「ダニエルさん、ちょっといい?」
「なんだ?」
橘花に自分の気持ちを打ち明け、まんまとキスしてしまった宗太だったが、ダニエルにはこのことを告げておかなければならない、と思っていた。
「ゴメン・・・ボク、協定破った。」
「協定?なんだそれ?」
「ボク・・・抜け駆けした。橘花さんに好きだ、って言っちゃった。」
「え?え?そ・・・それ・・・ええーーーっ!?」
「うおおおーーっ!!なんでだよ!お前、なんでそんなことすんだよっ!!」
「・・・ゴメン。我慢できなくなった。」
「・・・っんで?橘花は・・・?」
「なんにも。返事いらない、って言っちゃったし。」
「な・・・なんにも言わないのかっ!?」
「うん・・・。ゴメン。約束破ったから、ダニエルさんの言うことなんでも一つだけ聞くよ。」
「なんでもって・・・じゃ、お前、俺がケツ貸せって言ったら貸すのかよ!?」
「・・・それは勘弁。」
「・・・よしっ、じゃあ・・・。」
「なに?」
「これを飲め。」
「これ・・・なに?」
「我がツイン・ブルック基幹病院研究班が開発した薬だ。大丈夫。命に別状ないのは動物実験で実証済みだ。」
「・・・危なくない?それ・・・。」
「危なくなどない。いいから飲め。それで今回のことはチャラにしてやる。」
「わ・・・分かったよ・・・。」
ごっくん。
「・・・どうだ?」
「苦い!」
「いーち、にーい、さーん・・・。」
「う・・・なんか・・・目の前がチカチカする・・・。」
「よーん、ごーお、ろーく・・・。」
「う・・・。」
「なーな・・・。」
ばたっ。
「よしっ。7秒で陥落か!」
「しばらくそこで眠っとけ。俺を出し抜いたバツだ。」
飲む麻酔薬の効き目は、まずまずのようだ。
しかし宗太は、一つ隠し事をしている。
『キスした』とまでは言わなかった。
そこまで言ってしまっていれば、この程度では済まなかったかもしれない。
「よぉっ、左京。」
「おー。おかえりー。」
「なにやってんだ?」
「んー、作曲。」
「作曲って・・・パソコンで出来るのか!?」
「出来るさ。」
「あ、そうだ。宗太のヤツ、橘花にコクったんだとよ。俺のこと出し抜きやがって・・・。左京、親として、ちゃんと教育してくれよ~。」←バカ
「・・・んー・・・。」
ダニエルの言葉に、ビクっと身体が震えそうになった。
宗太がどんな風に橘花に告白したのかは分からない。そして、橘花がそれにどんな反応を返したのかは分からない。
けれども、左京の頭の中は、最悪のパターンを想定している。
つまり、宗太のことを憎からず思っている橘花がOKを出して、二人は晴れて恋人同士になった、ということも考えられるということだ。
『左京・・・。』
なんとなく顔を合わせ辛くて、橘花はあの日から左京とまともに話をしていない。
左京が何を考えて、自分を抱きしめたのかは分からない。
『ただ単に・・・ワタシを落ち着かせたかっただけなんだよね?きっと・・・。』
そうでなければ、左京の行動の意味がつかめない。
『じゃ、宗太くんは・・・?宗太くん・・・ワタシのこと『好きだ』って言ったわ・・・。』
橘花は橘花で思い悩んでいる。
橘花とて、宗太のことを嫌いではない。
けれどもそれは、家族のような親しみで、年下の宗太を弟のように思っている、ということなのだ。
『・・・サイテー・・・。』
自分がいくら左京を好きでも、左京との仲はこれ以上深まるはずがないと考えている。
だったら・・・。
『好きだ』と言ってくれる宗太に身を任せて、忘れてしまいたいと思う。
成就を望むべくもない恋ならば、左京の遺伝子を受け継いでいる宗太なら、相手として申し分ない。
・・・そんなことを一瞬でも考えてしまう自分を、最低だと思うのだ。
「橘花、橘花ー。お前、宗太にコクられたんだって?」←バカ
「・・・は?」
「ちょ・・・なんでそんなこと大声で言うのよっ。」
「お前ー・・・宗太はやめとけ。あいつはガキのふりして、計算高いぞ~。俺の方がいいと思うよ?お買い得だよ?」
「何がお買い得よっ。値下げしてるオトコなんて嫌よっ。」
「ま、そう言うなって。試してみな?安くても新鮮だぜ?宗太よりフレッシュかもしんないぜ?」
「あははっ。バカね。嫌よ。」
例えば・・・
宗太でなくとも、馬鹿な事ばかり言って、それでも一緒に居て居心地のいいダニエルでも、それはいいかもしれない。
