それは・・・
悠久の時のように長い時間だった。
左京の耳には、観客のざわめきも聞こえなくなっていた。
鬼が出るか蛇が出るか・・・。
どのくらい時間が経っただろう。
「・・・佐土原。」
「誰も・・・誰一人、帰るヤツなんか・・・いないよ。」
「・・・。」
「・・・そう・・・か・・・。」
客席から、
『やめないで。』
『歌って。』
・・・と小さな声援が聞こえてきた。
「・・・いいのか・・・?俺は・・・歌い続けても・・・いいのか・・・?」
「・・・いいんだな・・・?」
左京はゆっくりと振り返り、観客と向き合った。
すると・・・会場の隅から、小さな拍手が聞こえた。
それがだんだんと数を増やし、会場全体に響き渡った。
「みんな・・・ありがとう・・・。」
暖かな拍手が、やがて大きくなり、リズムに乗った手拍子に変わっていく。
歌って欲しい、とみんなが左京の名前をコールする。
「・・・歌うよ。俺は・・・歌い続けるよ・・・。」
左京は再びギターを手にして
一つ大きく深呼吸し
「お前らに・・・」
そして絶叫した。
「最上級のラブソングを聞かせてやるぜ!!Tight Squeeze!!!」
「米沢・・・。」
「はっ・・・はいっ。社長っ。」
田吾作は、困りきっていた。
客席が静まり返っている間、自分も動けずに、息が止まるかと思うくらいだった。
社長に何を言われるのか・・・ビクビクしながら次の言葉を待っていた。
「佐土原左京という男は・・・こんなに熱い男だったのか・・・。」
「え・・・えっとー・・・。」
その顔は、呆れた、といった顔つきではない。
穏やかな、憧れの対象を眺めるような遠い目をしている。
「ヤツを熱い男にしたのは・・・結婚したい、というその女性か・・・。」
「は・・・あの・・・その・・・。」
橘花の存在が、どこか醒めたところのあった左京を変えた、というのは、田吾作には今となっては分かる。
「なぁ、米沢。」
「はっ・・・はひ・・・。」
「左京は、最高のミュージシャンだ。」
「はひ・・・。」
だが・・・自分には分かったからといって、社長がそれを理解してくれるかどうかは分からない。
しかし・・・。
「その左京が惚れた相手なら・・・」
「きっと最高の女だろう!!」
「へっ!?」
まさか、社長がそんなことを言うとは思わなかった。
今まで、左京を金の稼げるミュージシャン、と欲得ずくでしか見ていなかった社長が認めている。
それに驚いた。
「あ・・・あの・・・社長・・・。」
「見てみろ!あいつは、ファンを味方につけやがった!!我々が、左京の結婚を認めなかったら・・・逆にこっちの方が立場が悪くなる!!」
「はひ・・・。そうですね・・・。」
その通りだった。
結婚したい女性がいる、と高らかに公言し、ファンもそれを認めた。
今更、スタッフの自分たちが何を言ったところで、悪者になるのはこちらの方だ。
そのことを知れば、左京を破格の待遇で受け入れたい、という事務所がいくらでも出てくるだろう。
社長はそれを、一瞬のうちに計算したのだ。
今、左京を手放すわけにはいかない。だから・・・認めざるを得ないのだ。
「それでも、大騒ぎになることは間違いない!・・・米沢、マスコミはお前が捌け!すぐに手配しろ!!」
「わっ・・・分かりました!!」
「・・・それにしても・・・本当にいいオトコだな!佐土原左京は。」
「ええ!!最高です!!」
「今回のことで、あいつはますますカリスマ的存在になる。米沢・・・あいつを大事にしてやってくれ・・・。」
「はい!!もちろん・・・もちろんです!!」
社長がこんな風に言ってくれるとは思っていなかった。
田吾作はその言葉が、なによりも嬉しかった。
曲が始まると、観客はヒートアップし、会場が大歓声と絶叫に包まれていた。
ギターを掻き鳴らすリズムに合わせ、左京が歌いだす。
「立ち止まる暇なんかないさ♪」
「考える余裕なんかないさ♪」
「ありったけの想いを胸に~♪灼熱の戦いの中へ♪」
そんな左京を見て、ロッタは最高の気分になっていた。
