「・・・もう朝か・・・。」
「うー・・・なんか頭痛い・・・。」
この日、左京は起きるなり、頭痛を感じていた。
「あー・・・イタタ・・・。」
「・・・薬飲めば治るかなぁ・・・。」
痛みはするが、起きられない、というほどではない。
朝食を摂って、頭痛薬でも飲めば治るだろう、と思っていた。
「お前ら、帰ってきたら遊んでやるからな。待ってな。」
自分の空想の世界でずっと遊んでいられたら、どんなにかいいだろう、と時々思う。
けれど左京は、学校は嫌いだが、勉強は嫌いではなかった。
「よっ・・・と。」
勉強にしろなんにしろ、モノを覚える、という行為は楽しい。
「ん。いい匂い。」
知識が身についた分だけ、『自分』という人間が形を成していくような感覚がして気分がいい。
「へへっ。うまく焼けた。」
だからこうやって料理をすることも好きだった。
自分の好物を作っているうちに、いつの間にか頭痛は消えていた。
「お。左京、今から学校か?」
「うん。」
「新しい学校はどうだ?友達は出来たか?」
「うーん。」
友達などいない。
学校で、誰かと親しく話す、などということもなく、毎日左京は過ごしていた。
父親はそれをまだ知らない。
自分の息子が学校でどんな生活を送っているのか、いや、家にいるときですら、何をして過ごしているのか知らなかった。
「勉強は?向こうの学校と比べて、どうだ?」
「おんなじくらい。」
「まぁ、サボらず通えば、友達もすぐ出来るさ。けど、悪い連中とつるんだりするんじゃないぞ。」
「分かってる。」
「あ!バス、来た。いってきます!」
「うむ。」
「・・・。」
左京が勢いよく飛び出して行った後、以蔵は考えるのだ。
「・・・ふむ・・・。」
事情があって、引越しを繰り返していた為、左京を寄宿学校へ入れた。
それが左京の為でもある、と信じていた。
だが、意に反して、左京は問題を起こし、退学寸前だったところを、手元に引き取るということで、なんとか転校という形に収めたのだ。
こうやって一緒に生活してみると、左京に問題を起こすようなところは見当たらない。
成績もいいし、多少引きこもり気味なところはあるが、自分たちに反抗するような素振りは見えない。
「アイツ・・・皿も片付けないで・・・。」
高校生とはいえ、子供っぽいところがあるから、まだ甘えたい盛りだったのに寄宿学校に入れたのは失敗だったか・・・と思うのである。
「んーっと・・・。」
「んっ。よし。終わり。」
この日も左京は学校帰りに図書館に寄り、宿題を片付けた。
そして、学校で先生から言い付かった用事を片付けるために、科学研究所に向かった。
「ここかぁ。」
要は、この街に来てまだ間もない左京の為に、街の地理を知って欲しいと考えた教師から、簡単な届け物を頼まれたわけだ。
「へぇ。こんな場所にあるんだな。街のこっち側ってあんまり来たことなかったからな。」
確かに左京は、まだこの街のすべてを知らない。
父親からは、危険な場所があるから、山の方へは行くな、と言われたが、自宅を中心に、学校の近くや、街の中心地にしか足を伸ばしたことはなかった。
所用は簡単に終わった。
科学研究所を出ると、目の前にスタジアムがある。
「あ!フードトラックがいる!」
そこにフードトラックを見つけて、左京は駆け寄った。
「なんか変わったもん、ないかな?」
しかし、メニューはいつも立ち寄る公園のものとさほど変わり映えしないようだ。
「ん~・・・ま、いいや。えーっと・・・。」
「ブリトーにしよっかな。」
「ありがと。」
「さーて。味はどうかな?」
「んー・・・あっ。こっちのほうが美味しいや!今度からここに来ようかな?」
「眺めもいいし、ここは湖に近いんだなぁ。」
「食べたら見に行ってみよっと。」
スタジアムの裏手には、湖が広がっている。
標高は数百メートル程度だが、混じり気のない水面を湛える大きな湖は、アルパイン・レイクと呼ばれ、この街の象徴ともなっていた。
「わぁ!」
山に夕日が落ち懸かり、湖面が薄紫色に光っている。
そこに魚が跳ねるのを見て、左京は釣り糸を垂れた。
「すっげぇ釣れそうな気がする!」
「よっ。」
「よしっ!」
「やっぱり当たりだ!ここはよく釣れるぞ!」
やがて辺りは夕闇に包まれ、
左京は時間を忘れた。
