ようやく昼過ぎに起き出して、食事をしようとキッチンに行くと、ロッタが起きていました。
ロッタもさっき、目が覚めたみたいです。
「んもー・・・。あいつら、しょがないなぁ。」
「オトコどもはほったらかして、今度二人で飲みに行く?」
「ワタシ、お酒飲めないよー。」
「飲まなくってもいいじゃん。オトコ、引っ掛けに行こうよ。」
「ロッタ・・・ギルと付き合ってんじゃないの?」
「それはそれ。結婚してるわけじゃないもん。」
「ふぅーん。そんなもん?」
「橘花、どうなのよ。カレシ、欲しくないの?」
「オトコはいいかなー。別に。」
欲しくないか?と問われてみると、特に欲しくないような気がしました。
それよりも、今の生活が意外にも楽しくて、このままでいたい、なんて思うんです。
「ねー、橘花さん。シャワー使わせて?」
「左京?・・・じゃない・・・えっ・・・?宗太くん・・・?どうしたの?その格好・・・。」
「昨夜、飲みに行く前にサロンに行ってさ。面白いからって・・・。」
「ドキッとするからやめてよー。」
今朝方、ダニエルを怒鳴りつけた時は、宗太のことは見ていませんでした。
そのまま部屋に入ってしまったので、宗太のこの姿を見るのは、初めてだったんです。
「左京に・・・そっくりだね。」
「そう?飲みに行って、お父さんと間違われたら面白いからて。・・・そんなに似てる?」
「うん。」
「でも・・・面白がってそんなことするもんじゃないよ。」
「悪いけど・・・宗太くんらしくないよっ。やめなよ。そういうの。」
「・・・面白く・・・ない?」
「宗太くんには宗太くんのいいトコがあるのに、面白いからって・・・左京のマネするなんて・・・。」
「だよなー。やっぱり。」
『やめてよ・・・。そんな仕草まで・・左京にそっくりなんだから・・・。』
橘花はとまどっていました。
左京にそっくりな姿の宗太を見て、一瞬、ドキッとしてしまったこと。
いくら左京を追いかけても、その先にはなにもないけれど、宗太なら・・・と思ってしまったこと。
「ゴメンね。昨夜帰ってきてそのまま寝ちゃったから・・・。なんか、ワックスとかつけられて、髪がバリバリだよー。」
『やめてよ・・・。そんな顔して・・・見つめないで・・・。』
それでも橘花は、宗太から目を逸らすことが出来ず、その顔をじっと眺めていました。
「・・・橘花さん?どうかした?」
「えっ・・・?なんでも・・・。」
『・・・違うんだから・・・。宗太くんは・・・左京じゃないんだから・・・。』
自分の気持ちを必死に押し殺しましたが、顔がこわばって、変な顔をしているだろう、と自分で思っていました。
「早くシャワー浴びなよっ。髪、傷むよっ。」
「うん・・・。」
『あー・・・橘花さん・・・怒ってるなぁ・・・。参った・・・。』
橘花の心の中の葛藤に、宗太は気付いていません。
こわばった顔を見て、怒っている、と思っていました。
宗太は、左京じゃないんです。
『左京に似ている』という風に宗太のことを見てしまうのは、宗太に失礼だし、良くないことだ、と橘花は心の中でブレーキをかけました。
そして、一瞬でも宗太を左京の代わりにしようとした自分に腹が立ったのです。
「おっ。元に戻ったな。」
「シャワー浴びてすっきりした。お父さん、髪、よくバリバリにならないね。」
「ん?」
「どうなってんの?その髪。」
こういう風になるようにカットしてるんです。
静かではありましたが、橘花に怒られて、宗太は宗太で、落ち着かない気分になっていました。
『左京にそっくりな宗太くん見て、ドキッとしちゃうなんて・・・。』
『ワタシって・・・多情なオンナなのかなぁ・・・。』
揺れる気持ちを落ち着かせようと、橘花は彫刻台に向かいます。
「ダメ、ダメ!今はそんなことよりこっち!」
「おばさん、あんまり動かないでね?」
おばさん・・・?
モデルになってくれてるのはヒイナさんでした!!!
「見えるものならなんでも作れるんだからっ。」
さすがです、橘花。
「・・・ねぇ、おばさん。左京って・・・小さい頃、どんな子だった?」
「左京の奥さんって・・・キレイだったんでしょ?どんな人だった?」
ヒイナさんに話しかけながら、像を仕上げていきます。
「橘花さん、誰としゃべって・・・おわっ!ゆ・・・幽霊っ!?」
「宗太くんのおばあさんでしょ?」
「幽霊って彫刻、出来んのっ!?」
「今、試してるトコっ!」
そして・・・
完成です!
せっかくなので、お墓の横に飾りました。
しかし・・・
霊体よりも生きてるような感じがします・・・。
夜が明けましたが、まだ溶けません。
「幽霊まで彫刻しちゃうなんて・・・。」
橘花のことを、彫刻家として尊敬はしていましたが、まさか幽霊までモデルに出来ると知って、畏怖の念を抱いてしまいます。
「でも・・・なんだってあんなに氷の彫刻ばっかり作るんだろう・・・?」
「やっぱりあの話しって、都市伝説なんかじゃないのかなぁ・・・。氷の彫刻が溶けないって話・・・。」
その話をどこで聞いたのだったか、宗太は思い出そうとしていました。
・・・じゃ、なんだって宗太は、そう隕石割りばっかりするんでしょう?
庭が
こうなるからやめていただきたい。
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