この世には・・・思いも寄らぬ出来事が起こることがままある。
神のいたずらか、運命か。
『左京がワタシのこと好きだって言うなんて・・・。』
昨日の出来事は、もしかすると夢かもしれない。
まだそんなことを考えている。
『もし夢なら、このまま夢の中に住みたい・・・。でも・・・きっと現実に返る時がくるんだろうな・・・。』
物語の世界でも、夢のような時間は長く続かず、ラストは辛い現実を突きつけられることも多いではないか。
深みに嵌ると抜け出せなくなる。
それが怖い。
「なー、橘花ってば~。なんで宝探ししないんだよー。」
「またその話ぃ~?」
「だってよぉ、探すだろ?普通。」
せっかく左京との甘い時間に思いをはせていると言うのに、これだ。
この話題を出されると、橘花は感情的になる。
「どうせワタシは普通じゃないよっ。」
「そんなこと言ってないだろっ?」
「おいおい。なに揉めてんだ?」
「だってこいつ、しつこいんだもん。宝探ししろって。」
「宝探し?ああ。クレメンタインの遺産探しか。」
「探すったってどこ探していいかも分からないし・・・。ワタシはチャールズの亡霊に振り回されるのは真っ平よ。」
「だって・・・遺産があったらラクに暮らせるぜ?一生、なんの心配もなく暮らせる額かもしれないじゃないか!」
「だーかーらー遺産なんかいらないんだってば!そんなに欲しいんならダニエルにあげるって言ったでしょ?」
「む・・・。可愛くないな、お前・・・。」
「可愛くなくて結構!」
このところ左京のことで頭がいっぱいで、クレメンタインの遺産のことを忘れるともなく忘れていた。
自分には、チャールズの墓を探す義務などない。そう思う。
このまま黙っていれば、エリックはともかく、みんな自分のことに忙しくて、そんなことに構ってはいられなくなるだろう。
そう思っていたのだが・・・。
「・・・なーんかあいつ・・・やけにワタシのこと構うのよねー・・・。」
「なに考えてんだろ・・・遺産なんか・・・どうでもいいのに・・・。」
遺産があったとして、それがどうなる?
自分が必要ない、と感じているものを探す必要などない。
『やっぱりここにはいたくない』
以前、チラッと思ったことが頭を掠める。
ここから逃げ出したい。圭介がこの家にいなかったら、もしかするととっくに逃げ出していたかもしれない。
「宗太、ちょ、聞いてくれよー。」
「なに?アヤシイ試薬はもう嫌だよ。」
「新しい薬はまだ開発中だ。安心しろ。」
『ちぇ・・・またボクを実験台にしようとしてるな・・・この人・・・。』
「そうじゃなくってな。橘花のことだよ。」
「橘花さん?・・・どうかしたの?」
「あいつさー、宝探ししろ、っつったらやたら怒るんだよー。」
「宝探し?遺産探し?」
「そ、そ。なぁ、お前からも一言言ってやってくれよー。」
「ヤダよ。そんなこと言ったら、橘花さんの神経、逆撫でするだけじゃん。」
「なんで?」
「バッカだなぁ。橘花さん、嫌がってんだよ?自分がクレメンタインの子孫だってこと。」
「だからなんで?」
「・・・言葉で説明するのは難しいよ・・・。」
この二人・・・橘花を通してライバル同士なわけだが、なぜかやたらと仲がいい。
同じ女性を思っている、という共感が、二人を仲良くさせているのだろう。
そして、二人とも同様に、橘花からは恋愛対象外と見なされてしまったわけだが、二人はまだそれを知らない。
「だってよー、遺産があったら人生バラ色じゃないの?働かなくってもいいしさ。」
「ダニエルさん、仕事、辞めたいの?」
「辞めたい!兄ちゃんに、『お前が家を再興しろ』なんて言われて、いやいや医者やってるんだから。橘花の遺産があれば、俺んちの再興なんてあっという間じゃんか!」
「・・・それ、根本的になんか間違ってない?」
「何が?」
「橘花さんの遺産だろ?なんでダニエルさんの家が再興出来るんだよ。」
「だって、橘花のヤツ、遺産はいらないなんて言うんだぜ?だったら俺が使ってやるっての!」
