「ただいま~・・・っと。あー・・・腹減ったな・・・。」
仕事を終えて帰宅した左京だったが、家の中が静まり返っていると、無性に寂しくなった。
今日はまだ、さほど遅い時間でもなかったが、みんなそれぞれ自分の部屋で過ごしているのだろうか。
「一人で食うメシは味気ないな・・・。」
好物のパンケーキも、ぼそぼそとしていて、なぜか味がしない。
「・・・誰が作ったんだよ・・・これ・・・。」
橘花はもう、眠っているだろうか。
もしそうなら、寝顔だけでも見たい。
そう思って左京は立ち上がった。
「あ・・・灯り・・・ついてる。」
橘花の部屋の中からは、灯りが漏れてきていた。
しかも、中から彫刻を削る音が聞こえる。
起きているのなら・・・ちゃんと話しがしたい。いつまでもこんな状態を続けているわけにはいかない、と左京はドアのノブに手をかけた。
「あれ・・・。」
しかし、扉には鍵がかかっていた。
「橘花!いるんだろ!?橘花!開けろよ!!」
「橘花!!」
こんなことは初めてだった。
どんなに呼んでも、橘花は返事すらしない。
もちろん、ドアが開くこともない。
「・・・なんで・・・。なんでだよ!橘花っ!!」
「橘花・・・。」
「俺・・・ホントに嫌われてるのか・・・?」
自分の何がいけなかったのだろう。
橘花を抱いたあの日・・・心が通った、と感じたのは、間違いだったのだろうか・・・?
「・・・左京・・・。」
「左京・・・そんな風に・・・呼ばないで・・・。」
左京に触れられれば、その愛を手放すのが惜しくなる。
「今だけ・・・辛いのは今だけなんだから・・・。」
「・・・しばらく経ったら・・・その辛さなんか忘れるわ・・・。あなたは・・・もっと有名になって・・・きっとワタシのことなんか、忘れてしまえるから・・・。」
左京を拒絶し、傷つけたことで、橘花は半身を引き裂かれるような痛みを感じていた。
左京の足音が遠ざかる。
けれど・・・今、離れておかなければ、自分は左京を破滅に陥れる・・・。
そう思うことで、橘花はじっと耐えていた。
「なぁ、橘花。ちょっと出掛けないか?」
「え?どこに?」
日中、誰もいない時間にぼんやりしていると、ギルがそんな誘いをかけてきた。
「天気良さそうだし、公園でも散歩しないか?」
「え・・・散歩?」
「文句言わずについて来いよ。ほら。行くぞっ。」
「えー・・・。」
「さっさと立て!」
「んー・・・気が進まないんだけど・・・。」
なんだか最近、こうやって強引に連れ出されることが多いような気がする。
断っても、なぜか皆、自分を無理に連れ出す。
「天気・・・いいのかな・・・これ・・・。」
橘花は仕方なしに着いていった。
ツイン・ブルックの街も見納め、という気持ちもあったのかもしれない。
公園には、散歩や談笑を楽しむ人たちが、結構大勢いた。
「あ。ブランコ。」
「ガキの頃、よく遊んだよなぁ。」
「昔はさ、これで空飛べるとか思っててさ。空中から思いっきり飛んで落ちて、大怪我したな。」
「ギルが?やんちゃだったんだね。」
「ガキなんてそんなもんだろ!お前、やらなかったか?」
「飛んだりしなかったよ。」
「女の子だもんな。」
「・・・橘花、お前さぁ・・・。」
「ん?」
「左京と話し、してないのか?」
「話し?」
「あいつ・・・お前になんか、話したがってないか?」
「・・・。」
「なんで聞いてやらないんだ?」
「・・・時間が・・・なくて・・・。」
「時間?なんで時間がないんだよ。時間がないのは、左京の方だぞ?」
「・・・そうね。」
「・・・お前・・・何考えてる。」
「・・・え?」
「・・・なんにも。」
明日、ここを発つ、と決めた。
飛行機のチケットも取った。
大事なものはまとめて、先方に送った。
明日の深夜、誰もが寝静まった時間に、家を出るつもりだ。
ギルとロッタには、本当に申し訳ないことをするのは分かっている。
だが、もう、何も考えたくない。
