夢で逢えたら（後編）

「こないだは見に来てくれてありがとう！濡れただろ？風邪とか引いてない？」
「あ・・・大丈夫・・・です。」

「あの・・・左京・・・さん？なんでここに・・・？」
「あれ？あいつから聞いてない？なんだっけ・・・君の同居人の・・・。」

「ダニエルですか？」
「そうそう！ダニエル！シェア･ハウスで君と同居してて、まだ部屋が余ってるって言うから。」

「俺、今ホテル住まいでさ。場所も不便だし、引越し先探してたんだよね。」

左京・・・その顔、変だから・・・。
「ここ、いいね！学校に近いし、街からもそんなに離れてないし！」
「え・・・？え？引越し・・・？」

橘花は頭が混乱していました。
憧れの左京が目の前にいて、そして、この家に引っ越してくるようなことを仄めかすのですから！
「いや・・・君が迷惑じゃなかったら・・・なんだけどね。ここなら宗太と二人、落ち着いた暮らし、出来そうな気がする。」
「宗太くんと・・・。」
「家賃とかもちろんきちんと入れるから！」

「ど・・・どうしよう・・・困っちゃったな・・・。」

「実はここ、家賃タダなんです。」
「え？なんで？」
「いろいろ事情があって・・・。詳しい事情はお話し出来ないんですけど・・・。」

こんな怪しげな言い方をすれば、左京はきっと引いてくれるだろう、と目論んだんですが・・・。
「そっかぁ！だったら俺、労働で返しちゃおうかな。ゴミ出しもするし、パンケーキくらいなら作れるし。」
「・・・えっとー・・・。（アテが外れた・・・）」


『ふむ・・・ここに若い男女が二人で住んでるなんて不健全だぞ。やっぱり俺が引っ越してこなきゃな！』

左京はこの家がとっても気に入ったようです。

少し時間が経ち、ダニエルが仕事から帰ってきました。

「む～・・・本意じゃない仕事で昇進してもなぁ・・・。」

どうやら仕事はそつなくこなしているようで、一つ昇進したみたいです。
「でも、適当にやってるのに昇進しちゃうなんて、俺って天才？」

お前・・・。

「やぁ！ダニエル！」
「あっ！左京さん、来てたんですか？」

「どうですか？この家？」

「いいね！気に入ったよ。」
「ホントですか！じゃあ・・・。」

「引っ越してきます！？いつ？いつ？」

「今夜・・・は無理ですよね！？明日？明日は大安ですよ！きっと！！」
「あーっははっは・・・。」

「くすくすっ。ダニエル。お前、俺の父さんに似てるよ！」
「えっ？左京さんのお父さんですか？」
「そ。」


「あ！橘花ちゃん。俺、本当に決めたよ！明日、午前中には荷物まとめて引っ越してくるからね！」

「わ！ホントですか！？午後からは用事あるけど、待ってます！」
「じゃ、早い時間がいいな！」

こうして、左京と宗太親子は、クレメンタイン･シェア･ハウスの一員になることに。

しかし・・・
「・・・ったくダニエル・・・余計なことしてくれちゃって・・・。」

「バッカじゃないの？あいつ・・・。」


そのバカは、明け方、橘花の部屋に入り込み、テレビを見て大笑い。

「もーっ！！うるさいっ！！」

「あっ！なんで消すんだよー。」
「ちょっと！あんた、ワタシの部屋、入らないでって言ったでしょ。」
「でも、鍵かかってないし・・・。」

「大体、なんで左京がこの家に引っ越してくることになってんのよっ！！」
「え・・・？橘花・・・嬉しくないの？だって・・・左京のこと・・・。」

「そりゃ好きよ！大っっ好きよっ！！」
「・・・喜んでたじゃん・・・橘花・・・。」

「左京を目の前にして、嫌な顔なんて出来ると思う？」
「大好きなスターと一緒に住めるんだぜ？こんな夢みたいなこと・・・。」
「バカ・・・。夢ならいいのよ。夢で逢うくらいがちょうどいいの。」

「ちょっと会ったり話したりするくらいがいいのっ。一緒に住んだら、『左京』なんて気軽に呼べなくなる！左京が寝ぼけ眼であんたみたいにパンツ1枚でうろうろするとこなんか見たくないっ！左京にゴミ出してもらったり、掃除させたり洗濯させたりするのはイヤっ！！」
「・・・俺・・・パンツ1枚じゃないよぉ・・・。」

「でも、でもさっ。他のファンの子たちとは違うんだぜ？一緒に住むんだよ？うんと仲良くなれるじゃん！！」
「・・・わかんないヤツね・・・。」

「ワタシのプライベートも左京に晒すことになるのよ？同居人なんて・・・ファンより格下じゃないっ。」
「えー・・・。」
「ダニエルのバカっ。しばらく口利かないっ。」

「えええええーーーっ！？なんでーーーっ！？」

「ツーンだっ。」
「あ・・・橘花・・・俺・・・なんか間違ってた・・・？」

ダニエル、いろいろと間違ってます。

「夢で逢うくらいがちょうどいい・・・か・・・。そんなのって・・・。俺なら夢だけじゃイヤだよ・・・。」

まだ・・・ダニエルは自分の気持ちに気付いていません。
どうして自分は橘花の喜ぶ顔が見たかったのか、なんてことも。
一番単純で、でも一番複雑な感情に、ダニエルはいつ、気づくんでしょうか。
そして、気付いた時に、それは間に合うんでしょうか？



・・・なーんちゃって恋愛ドラマみたいにしてみましたー(;^ω^A
次回は左京が引っ越してきます！・・・が、ちょっとお知らせ・・・。
あー・・・実はやられました！夏風邪・・・(ﾉ_-｡)
なのに、這ってでも行かなければならない用事があり、この後のプレイが進んでいません～･ﾟ･(ﾉД`;)･ﾟ･
なので、ちょっと更新、間が開くかもです～。
何卒ご容赦を・・・ｍ(_ _；)ｍ