『この人・・・なに言っても無駄かも・・・。』
こういったことは、外堀から埋めなきゃダメなんだ、と宗太は思う。
橘花がその気になるまで待つのが大切なのだ。
その橘花が動かないのなら、刺激だけ与えて、直接的なことは言わない方がいい。
だから、橘花に告白した。返事はいらない、と言った。そうすれば橘花は答えを出そうとして考える。
まさか、もう考え終わっていて、答えが出ているとは宗太は思ってはいなかったが・・・。
「橘花さん、彫刻の続き・・・。」
告白した後も、橘花はそれまでと変わらずに接してくれている。
だから傍で自分が彫刻をして、橘花の芸術家魂を刺激できれば、と思っているのだ。
「・・・なんだ。いないのか。・・・え・・・?」
「これ・・・橘花さんが描いた・・・の?」
そこにあった描き上がった一枚の絵・・・。
祖父である以蔵が最期の時に描き残したものと同じモチーフ。
恐らく、橘花はそれを見てインスピレーションを感じ、描いたものだろう。
・・・今・・・
宗太も同じものを描いている。
しかし・・・
「・・・なんて才能だ・・・。」
画家の卵なんて気取っているが、橘花が片手間に描いた絵に及ぶべくもない。
自身が画家であり、いろいろな作家の絵も見て来た宗太には、この絵がかなりの水準のものであると分かる。
「いつの間にこんな・・・。」
確か・・・この家に来た時には橘花は絵筆を持つのもほとんど初めてで、宗太の方が腕は上だった。
それが、ほんの短い期間に、驚くほど上達している。
「ボク・・・敵わない・・・。」
どんなに努力しても、天性の才能を持つものには敵わない。
『才能』というのはどこからくるのだろう?
自分にはない才能を持つ橘花を妬ましい、と思った。
宗太は、画家としての自負を喪失させるほど衝撃を受けていた。
「橘花、ちょっと・・・。」
「ん?パパ、なに?」
「昼間のダニエルくんの話なんだけどさ。」
「・・・遺産のこと?」
「そう。ちょっとお前の言葉で引っかかることがあって・・・。」
「ワタシ、遺産探しなんてイヤよ。」
「うん。もっともだとは思うんだけど。・・・お前、『チャールズの亡霊に振り回されるのはイヤ』って言ったろ?」
「うん・・・。」
「チャールズの亡霊を、本当に見たのか?」
「そういう意味で言ったんじゃないよ。」
「・・・そうか。じゃ、この家は幽霊は出ないのか?」
「左京のお父さんとお母さんの幽霊なら見たことあるよ。お墓が裏庭にあるでしょ?」
「うーん・・・。」
・・・と、そこへ、仕事を終えたロッタが帰って来た。
「あっ!君、君っ!」
「んー?パパさん、橘花、ただいまー。」
「ロッタくん、君、幽霊の召喚とか出来ないのか?」
「あたし、霊媒師じゃないよー。」
「普通の霊は呼び出せないの?」
「どっちかっていうと陰陽師だもん。悪霊退散の方だもん。いい霊は呼び出せないよ。」
「そうか・・・。チャールズの霊がこの家にいるなら、墓はここにある。元々考えてはいたんだ。そんなに遠くにはないだろうって。だから、チャールズの霊を呼び出せないかと思ったんだけど・・・。」
「ワタシも考えたけど・・・。」
「チャールズの幽霊探すの?でもねー、この家、左京のパパとママの霊がいるから、霊感、働かないんだよねー。」
ロッタはそんなことを言ったが・・・。
しかし、チャールズの霊は
この家にいた。
彼は三人が話している後ろを、すい、と横切り、
そして消えていった。
「ロッタくん!そこをなんとか!なんか感じない?」
「あたし、今仕事してきたばっかりで、感度ビンビンだから余計分かんないー。」
『・・・なんか・・・。』
『今、背筋がぞわぞわした・・・。』
なるほど。チャールズの墓があれば、霊が出てくるはずだ。
まだ見たことはなかったが、なんとなく・・・墓はここにあるような気がした。
『でも・・・どこ・・・?家の中には見当たらない・・・。』
だとしたら・・・どこかに隠されている部屋があるのだろうか?