「・・・久しぶりに童心に返ってみようかな。」
「橘花・・・。」
「きゃあっ!気持ちいいっ!!」
「お前・・・。」
「よし!押してやるよ!」
「押して!押して!!」
「行くぞーっ!」
「きゃあっ!」
「それっ!!」
「わ!!」
「高ーい!空が近ーい!!このまま飛んでいけたらいいのに!」
「やっぱそう思うだろ?」
「ホントに飛べそう!このまま飛んでいけたら・・・。」
空の彼方まで。
翼が欲しい。どこまでも自由に、この空を飛んでみたい。
「・・・さ。終わりだ。」
「もう?残念!」
けれども、自分は翼をもがれた、ただの人間。
飛ぶことも叶わず、自分の足で、自分の道を歩いていかなければならない。
「・・・橘花、遊びの時間は終わりだ。こっちを向け。」
「・・・ん。」
「ギル・・・。」
「橘花。」
「ギル・・・幸せになってね。ロッタのこと、離さないでね。」
「もちろんだ。」
「橘花・・・お前も・・・お前、左京のこと、好きか?」
「・・・好きよ・・・。」
「本当に好きか?俺・・・前に言ったよな。自分の気持ちを偽るな、って。」
「うん・・・。」
「好きよ。きっと一生・・・この気持ちは消えない・・・。」
「そうか・・・。」
「橘花・・・。」
「ギル・・・。」
「お前が左京のこと嫌ってないんなら・・・。」
「き・・・嫌いになんかなれるわけないじゃない・・・。」
「だったら、あいつのこと、抱き締めてやってくれ。・・・こんな風に。」
「・・・え・・・。」
「俺は、あいつの悲しそうな顔見るのは、もうたくさんなんだ。」
「悲しそう・・・?」
「ああ。」
「お前が笑いかけてやればいいだけだ。それだけであいつは笑顔になる。」
「ワタシ・・・が?」
「ワタシなんか、なんの役にも立たないわ。左京の足枷になるだけよ。」
「なぜそんな風に言う?左京はそんなこと、考えてないぞ?」
「え・・・。」
「お前が、何を考えてるのかは知らない。けどな、左京がお前のこと、どんだけ愛してるのか・・・お前はどれほど愛されてるのか・・・お前は分かってないな。」
「え・・・。」
「最後の忠告だ。」
「最後なんて・・・。」
「お前が左京から離れたら・・・あいつはボロボロになるぞ。それだけは覚えておけ。」
「ギル・・・。」
「俺はこれから、ロッタの面倒を一生みてやらなきゃならないんだ。左京のお守りなんざ、まっぴらだ。それはお前に任せる。いいな?」
「・・・。」
自分が進もうとしている道は、間違っているのだろうか・・・。
橘花は歩む足を緩め、振り返りたくなっていた。
けれど・・・一度決めたことを覆すことは出来ない。
「橘花・・・俺・・・もうイヤだ・・・。」
橘花の顔を見ることも出来ない日が続き、左京は、何をする気力もなくしていた。
今日も・・・本当ならリハーサルがある日だった。
けれど、左京は部屋から一歩も出ず、ただベッドで橘花のことを思っていた。
「お前に嫌われたんなら・・・このままここで朽ち果てたい・・・。」
自分を動かす動力源は、橘花の存在だ。
その橘花に拒絶された今、左京は闇の中に陥っていた。
「左京さーんっ!!・・・む・・・左京さんの部屋は二階だったな・・・。」
時間になっても、左京がスタジオに姿を現さない。
左京はよく遅刻してくることがあるので、しばらく待ってみたが、やはりこない。
携帯も、電源を切ってあるようで通じない。
田吾作は心配になり、左京を迎えに来たのだ。
「あっ!!左京さん!いたんですかっ!!」
「何やってるんですかっ!?時間、過ぎてますよっ!!早く行きましょう!!」
「・・・行きたくない・・・。」
「も~・・・何、子供みたいなこと言ってんですかっ!!さっさと支度してくださいよ!」
「・・・行かないよ。俺・・・。」
「左京さんっ!!バンドのメンバーも待ってるんですよっ!!」
「・・・行かないってば。」
「・・・左京さん・・・リハがなくったって、仕事は山ほどあるんですよ!?ライブの構成だって、出来てないでしょっ!?」