「ギル、ギルーーっ!左京、カッコいいねっ!!」
「あいつ・・・何てことしやがる・・・。」
こんな最高のシチュエーションを待っていた。
「でもね~ぇ~。あたしもカッコいいんだよ?」
「ん?何がだ?」
「耳、貸して!」
「ん?」
そうでもしなければ、自分の言葉が大歓声に消されそうだった。
「あのね・・・。」
「うん?」
「・・あのね・・・。」
「なんだ・・・?じれったいな・・・。」
「・・・赤ちゃん・・・出来た!!」
「ほ・・・ホントかよっ!?」
「うん!!」
ここに来る前に、病院に寄ってきた。
間違いない。
ギルの子供が、お腹に宿っていた。
「よ・・・よくやったっ!!」
「カッコいい?」
「ああ!最高にカッコいいよ!ロッタ!!」
「大丈夫か?座った方がいいんじゃないのか?」
「ううん。今日は・・・今日まではみんなと一緒に大騒ぎしたいの。左京の歌・・・赤ちゃんにも聞かせてあげたいの。」
「ロッタ・・・。」
「ロッタ・・・愛してる・・・。いい子を産んでくれ・・・。」
「うん!」
「・・・なぁ、宗太・・・。」
「・・・うん。」
「スゴイ・・・な・・・。」
「うん。」
ダニエルは、こんなライブを初めて見て、左京の想いがこんなにも強いことを知った。
「俺たち・・・あいつの足元にも及ばないじゃないか・・・。」
「そんなの・・・最初っから分かってたよ。」
「・・・そっか・・・。」
「俺、やっぱり・・・医者やめて、ミュージシャンになろうかな?」
「・・・なんでそうなるんだよ・・・。」
「お父さん、あそこまでなるのに、20年かかってんだよ?」
「う・・・2年くらいにまからないかな・・・。」
「無理!」
「宗太、お前・・・血が繋がってるくせに、なんで左京に影響されないんだよ・・・。」
「・・・お父さんに言われたんだ・・・。『俺のマネなんかするな』って・・・。そう言われなくったってボクは・・・ボクにはとてもマネなんか出来ない。」
「だって・・・親の七光りとか・・・。」
「ボクにはミュージシャンなんか無理だよ。素質ってもんがあるの!」
「素質か・・・。」
「ダニエルさんにはダニエルさんなりの素質があるだろ?」
「例えば・・・?」
「そ・・・それは・・・。」
「・・・今度、ゆっくり話す。」
「・・・無理しなくていいぞ。」
「・・・。」
まだリリースされていない、初めて聞いた歌なのに、観客の興奮は最高潮に達し、左京の声に合わせて、大合唱になっていた。
ギターのビートが、ドラムのリズムが、会場を揺るがす。
『俺は・・・。』
『まだこの光の海の中で歌っていられる・・・。』
『・・・神様・・・ありがとう・・・。』
『橘花に会わせてくれて・・・。』
『本当に・・・ありがとう。』
心から感謝の意を。
自分の運命に。
ここにいるすべての人に。
大地に根ざすすべてのものに。
そして・・・愛する橘花に。
「左京・・・。」
胸が熱くなる。
左京に初めて抱かれた、あの夜と同じ興奮が身体を貫いている。
「やっぱりあなたは・・・。」
「その光の海の中にいるのが似合ってる・・・。」
「最高にカッコいい・・・あなたを・・・好きになってよかった・・・。」
涙が溢れてきた。
左京が愛してくれる・・・そして・・・皆が祝福してくれる・・・。
この日を一生涯忘れないだろう。
「・・・泣いちゃダメなんだから!左京が見えなくなっちゃう!」
「ワタシはいつまでも見てるわ。これからは・・・あなたの一番近くで。だから・・・ずっとそうやって歌い続けて・・・。」
その夜のライブは、まさに伝説、と後に語り継がれるほどに観客を圧倒し、魅了し、熱狂の渦に巻き込んだ。
で・・・出来た・・・(ノ_ _)ノ
ユズさん お疲れ様でした~
返信削除もぉ完璧で言葉になりません・・。
感動を通り越したかもしれません。
涙と鳥肌と・・
ん~何かな・・なんか胸の中をいっぱいに
潤してくれたような・・そんな感じです。
美しいものをいっぱい見たい☆
綺麗な心と綺麗な表現と綺麗な言葉と・・
それだけに満たされたいっ!