いや、エリックは確か、この家は何度か建て直している、と言ったはずだ。
それなら、地下か・・・。
だったら、家中掘り返してみればいい。
その前に、エリックに聞いてみてもいいかもしれない。
「探して・・・みようか・・・。」
ダニエルにいくら言われてもその気にならなかったのに、今、墓探しをしてみようという気になったのは、ダニエルだけではなく、きっと皆、同じことを考えているだろうことに気がついたからだ。
「それに・・・神様はワタシの願いを叶えてくれた・・・。」
左京が好きだ、と言ってくれた。橘花が望んでいた言葉を、左京は言ってくれた。
『・・・でも・・・もう一つだけわがまま聞いて欲しい・・・。』
『・・・一度だけでいい。左京に抱かれたい・・・。そうしたら・・・すべて決着をつけるわ・・・。』
『たった一度だけでいいのよ。それだけで・・・。』
その願いをもしも叶えてくれたなら、自分もチャールズの願いを叶えるために努力しよう、そして、すべてが終わったらその時は・・・。
ああぁ~~、そうだこのお話を読んでて言おうと思ってたんですが、
返信削除yuzuさんが結構文学的で(英語とか使ってらっしゃるから)
頭の良い人だな~と思って、キャラの名前とかもかっこいいと思ってたんです。
私なんて、クレメンタインをイケメンタインとかって読んでしまうぐらいですから。
家に執着した物語って良いですよね、シムのお話を見てて思ったのが、
昔「かまいたちの夜」っていうサウンドノベルのゲームがありまして、
アクションゲームとかじゃなく、文字だけで推理してサスペンスを解いていくお話が
あったんですよ、で「かまいたちの夜」が非常に好評でそのあとまた
お話が発売されたんですが、そのお話の題名が「夜想曲」っていう、
ベートーベンのノクターンみたいな曲がこう、怪しくもの悲しく流れてて、
謎解きをしていくっていうサウンドノベルがあったんですよ、
その雰囲気に似ていて、やっぱり文学の才能がある人のお話は良いな~と
ふと思いました。赤川次郎が書いたやつなんですってぇ。
古びた洋館の怪しい雰囲気のする曲です。夜想曲 ノクターン。
ひぃい~~~、幽霊怖いですよねえ、まだ白い色の幽霊は良い幽霊なんですよね?
赤とか水色の幽霊は怖い幽霊。
ここにきて急に芸術の才能を発揮しだしたきっかちゃん。
怪しくも不気味で美しい、そんなお話にわたくしは夢中になっております!
宝探し、わくわくしてきたぞ~~。
あ・・・またこんな時間にメールしちゃった、起こしちゃったらすいません。
おはようございます♪
返信削除チャールズの霊が橘花達の後ろを通り過ぎた時、
思わずぞくっとしました。
そうか…お墓はこの家にあるのか。
よく考えたらそうかもしれないと私も思いました。
そして橘花が描いたあの絵。
彼女の才能が芽を出しましたね。
宗太が自分に自信をなくし、嫉妬するのも分かるような気がします。
片手間で書かれた絵があの絵なんですもね…。
なんとなく宗太を抱きしめてやりたくなりました。
彼にも頑張って欲しいところです。
橘花と左京のベットシーンはもしや近いのでは…?
それだけで興奮度100%です(笑)
続きを楽しみにしていますね!
追伸 イケメンタイン……(爆笑)
この間の通りすがりの人さん、おはようございます!
返信削除大丈夫。今朝はメールで目が覚めませんでした(笑)
それというのも、昨日、遊んできて疲れてたから!
ちょ・・・「イケメンタイン」に大爆笑です!!
ひ~確かにこの家、イケメンタインだわd(≧▽≦*)
そのセンス、最高ですっ!!