「・・・出来てる。」
「え・・・?」
「・・・どっ・・・どれどれ。拝見・・・。」
「・・・ふむ・・・。」
「さ・・・左京さん・・・。」
「か・・・完璧です・・・。」
「なら、帰れ。」
「けど・・・それだけじゃないでしょっ!!新曲っ!!レコーディングの期限はとっくに過ぎてるんですよっ!!」
「ツイン・ブルックのラストライブの日にリリースする予定だったでしょ!?どうすんですかっ!!」
「・・・出来てる。」
「え。」
「・・・ギターと打ち込みで録った。お前、バンドの音入れてトラッキングしとけ。三日で出来るだろ。」
「どっ・・・どれどれ・・・拝聴・・・。」
「・・・ふんふ~ん♪・・・いい曲っぽい・・・。」
「むむむむむむ・・・っ。」
「うぉうおうぉぉっ!」
「うぉうおぉうぉおっ!!」
「うぉーうおぉぉうおぉーっ!!」
「うぉうおうぉぉっ!」
「うぉうおぉうぉおっ!!」
「うぉーうおぉぉうおぉーっ!!」
「うぉーーーーっ!!」
「うぉおおおーーーっ!!」
「おおおおおーーーっ!!!」
「・・・うるさい。帰れ。」
「・・・いい曲です・・・。ヒット間違いなし。」
「俺は・・・もう本番のライブにしか出ていかねぇよ。」
「けっ・・・けど・・・。この曲、ライブでやるなら、バンドと合わせないと・・・。」
「バンドには練習させとけ。本番で、俺が合わせる。」
「左京さん・・・。」
「帰れ。お前の顔、見たくねぇんだよ。鬱陶しい。」
「そ・・・そんな・・・。」
いったい、左京に何があったというのだろうか。
京子がここに来たはずだが、何も言っていなかった。
京子は、左京の好きな女を特定することが出来たのだろうか?
「今日は・・・帰ります・・・。」
「もう来んなっ!」
どうして左京がこんな態度を取るのか、まったく分からない。
田吾作は、毎日でもここに来るつもりでいた。
・・・田吾作ばっかり。
ハートフルボッコな展開のはずなのに・・・。
おまけのNGシーン。
「ちょっとぉ!あんたたちばっかり楽しんでないで譲りなさいよぉ!」
なんという理不尽なNPC・・・。
ブランコ、もう一個あるんだから、そっち行きゃいいだろうに・・・。
うっとおしいので消してやりました。
あ、ちなみに、パパラッチも、見かけたら即削除してます。
セレブスターレベルとか、うっとおしいことこの上ない・・・。
一緒に出掛けると、頭に上に水色のちっちゃいダイヤがふよふよするのもうっとおしい。
消せるMOD、ないかなぁ。
こんにちは!
返信削除こくいさんのところから飛んで参りました!
実はちょっと前から読み進めてまして、まだはじめの方なんですが、楽しく拝見させていただいてます!
橘花ちゃん可愛いですね☆わたしはダニエルがなんだか好きで、ワイルドなのにおっちょこちょいでツボですw
イケメンばっかりで目の保養になりますし。
明日は仕事が遅番なのでいっぱい読み進めるつもりです♪ヽ(´▽`)/またコメントしますね!
ネコさん、こんにちは!!
返信削除いや~・・・すみません(^_^;)ゝ
ネコさんのブログ、実は拝見させて貰ってます。
謎が散りばめられた素敵なお話で・・・。
ビアンカがどうなるのか、吉田くんがどうなるのか、溝口さんの運命は!?・・・とかいつも思ってました(^▽^;)
ご訪問、ありがとうございます!!
あ。
よかったね~ダニエル!またファンが出来たよ~(ノ_-。)
どうもワタシ、個性的なシムが作れなくって、みんな同じようなイケメンになっちゃうんですよ~。
生まれた子が残念な顔だったら整形しちゃうし・・・。
ネコさんとこのシムも、みんな美形じゃないですか!
こちらこそ目の保養、させていただいてます(^-^*)
長い話なので、無理しないでくださいね~。
もうちょっと簡潔に進められないんだろうか、というのが今の悩みです。
コメント、ありがとうございました!!
