ギルは最近、ロッタを鍛えることに嵌っていた。
「そうだ!いいぞ!!行け!!」
「きゃーっ!もうイヤだ~っ!」
「弱音を吐くんじゃない!!やりきったらメシがうまいぞっ!!」
「え~ん!勘弁してぇ~!」
なぜこんなことをしているのかというと・・・単に自分がヒマだからだ。
仕事は週に一回。週休6日。
特にこれといった趣味もなく、休みの時はふらふらと楽しんでいるが、早寝・早起き。生活は規則正しく、リズムが乱れることは滅多にない。
「ねぇねぇ、ギルー。」
「ん?なんだ?俺、眠いんだけど・・・。」
「まだ宵の口じゃん!踊りに連れてってよー。」
「また今度な。」
「もうっ!ギルがそんなんだったら、他のオトコの子誘っちゃうからっ!」
「はいはい。勝手にしろよ。」←眠くて思考回路が停止しかかっている
「浮気・・・しちゃうんだから・・・。」
「そんなことしたらぶっ殺す。」←ちょっと目が覚めた
「お前、わがままばっかり言うんじゃないよ。疲れてる時に限って誘ってくるんだから。」
「そんなにわがまま言ってないよ・・・。」
「・・・ったく・・・。」
「しゅん・・・。」
別にギルだって、ロッタと遊びたくないわけではない。
時間はあるのだから、いくらでも遊びに行ってもいいのだ。
但し、タイミングが合えば、の話しである。
ギルがヒマな時間には、ロッタは大概眠っている。
そして、ロッタが活動的になってくると、今度はギルが眠くなってくる。
(だったら鍛えてないで遊びに行けばいいのでは・・・?)
「あ、左京~。うふ。相変わらずイイオトコ~。あのね・・・ぎゅ、ってしてもいい?」
「え?」
「ちょ・・・やめろよっ!」
「え?え?な・・・なに?どうしたのっ!?」
「当たり前だろ?君、こないだもそうやって俺のこと口説いて、ギルに散々怒られてたじゃないかっ!二度と俺のこと口説くなっ!」
「左京・・・だって・・・今までそんなこと言わなかったじゃない・・・。」
「君、もうちょっと慎めよ。」
「ひどーい・・・。」
「いつまでもそんなことばっかりやってないで、真面目になれって。」
「・・・あ、分かった~。橘花とうまくいかないんでしょ?あの子、まだネンネだからね~。さすがの左京でも落とせなくって、イライラしてんでしょ?」
「む・・・君に何が分かるってんだ!!」
「あーんな遊び慣れてない子なんか、やめなよー。左京には物足りないでしょ?身体だって、たいしたことないしー。」
「こいつ・・・。」
「いい加減にしろっ!!君、橘花と友だちじゃないのかよっ!!」
「だぁーって・・・。」
『・・・なんでこんなに怒るの?前は誘っても怒ったりしなかったのに・・・。』
『も・・・ギルも左京も大っ嫌い!!』
ギルと過ごせない時間が長くなると、人のぬくもりが恋しくなる。
だから他の男に声をかけて、自分は愛されていることを確認したくなる。
けれど・・・左京に拒絶されて、悲しくなった。
どうして拒絶するのだろう?ギルは、どうしてもっと自分と触れ合ってくれないんだろう・・・。
「ギル。」
「ん?どうした?左京。」
ロッタが仕事に出掛けた後、左京はギルとロッタの部屋を訪れた。
「すまん、俺・・・ロッタちゃんのこと、怒鳴りつけちまったよ・・・。」
「ん?あいつ、なんか失礼なことでもしたか?」
「なんかさ・・・いろいろ言われてカッとなってさ。」
「またお前のこと口説いたか?あいつ・・・左京だけはもう口説かないって言ってたくせに・・・。」
「え?俺?なんで?」
「だってよ・・・。お前、橘花とキスしてたんだろ?」
「・・・やっぱ知ってたか・・・。ロッタちゃんが黙ってるはずないとは思ってたけど・・・。」
「まぁな。あいつさ、あんなふらふらしてっけど、案外、人のものには手、出さないんだ。」
「へぇ・・・。」
「別に怒鳴りつけてやってもいいよ。しかし・・・珍しいな。お前がそんなに熱くなるなんて。」
「うん・・・。」
「橘花のことでも言われたか?」
「え・・・?」
「図星だな。お前、気をつけろよ。坊ちゃんは知ってるぜ?」
「え・・・。」
「それもまぁ、ロッタが悪いんだけどよ。あいつが俺に話してるのを聞かれたんだ。」
「そうか・・・。」
「なんだよ、その顔。お前・・・本気で橘花に惚れてるな!?」
「・・・ああ。」
「(・・・マジかよ!)・・・ま、俺は誰にも言わないけど。」
「助かるよ。」
ギルは真剣な表情の左京を見て、正直驚いていた。
まさか、本当に左京が橘花に恋愛感情を抱いているとは思ってもみなかった。
もしかすると・・・とは思ったが、ロッタの話はかなり誇張されていたりするので、アテにならないことも多いのだ。
「けど・・・ギルも本当にロッタちゃんのこと好きなんだな。」