「クレメンタイン」って本来は女の人の名前で、姓に使われることはあまりないようなんですが、(オーマイダーリン、オーマイダーリン、オーマイダーーリン、クレメンタイン~♪・・・て歌の『クレメンタイン』ですね。)この家の元になったLOTにその名前が使われていて、響きも好きなので採用しました。
英語を使うのは、単に日本語じゃ照れくさかったり、しっくりこなかったりするからって、それだけの理由です~。
マジレスしちゃうと、ワタシは『言葉』が大好きで、『言葉』をうまく操って見せる(魅せる)人になるのが憧れなんですよ。
小説とか大好きで、その中でも歴史小説とか、ハラハラドキドキ大どんでん返しのサスペンスとか、結構読みます。
この話をストーリー仕立てにしてしまったので、最初の方はそうでもなかったんですが、ここにきて、『言葉』を登場人物の台詞に乗せるにあたって、かなり苦労してますr(^ω^;)
なので、一話書くのに非常に時間がかかるんです。
前は15分くらいでちゃちゃっと書いてアップしてたんだけどなぁ。
でも、登場人物のその時の心情とか、行動の意味とかを考えて、うまく『ハマる』言葉が見つかった時は、「こここここれだっ!!」って感じで嬉しいです♪
才能?
そんなもの、ありゃしませんよ~。
照れるからやめてくだされ。
でも嬉しいヾ(≧∇≦*)〃ヾ(*≧∇≦)〃 キャー
ありがとうございます!!
「かまいたちの夜」「夜想曲」は名前は知ってるんですが、プレイしたことはなくって・・・。
サウンドノベルか・・・面白そうだなぁ。
あ、幽霊は、白いのがいい幽霊というわけではなく、白いのは老衰で死んだ幽霊。(自然死)
赤いのは焼死。青いのは水死。黄色いのは感電死ですよ~。
餓死は何色だっけ?黒?
幽霊、最初は怖かったんですが、今はだいぶ慣れました。
ただ、夜になって、幽霊が出てくる時の音楽が響くと、ドキー!!っとします。イヤホンで音聞いてるので余計に・・・(^_^;)ゝ
まことんさん、おはようございます!
返信削除このシーン、実は一発撮りです。
パパ、橘花、ロッタでそのような話をしていると想定してプレイしてて、幽霊が出てくる音楽が聞こえたんで、『きた!!』と思ってたんですよ。
でも、以蔵かもしれないし、ヒイナさんかもしれない。
ところがところが、出てきたのはチャールズで、三人の会話シーンを撮りながら、『チャールズ、どこに行く!?(幽霊の行動は指示出来ないので)』と思っていたら・・・恐ろしいほどのタイミングで、三人の後ろを通っていきました。
・・・いや、マジ、見てるこっちがぞくっとするほどのタイミングの良さで・・・。
チャールズの霊は、本物のチャールズです。
プレイの中で、彼は本当にもう死んでます。
種明かししちゃうと、ずいぶん前からチャールズのお墓はこの家に仕込んであって、(見えないところに)今までも何回か出て来てるんですよー。
で、実は左京だけは、チャールズの霊に会ってます。
他の皆はたぶんまだ知らないと思います。
チャールズは出てくる頻度が非常に低いんですよ。
墓が三つあるんで、なかなか出てくれないのかな~と思っていましたが、まさかこの時に出て来てくれるなんて・・・。
宗太、ちょっと可哀想だったかな?
でも、彼はめげない性格なので、大丈夫!
なんか、この家の中で一番老獪な考え方をしてるのって宗太なんですよね。
最近、左京より宗太の方がお父さんみたいになっちゃってて・・・。・・・あ、前からそんな感じだったか。
いや、ワタシも「イケメンタイン」に不覚にも爆笑してしまって・・・。
イケメンだらけのイケメンタイン。
どんな家だ!?・・・って(大笑)
『シェア・メイト求む!条件:イケメン』・・・って、それもいいなぁヾ(>▽<)
ベッドシーン?
はい。予告します。
次の次でベッド・インです。
それまで妄想しててください~Ψ(`▽´)Ψウケケケケケ(←オニですね~)