た・・・・た・・・
返信削除田吾作・・・・・。ゲッツ!ってやってた芸人を思い出すw
yuzuさんこんにちは!
いよいよギルが、唐沢クルー二号になってきましたね。
ギルすっかりいい男になりました。
セレブスター困りますよね、あれいのせいで
セレブにはいちいち挨拶して認めてもらわないとホットタブとか
ゲームとか一緒に遊んでくれないんですよね、
なるべくセレブにならないようにしてても仕事先の上司や同僚がセレブだと
かってに自分もセレブになっちゃうから。
セレブを下げるアクションとかもあったらいいのになぁ。
この間の通りすがりの人さん、こんばんは!!
返信削除あ~・・・なんでしたっけ。ダンディー坂田?坂井?そんな名前の人ですよね(^▽^)
そう言えばあの人のスーツ、こんな色合いでした(^_^;)ゝ
ギル、ホントにいい男になりましたねっ!
こんなに活躍するなんて、誰が思ったことでしょう!
この二人、最後の最後までギルに頼りっぱなし・・・。
クルーにそっくり!
ギルをクルーに置き換えてもOKなんですが、ジーンと左京はちょっと違うんですよね~。
ジーンは結構前向きで、リンダを信じてて、だから楽観的な部分があったみたいなんですが、左京は後ろ向きだもん。
でも!もうすぐ春がきます!!
春が来たら一直線だぁーーっ!!
・・・いや、パパとの対決があったわ・・・。
セレブ・・・ホントうっとおしい・・・。
こんなにうっとおしいと思ったのは、シムズで遊びだした頃のモザイク以来かもしれない・・・。
やっぱ日本人はセレブとか興味ないから、アメリカーンな考えについていけないんですかね??
セレブとヴァンパイヤの増殖を抑えるMODは入れてあるんですが、それってまったくなくなるわけじゃないですもんね・・・。
レイトナイト抜け、って話しですかね?
こんばんわ~♪
返信削除た、田吾作…wwwwwwww
どんだけショットを使ってるんだ!
4枚目くらいから笑いが止まりませんでした(笑)
何気に田吾作が熱いですよね(笑)
左京はどんどん生きる希望を失ってるような気がします。
って言うかあんないじけてる左京も可愛いと思ってしまうww
ギルは本当にいい男になった!
なんだか一気に男前になったような気がします。
やはり結婚が決まった男の魅力なんでしょうか。
それともロッタを食わして行くと言う事を決心した男の強さが表れてるのかな。
なんて言ったらいいのかな…とにかく大人になったように思えます。
その分左京が子供のようになってますが(笑)
恋の前じゃ左京も傷つきやすい少年になってしまうんですね。
ある意味、左京にとっては初恋のようなもんだもんな~。
私はどんな左京も好きだし応援します♪
さて、橘花はこれからどうするのかな?
ギルの最後の忠告をどんな風に受け止めたのか、凄く気になります!
まことんさん、こんばんはー!
返信削除田吾作、思う存分使わせていただいてます(-人-)
ちょっぴり悪役なんですよね~。
あんなに何コマも使う必要ないのかもしれないけど、面白くって・・・(^_^;)
まことんさんとこの田吾作より、ちょっぴり強気♪
でも、京子さんの尻に敷かれる運命・・・。
ワタシも、田吾作と京子さんに子供を作ってみるつもりです。
どんな子になるかな~。やっぱり、田吾作の遺伝子が強いんでしょうか・・・。
左京・・・さっきアップした今日の分では、ホントに子供みたいになっちゃってて・・・(-"-;A
でも、もう本当にそろそろ決めないと・・・。
えぐえぐ泣いてる場合じゃないんだってば!!
その分、ギルがすっかり大人に・・・!
一家の長みたいな責任感が芽生えてるんですよ。
んで、左京と橘花を見てて、イライラしてんですよねー。
たぶん、ギルの気持ちって、このストーリーを読んでくださってる皆さんの気持ちに近いんじゃないのかなぁ。
早くなんとかしろ!・・・みたいな。
これから、長い長い1日が始まります。
5回分くらい。
皆さんがHappyな気持ちになれるよう、頑張ります!!
左京を応援してやってくださいねっ!!