じがする今日この頃。
ま、トップ・スターなので、それもありですね(≧∇≦)b
京子さん、美人ですよね~。
もう、まことんさんとこで最初にファンになったのが京子さんでして・・・。
知的で美しくて包容力があって・・・自分で作ったキャラでもないくせに、楽しませていただいてます!
り・・・リンクですかっ!
嬉しいですっ!!
どうぞどうぞご自由に!!
ワタシも貼らせていただきます~(*^-^)人