きっと愉快な恋愛が出来るだろう。
けれども左京は・・・左京との恋は、きっと苦しいだけだ。
「あーーーっ!まったく・・・。」
「・・・俺ってなんであんな言い方しか出来ないんだ・・・。でも、まっ、橘花が笑ってくれたからいっか。」
宗太に出し抜かれて、さすがのダニエルも気が滅入っている。
けれど、暗い顔をするのは性に合わない。
今は道化を演じて、橘花を笑わせておいて、そして、いつか掠め取ってやろうと思うのだ。
「へへっ。抜け駆けの協定は破棄されたかんな。見とれよ。宗太っ!」
三人三様になんとかしたい、という思いでいっぱいだった。
『ホント・・・ワタシってサイテー・・・。』
「橘花ー。どうした?」
「え?」
「なんか・・・思い悩んでる顔だぞ?」
「え・・・。そんなことないよ・・・。」
「なに悩んでるか知らんが、お前、思ったように行動すりゃいいんだよ。」
「ギル・・・。」
ギルが何を知っているのか、橘花は知らない。
けれど、今の言い方は、なにか知っていて、そして後押ししてくれているのだ、と分かる。
「ワタシ・・・ワタシね・・・。」
「うん?」
「・・・ヤな女なの・・・。」
「なんだそりゃ?なんでお前が嫌な女なんだよ。」
「だって・・・。」
「だって・・・心が揺れ動くの・・・。何人もの人に・・・。ワタシ・・・娼婦だったシンディーの血を引いてるんだもの。自堕落で、淫蕩で、いろんな人にいい顔して、みんなに愛されようとしてるのかもしれないって・・・。」
「なーに言ってんだ。そりゃ、ロッタだろ?」
「ギルは・・・ロッタのこと好きでしょ?」
「どこが好き?どんなところが好き?」
「カラダ。」
「ええーーっ!?」
「・・・なんてな。全部好きさ。甘ったれなとこも、後先考えてないとこも、ま、もちろん顔もな。」
「・・・いろんな人のこと口説くのも?」
「・・・たまには許せないけど、あいつはちゃんと俺のトコに帰ってくるからいいさ。」
「大人だねぇ~。」
圭介にはこんな話は出来ない。
かといって、ダニエルや宗太や、ましてや左京にも話せない。ギルだから話せるのだ。
「お前・・・娼婦の血を引いてるって言ったか?」
「う・・・うん・・・。」
「バカか、お前。娼婦の血の遺伝なんかあるか。娼婦ってのは生まれつきのもんじゃないだろ?生まれて、ま、ちょっとは素質みたいなもんもあるかもしんないけど、周りの環境とか、生活でなるもんだ。」
「・・・そうかな・・・。」
「お前・・・ちょっといいか?」
「ん?・・・きゃっ。」
いきなりギルに抱きしめられて、驚いた。
「どう思った?」
「え・・・ビックリした・・・。」
「それだけ?」
「う・・・うん・・・。」
「じゃ、もう一回。」
「えっと・・・。」
「どうだ?」
「・・・ちょっとドキドキした・・・。」
「ふっ。お前、娼婦の素質、ねえな。」
「なんで?」
「娼婦がいちいちドキドキしたりするかよ。バカ。」
「もうっ!いちいちバカバカって言わないでっ。」
「ははっ。悪い。けどな・・・そうだな・・・お前、『グリーン・スリーブス』って歌、知ってるか?」
「知ってるよ。Alas, my love, you do me wrong~・・・てヤツでしょ?」
「そう。その歌、娼婦に捧げた歌なんだぜ?」
「え?そうなんだー。」
「レイディ・グリーン・スリーブスってのは娼婦のことだ。けどな、その娼婦に恋焦がれて拒絶されて、悲しんでる歌さ。」
「へえ・・・。」
「娼婦でもそんな風に、恋焦がれるヤツがいるってこと。・・・俺みたいにな。
だからお前も頑張れ。娼婦でもいいさ。まとめて相手にしてもいいじゃないか。
・・・でも・・・お前、本当に揺れ動いてるのか?自分の気持ちだけは偽るなよ。」
「ギル・・・。」
ギルの話を聞いていると、心が静まってきた。
偽らない自分の気持ち・・・以前、圭介にも似たようなことを言われたかもしれない。
『二人で仲良さそう・・・。なに話してるんだろ・・・。』
そんな二人を見てロッタの気持ちはざわついていた。
そして、妙に悲しい気分になっていた。
こんにちは、片岡です
返信削除橘花ちゃん争奪レースの感をなしてきましたね
各馬いっせいにスタートしました
今のところ左京が半馬身リードでしょうか
果たして、勝利の栄冠は誰の手に…?