「・・・おい、ちょっと耳貸せ。」
「ん?」
「俺、ロッタにプロポーズするから!」
「えっ!?」
「近いうちにな。指輪も用意した。」
「本気かよ!?」
「まだ、誰にも内緒にしててくれな。」
左京がやけに沈み込んでいて、今まで見たこともないような暗い目をするので、ギルは左京の気分を盛り上げてやろう、と左京にだけ、ロッタにプロポーズする決意を打ち明けた。
「OK!そうか・・・プロポーズするのか!」
「ああ!」
「頑張れよ!」
「もちろん!」
「あいつからOK貰ったら、式も挙げる。招待するから、来てくれよ!」
「演奏して盛り上げてやるよ!」
「ははっ。左京にギター弾かれたら、客がみんなお前に注目しちまうよ。」
「・・・うーん・・・。しかし、左京。お前、細くてちっさいなぁ・・・。」
「(てめえがでか過ぎるんだろうがっ。)・・・苦しいから離せ。」
↑ホントにちっさいw
「けど、結婚か・・・。いいな。」
結婚・・・という言葉に、左京は羨望を抱いた。
「ん?お前だってすりゃいいじゃないか。二度目だってなんだっていいだろう?」
「ん。そうだな・・・。」
「なんだ?その顔。・・・ま、一度失敗してるから、ビクつくのは分かるが。」
「そういうんじゃ・・・ないんだ。(たぶん・・・)」
「自由に生きてきたから、束縛されるのがイヤなのか?それとも、結婚出来ない重大な欠陥でもあるのか?・・・いや、そりゃないか。坊ちゃん生まれてんだからな。」
「俺のことはいいって。・・・幸せになれよ。ロッタちゃんのこと、ちゃんと繋ぎとめるんだぞ。」
「実はそれが一番やっかいだ。」
「けど・・・俺はあいつと幸せになりたい。ガキでもばんばんこさえて、浮気するヒマなんかなくしてやるさ!」
「それがいいな。」
結婚・・・という言葉を、いとも簡単に口に出来るギルを、羨ましく思った。
『ホント・・・羨ましい・・・ちくしょう・・・。』
『俺だって・・・。』
『橘花とばんばん子供こさえて・・・もとい、彼女が作ったパンケーキが食べたいな・・・。とりあえず・・・。』
↑パンケーキが好物
二人っきりで暮らして、橘花の手料理を食べ、たわいもない話をして笑い合い、夜は抱き合って眠る・・・。
そんなささいな幸せが、遠く感じた。
いや、ささいなことなどではない。
それこそが、生きているうえでの最大限の幸せなのだ、と感じていた。
長くなっちゃったので、切ります。
タイトルの種明かしは次回。
うん、父親として、一人の男としてどうしようかな?
返信削除って所ですよね左京。
う~~ん、いっそきっかちゃんと一緒に出て行ってもいいだろうし、
息子に嫌われたら、それはそれで時間をかけてゆっくり許してもらうしかないですよね。
しかし・・・きっかちゃんの気持ちは?彼女はどうしたいの?
二人はまだまだ話したいこと一杯ですよね。
ちゃんと向かい合ってお話ししないと。
でも実際怖いですよね。スターっていう「憧れ」の人と一緒になってしまうと。
自分の中の理想の部分が実際と違うと好きじゃなくなってしまうかもしれません。
さてギル君。
男がプロポーズするって決めた時はかっこいいですよね。
それが出来ない人の多いこと。中身の伴っていないのとかクチだけのとかだと
相手に「うん」って言ってもらえないですよね。
誠実さと真摯さ。信頼があれば難なくクリアできますが、
一度相手に対して不信感や亀裂が生じるとその後の結婚がかなり難しいものになりますよね。
左京君、とりあえずちゃっちゃときっかちゃんと結婚しちゃうのもアリだよ!w
この間の通りすがりの人さん、こんばんはー!!
返信削除左京、父親として、一人の男として、そしてもう一つ、ロック・スター佐土原左京として、どうしようか・・・ってとこですね。
ホント、出て行っちゃってもいいんですよ。彼女をさらって。
でも、やっぱり周りのことがどうしても気になる、そんなジレンマに陥ってしまってます。
考えすぎると身体に良くないんだけどね~。
ギルはやりますよ!!
この話し、途中からギルとロッタちゃんが狂言回しみたいになってて、二人はなぜか家の中の出来事を全部把握してて、みんなを振り回していく、みたいになってます。
でも、そんなギルとロッタちゃんも今回ばかりは主役です!
ふらふらしてるけど、ちゃんと自分のトコに帰ってくるロッタちゃんが、可愛くて仕方ないんですよ。ギルは(^-^)
それを正直に認めるギルが、左京には羨ましいんですよね~。
左京、もっと素直にならなきゃ!
・・・ま、それじゃストーリーに臨場感が出ないので、もうちょっとじりじりして貰いますけど(^_^;)ゝ
今から続編をアップします!!