「うわ・・・すっごい星空。コワイくらいだな・・・。」
満天の星、という言葉通りの夜空が広がっている。
暗いのが怖いのではなく、空から星が降り注ぎそうな、そんな感覚に襲われていた。
「父さんと母さんは、こんな星空、眺めたことあるのかな?」
ふと、左京の脳裏に、家族でどこかへ出かけ、のんびりと過ごしたい、という憧れが浮かんだ。
単に寄宿舎から逃げ出したいがためだけではなく、親と一緒に暮らしたい、という気持ちが、今までどこかにあったのかもしれない。
そんなことを考えながら、ただ釣り糸を垂れていた。
辺りはシンと静まり返り、時折かすかに鳥の鳴き声が聞こえたり、魚が跳ねる水音が響くだけ。
しかし、その静寂の時間が突然破られた。
「君!!そこで何してるの!?」
「あ・・・え?警察・・・?」
「何やってるの!こんな時間に!!こっちにいらっしゃい!!」
夜間巡回中の警察官に見咎められたのだ。
「え?そんなに時間、経ってた?」
左京にしてみれば、ほんの1~2時間のつもりだった。
けれども、考えてみれば、車が通る音も、いつの間にかほとんど途絶えていたのだ。
「あの・・・今、何時?」
「もう日が替わってるのよ!家まで送っていくから車に乗りなさい。」
「あ・・・はい・・・。」
そんな遅い時間になっていたとは思わなかった。
「こんな時間まで何をしてたの?」
「あの・・・釣り・・・。」
「呆れた!!」
「親御さんが心配してるわよ!きっと!」
「そう・・・かな・・・。」
「当たり前じゃないの!」
この警官はそう言うが、果たして両親はもう、帰宅しているだろうか?
でも、心配してくれていたらいいのに・・・とも思う。
「あ・・・ここでいいです。」
「ここが君の家?」
警察官ならば、父親と同僚のはずだが、この人は気づいていない。
所属する課が違えば面識もないのかもしれないし、顔見知りだったとしても、自宅までは知らない、ということだろう。
「あ・・・灯り、ついてる・・・。」
・・・と、いうことは、どちらかが・・・もしかすると二人とも家にいる、ということだ。
玄関を入ると、家にいたのは父親だった。
「左京。こんな時間まで、どこで何をしてた!?」
「あ・・・。」
「パトロールから連絡があったんだぞ。」
「え・・・えっと・・・。」
「あ・・・あのね、学校で用事を言い付かって、科学研究所まで行ったんだ!
それで、あんまり夕陽がキレイだったから釣りしてて、で、いつの間にか暗くなってて・・・。」
「すごーく星がキレイでさ!見とれちゃうくらい!」
「そんなことは聞いとらんっ!!」
「あ・・・つい・・・こんな時間になってるなんて思わなくって・・・。」
「嘘をつくな!!お前、俺たちがほとんど家にいないのをいいことに、毎晩夜遊びしてたんじゃあるまいなっ!?」
「ひっ!」
以蔵に怒鳴りつけられ、左京は謝るタイミングを逃してしまった。
「まさか・・・西の森に行ったんじゃなかろうな!?山の方は危険だとあれほど・・・!!」
「い・・・行ってないよ。そんなとこ・・・。」
「あんな星空、初めて見たから・・・。」
「・・・まったく・・・。」
「あのさ・・・。」
「もういい!お前はこの週末は外出禁止だ!!」
「え・・・そんなぁ・・・。だって・・・。」
「まだ口答えする気か!?」
口答えするつもりもないし、嘘もついていない。
なのに、どうしてこんなにキツく叱られるのか、左京には分からなかった。
「・・・分かったよ・・・。」
『父さん・・・。』
本当は・・・
「左京!ちゃんと謝らんか!!」
父親と一緒に、暗くなるまで釣りをしたり、
「こら!!左京!!」
星を眺めたり、
「・・・まったく・・・。なんてヤツだ・・・。」
普通の家族がそうであるように、自分もそうしたい、と言いたかった。
「も・・・いい・・・。」
一人でいたい、と望んだのは自分だ。
「・・・寝よう・・・。」
他人に囲まれ、居心地の悪い思いをするのがイヤだった。
血の繋がった両親ならきっと自分のことを理解してくれる・・・そう思っていた。
けれど、そんな甘えた考えを起こすのが間違っていたんだ、と反省した。
「・・・いいんだ。一人で・・・。」
今までだってずっと一人だったのだから、辛くなんかない。
でも、それじゃ、どうして自分は泣いているのだろう?