人生そんなことだけでは暮らせないのに
ずっとずっと夢見る少女(おばさんですがw
それを満たしてくれるものは
数が少ないのですよね~
でも、今日はいっぱいにしてくれました♪
もぉ満足です!
終わってないのに・・。o.゚。(・ェ・。`人)。o.゚。ゴミンネェ!!
続きも楽しみに見させていただきますが
今日のところは・・もぉ満足!
ということでw
ありがとうございました(*- -)(*_ _)
本当にお疲れ様でした~
出し切った感がきっとユズさんにも
満ち溢れてると思いますっ☆
yuzuさん、こんばんわ~☆
返信削除もう・・・感動です!!!
心がすっごく満たされるのを感じました。。
ありがとうございます!!
左京、これからもその光の中で・・・これからは橘花ちゃんと一緒に歩んで行ってね(*^▽^*)
それにギル&ロッタちゃんもおめでとう~~!!!!
あぁ・・・おめでたい事づくしだ・・・☆
きっと、2人の子供だったら可愛い子が生まれてくるんだろうなぁ~(*´∀`*)
もう、飛行機の中から見たくて見たくて(笑)
家に着いて、荷物空けるのも途中にパソコン開いてしまいました(〃ω〃)
あぁ・・・私もこれで頑張って片付け出来ます。。
yuzuさんこんにちは!
返信削除ライブの舞台すごくよかったです!
ライブステージの雰囲気が良く出てますね。
マイクスタンドとかあるんですねえ。
アンプやモニターとかが無くてもしっかりステージの雰囲気が出てました。
お見事!ステージが一段高く上がっているのは基地で作ったのかな?
きっかちゃんも感無量ですね。最近ますますyuzuさんの魅力が
ここシムでめきめきと出てきてますね(特に左京のエロ画・・・w)
皆が幸せに向かって動いてるのが良いですねえ。
夢と希望をありがとうございます!
yuzuさん、こんばんは☆
返信削除こんな素敵なライブを見させてもらって幸せです!
しかも動画を見た後だったので、
リアルに音が聞こえてきて感動しております!
というか、yuzuさんの歌声に感動しております!!
すごいな~、yuzuさん、多才だな~
左京さんはやっぱりカッコいい!
社長まで納得させてるし。
左京と橘花にはもう怖いもの無しですね!!!
あっ、怖いものあった。。。
左京さん、橘パパへの挨拶が待ってるよ(^_-)
ギルとロッタもパパとママだぁ~☆
可愛いBabyが生まれますね、きっと♪
宗太とダニエルは相変わらずだけど、
左京さんのカッコよさに触発されて、
もっと男を磨いていってほしいです^^
さてライブが終わってしまいました。
ということは、少しずつ終わりが近づいてるわけで。
なんだか一気に淋しい気分に・・・
ぽよ~んさん、こんばんは!!
返信削除頑張りましたよぉ!!