ここにきて、お笑い担当(<違)のギルもいい味見せてくれますね こんないい男だらけのシェアハウスに私も住みたいです♪
ではまたお邪魔させていただきます
片岡さん、おはようございます!
返信削除ホント、みんないい男です。
ワタシも住みたいわ。毎日わくわくして過ごせそう♪
ま、ワタシが女の子シムを作るのが苦手なので、やたらいつも家の中が男だらけになっちゃうのがいけないんですけど・・・。
ロッタちゃんも頂き物だし。
争奪戦レースは、決着、早いです(笑)
次回、ひとまず決着しますよー。
勝者はご想像の通り・・・ってとこでしょうか。
むむ・・・これは難しいところですね。
返信削除宗太君に関しては弟のよう、
左京に対しては憧れ、
ダニエルに対しては友達。
確かに左京と一緒になると苦しいかもしれない、
苦しいのが愛って簡単に言われてもいざ当事者になると
果たして耐えれるのか。
これは選択が難しいですね~~。
決定打って何なんでしょうね?
お金?顔?性格。雰囲気、気持ち、
そう言われると解らないですよねえ。
あ、そうだ。話代わりますが、私もアメショー飼ってますよおお
んでその猫の性格をシムで擬人化して作ってみたら面白かった。
猫なので水嫌い。でも毛づくろいするから綺麗好き、って性格もいいかも
あとフレンドリーで幼稚で非常識にしましたw
コーギーのわんこも飼っていてその子も人間化してみました。
なにぶん、見た面のいい犬猫なので、イケメン男児になりましたよ~。
あ、それから私京都生まれの京都育ちの大阪在住やってますよおお
yuzuさん京都お好きなんですね。私もたまには実家に帰らなければばばば。
ちなみに私はただの、おばちゃんですww
この間の通りすがりの人さんこんにちはー!!
返信削除え?京都生まれですかっ!いいなぁ~いいなぁ~。
京都、好きです!匂いがいいんですよ。匂いが。
和風だしのい~い匂いがするんですよぅ!
京都、何回も行ったんですけど、まだまだ行きたいトコとか食べたいものとかいっぱいあって、でも日帰りで行けるとはいえ、先立つものもなく。う~ん。
自分の欲望と現実にギャップがありすぎるんですよねー。
おまけに・・・アメショ飼ってるんですか!!
ヽ(^▽^)人(^▽^)ノ仲間♪
それ、面白そうですね~。
にゃんこの擬人化。
わんこもいるんですか!いいなぁ。わんこはお散歩が大変なので、飼えないのですよー。
・・・っと反応するところがそこか・・・という感じですが・・・。
橘花は選びますよ。
でも・・・その後はどうなるか分かりません。
決定打がなんなのかは本当に難しいんですけど、「タイミング」と言っておきます(^_^;)ゝ
今日は仕事休みなので、今日中に1本アップします。
皆さんの反応が怖いわ・・・。