自分は両親から嫌われているのだろうか?
しょせんどこで誰と生活しようと同じだ。
そう思い、左京は傷む胸を押さえて眠りについた。
こんばんわ!
返信削除気づいたらもう新しいストーリー始まってたw
この町、俺もDLしたかったんですけどね~
確かポイントがないとダメなんですよね・・・・
リバービューが0ポイントになるまで待っとけば良かった(泣)
リバービューDLしといて遊んでないし・・・・
左京のティーン時代とかなつかしいですね~
思えば、日記の時の左京の印象は結婚相手を探してアッチコッチに
手を出してたような・・・・・
最後の涙・・・・切ないですね・・・・
お父さんと遊びたいのに・・・・気づいてくれない・・・うぅ(;Д;)
以蔵・・・・なんかオネェに見えるんですが・・・・
唇ピンクやしw(笑)
けーくん、こんにちは!!
返信削除新ストーリー、こっそり始めてました(^-^)
ヒドゥン・スプリングスの街は、発売前からどーしても欲しくって、買ってしまいましたよ~。
出たとき、ちょっとだけ割引になってたし。
カスタムワールドもいいけれど、こういう公式のヤツだと、オブジェクトとか服とかがなにげに増えて、嬉しいんですよね。
リバービューの田園的オブジェクトも、結構魅力的なんですけど、ワタシもリバービューではほとんど遊んでないや。
前の日記のとき、左京のお嫁さんが見つからなくって、旅に出したりしてました!
結局離婚しちゃったけど(^_^;)ゝ
今回は、ティーンの左京を、めいっぱい楽しみたくって。
ニート夫妻で、子供たちは全員ティーンになったけど、
たいして楽しんでないまま終わってしまったんで、
学校でイタズラ、とかティーンパーティーとかやってみたいなぁ、なんて。
以蔵、肌の色が白いのか、確かに唇の色がすっごいピンク色なんですよ!!
メイクとか全然してないんだけどなぁww
オネェっぽいですよね~wwwww
ユズさん、こんにちわ(*^^)v
返信削除おおおおおww新ストーリー!!イエアっ!!
髪の毛サラサラで…でもってやはりイケメン!!
今回はこれまたせつないかんじで…これまた色んな意味でキュンです(変態な左京さんもすきですよw)
この町…私もDLしようか悩んでたんですけど…
結構よさそうな…w
あと…久しぶりに以蔵さんとかにも会えてよかったです(^^)
こくいさん、こんにちは!!
返信削除新ストーリーですよ~(^-^)
若い左京は、やっぱこの髪型が似合うんだな~。
コイツ、やっぱよく見ると、いい顔のつくりをしてるんですよねぇ。
切な~い感じで始まってますが、まだまだ序の口。
導入部分も終わってないのでね(^-^;)ゝ
でも、途中からはちょっと明るいです。
ヒドゥン・スプリングス、ほどよい大きさで、いい感じです!
区画の配置がしやすかったりするんで、
ワタシみたいに、街をごちょごちょいじってプレイする人間には、とーっても使いやすい☆
ただ・・・データセット一つ買えるくらいのお値段っていうのが難ですよね~。
以蔵もヒイナさんも復活させちゃいました!えへ。
すっごく久しぶりに、動く二人を見て、おおおおおーーっ!・・・とか感動しております。