こういうのって、自分がじ~んとしながら書かないと伝わらないんだけど、左京の『光の海の中で歌っていられる・・・』以下の台詞は、自分でもハマっちゃって、橘花と一緒に泣きそうになってました。
そうなんですよね~。
いつまでも夢見る少女でいたい。
日常の、ほんのわずかな時間だけでもそれがあれば、頑張れます。
ワタシは、いつもいつもいろいろなことを想像していて、こんなことがあったらいいなぁ、とか現実には絶対に起こりえないことでも、想像力を膨らませて考えるのが大好きです。
それを、文章だけじゃなくって、画像を合わせて作り上げられる・・・本当にシムズっていうゲームに出会えてよかった(^-^)
こういう風に、自分の頭の中で思い描いたストーリーを形に出来る機会なんて、普通にただ生活しているだけじゃ、ないですよね。
妄想癖があるとか、変わり者とか言われたって、この想像力は失いたくないんです。
満足していただけて、よかったぁ~☆
そ。
まだ終わりじゃないんです(^_^;)ゝ
でも、ここで最終回でもよかったかも・・・。
・・・いやいや。
まだまだハッピーをお届けしたいと思います!!
ありがとうございました!!
クララさん、こんばんは!!
返信削除そして、おかえりなさい!!
荷物よりなによりPCですかw
でも、ワタシもたぶん同じです(^_^;)ゝ
きっと片付けよりも先に、パソコン開いちゃうだろうなぁ。
これで左京は、ずっとステージの上で輝くことが出来ます。
きっと今までよりももっともっと光り輝いて、その光をみんなに降り注いであげられるでしょう。
傍にはいつだって橘花がいて、その橘花が、左京を更に照らす明かりになるんです。
ギルとロッタちゃんにも、待望の赤ちゃんが出来ました!!
これ、実は・・・2~3日(シム時間)NPC化してたら、本当に妊娠してました!!
なので、この時のロッタちゃんは、本物の妊婦さんなんですよね~。
きっと可愛い子が産まれるだろうなぁ(^-^*)
楽しみです!!
お疲れのところ、本当にありがとうございました!
時差ぼけとか、大丈夫ですか?
慣れてるから大丈夫かな?
まだもうちょっと続きますが、お付き合いくださいませ~♪
この間の通りすがりの人さん、こんばんは!!
返信削除大変な時に、コメントありがとうございます!!
なんか、ちっちゃいライブハウスみたいになっちゃいました(^_^;)ゝ
ライブ用のセットが配布されてて、その中にアンプとかいろいろあったのですが、マイクスタンドだけ使いました。
そっかぁ~・・・モニターだったな・・・。
もっとごっちゃりステージを飾ればよかったんだけど、ライトだけでいいかぁ・・・と思っちゃいました。
ステージは、基礎で1段上げてます。
レイトナイトのプラットホームじゃ低いので。
うふ♪
セクシーポスターに反応してくださいましたね(^-^*)
左京、色気あるんだもの♪
ちょっと調子に乗っちゃいました。
みんなが幸せになれるように頑張ってます!!
やっぱり最後は、スペシャルハッピーエンドがいいですよねっ!!
ありがとうございました!!
Naonさん、こんばんはー!!
返信削除うう・・・ツイッターでお返事できてなくてゴメンなさい~(≧д≦)
先に動画見ちゃいましたか!!
ライブのイメージのようなものは伝わったかな・・・?
わ・・・ワタシの声はちょっと・・・ヘタですみません・・・。
もっと練習しなきゃですね~。
左京の最後の難関は、圭介パパですよね。やっぱり♪
さて。
どうやって突破するんでしょうね~。やっぱり橘花に守って貰うのか、それとも・・・ふふふっ♪
ギルとロッタちゃんの赤ちゃん、楽しみです♪
元気で可愛い子が産まれるだろうなぁ(^-^)
男の子かな?女の子かな?
ロッタちゃん、きっと頑張って子育てするでしょうね!!
ダニエルと宗太は相変わらずです(^_^;)
でも、この二人も、左京や橘花の側にいて、少しずつ変化してます。
・・・変化してるはず・・・www
ふたりで珍道中を続けて欲しいです!
うん。もうちょっとで終わりなんですよ・・・。
ワタシも寂しい・・・。
でも・・・次のお話は、続編っぽいものを考えてます♪
というか、ずっと佐土原家のシリーズでいくかも・・・。
あ。でも、左京に年取らせるのはイヤだなぁ・・・。
悩ましいところです。
とにかく、今の話をハッピーに収めて、それから考えていきます!
ありがとうございました!!