「ん~・・・何着るか迷っちゃって・・・。」
「いいんだよ。お前、何着ても似合うんだから。」
「でも、米沢さんと京子さんの結婚式だもん。キレイにしていかなくっちゃと思って・・・これは?」
「地味だなぁ・・・もっと華やかなのないの?」
「何着たって似合うって言ったくせに・・・。」
「短いのにしろって!」
「短いのかぁ・・・。」
「こんなのとか!」
「・・・派手じゃない・・・?結婚式なのに・・・。」
「いいんだよ!」
「髪も・・・ほら!こんな風にさ!」
「え~・・・。」
「かっ・・・可愛い・・・。」
「ホント?」
「俺の奥さん・・・なんて可愛いんだろ・・・。」
「左京がいいんなら、ワタシはなんでもいいんだけど・・・。」
「あ~・・・。」
「なぁに?」
「他の奴らに見せるのが勿体無くなってきた・・・。」
「そんなこと言って・・・。もう行かなきゃ遅れちゃうよ?」
「ん~・・・。行きたくない・・・。」
「左京ったら・・・。」
ロスに移り住んでから程なくして、米沢が結婚した。
「だいたいあいつ、米沢のクセに、出来婚なんて生意気なんだよっ。」
「キレイな教会!!ここって、予約待ちでいっぱいなんだってよ?」
米沢のクセに、いつの間にかこんな場所を数ヶ月も前に予約していて、しかも京子さんのお腹には、アイツの子供が宿っていると聞いて、俺は驚いた。
「・・・アイツ・・・まさか柄物のタキシードとかじゃないだろうな・・・。」
「米沢さん、いっつも派手だよね。」
「お前・・・感想、それだけ・・・か?」
「米沢!」
「あ!左京さん!!」
「お・・・お前・・・期待を裏切らないヤツだなぁ・・・。」
「え?」
「それでいいのか!?」
「だから何がですか?」
『・・・ネクタイがショッキングピンクなのはどうしてだって・・・なんで誰も突っ込まないんだろう・・・。』
つまり、京子さんも橘花と同じで、米沢がいいなら、なんでもいい、ってタイプか・・・。
「京子さん!キレイ!!」
「お腹、大きくなっちゃって、みっともなくって・・・。」
「そんなことないですよ!すっごくキレイ!!」
「橘花ちゃんは?」
「え?」
「子供、出来ないの?」
「あ~・・・そんなの全然考えてなくって・・・。左京、もう二人も子供いるんだし・・・。」
「そんなの関係ないじゃない!むしろ、作るべきよ!」
「そうなんですか・・・?」
「欲しくないの?自分と、左京くんの子供。」
「えっと・・・。」
二人がその時、そんな話をしていたなんて、俺は知らなかった。
「だいたいさー・・・お前、いつ仕込んだんだよ・・・。」
「計算すると、あのラストライブの直前ってことになりますね~。」
「そうなんだ!赤ちゃん、楽しみですね!」
「生まれたら見にきてくださいよ。橘花さん!絶対に可愛い子が産まれますから!」
「お前が来いよ・・・。」
ま、京子さんに似れば、可愛い子なんだろうけど・・・。
「左京!」
「あ。社長。」
「新居はどうだね?またずいぶん郊外に建てたもんだなぁ。」
「ま、俺も彼女も人ごみが苦手なんで。」
「ふ~む・・・。やっぱりミュージシャンってのは変わり者が多いな・・・。せっかくお前の為にマンションも用意したというのに・・・。」
「あんな、人を見下ろすような場所に住めませんよ。インスピレーションも湧かないってもんで。」
「やはり変わり者だな・・・。」
「しかし、アルバムの収録も順調だ!ライブのDVDも売れ行きはいいぞ!この調子で歌い続けてくれよ!お前が作るラブソングは最高だからな!」
「ま、俺が出来る限りのことはしますがね。」
事務所が俺たちのために、都心部に高層マンションを用意してくれていたが、そんな場所に住むのは真っ平ごめんだ。
しかも、事務所が隣接した場所に住むなんて、勘弁してもらいたい。
仕方がないので、そこには、米沢と京子さんが住んでいる。
俺たちの暮らしは順調だ。
毎日が穏やかに過ぎていく。
「仕事、行ってくるから。」
「うん!」
「でも・・・やっぱり行きたくない・・・。」
「そんなこと言っちゃダメよ。ちゃんと行かなきゃ。」
俺が作るラブソングが最高なのは、橘花を思って書いているからだ。
「ワタシだって行ってほしくないのよ?」
「うん・・・。」
「早く帰ってきて。待ってるから。」
「ねっ。」
こんな顔されたら、ますます仕事など行きたくなくなる。
本当なら、片時だって離れるのはイヤなんだ。
俺は、前よりもずっと橘花のことが好きでたまらなくなっていて、自分のどこにこんな情熱が潜んでいたのか、と不思議に思うことさえある。
「・・・ところで圭介さん。あんたいつまでいる気ですか?」
「むっ・・・。」
「お前、親に向かってその言い草はないだろう!」
「親って・・・。お義父さんって呼ぶなって言ったくせに・・・。」
「お前はダメだけど、僕はお前のこと息子って呼んでもいいの!」
「はぁ・・・。ま、お義父さんとは呼びませんけど・・・。」
圭介さんは、引越しの手伝いと称して、カスケード・ショアーズから一緒についてきて、そしてずっとウチにいる。
「しょうがないじゃないの。あの原稿、編集長に見せたらさぁ、こっちの大手の出版社から出した方がいい、って紹介状まで書いて貰ったんだから。」
「出版は?」
「もうすぐだよ!」
「だからしばらくここに置いてくれ。可愛い息子よ!」
「・・・調子いいんだから・・・。」
いったいいつまで居座る気なのか知らないが、圭介さんも寂しいんだろうとは思う。
「・・・なぁ。父さんと母さんは、姉ちゃんが結婚して家を出た時、やっぱり寂しかった?」
親父は、姉貴と仲違いばかりしていたが、それでも血を分けた実の娘だ。
嫁いで、家を出た時はきっと寂しかったんだろうと思う。
「考えたら俺、姉ちゃんがあんなことになっちゃったし、父さんたちと離れるのがイヤで、ずっと側にいたんだもんな。圭介さんのこと、あれこれ言えないや。」
「ま、ここが安住の地になるかどうかは分からんけど、しばらくは腰を落ち着けるつもりだからさ。仲良く眠ってよ。」
「俺・・・今度こそ幸せになるから・・・。父さんと母さんの代わりに、圭介さんに親孝行の真似事でもしてさ。」
両親の墓は、家の前の灯台を望む場所に建てた。
海が好きだった親父も、灯台が照らす光に見守られながら、安心して眠れるだろう。
「な、橘花。」
「なぁに?」
「こっち、おいで。」
「うん。」
「あのさ・・・ここで・・・しよ?」
「え~・・・。」
「こんなとこで・・・出来るの?」
「絶対気持ちいいって!」
「試してみよ?なっ?なっ?」
「出来るのかなぁ・・・。」
「繋がったまんま泳いだら、天にも昇る心地だと思うぜ?」
「そうなの?変なこと考えるね。左京って。」
別に変なことを考えているわけではない。
どうやったら橘花が昇り詰めるのか、試してるわけだ。
断じて変なんかじゃないぞ!俺は!!
「橘花ー。パンケーキ、作って~。」
「うん!待ってて!」
「フルーツ、なにがあったっけ?」
「あ。俺、あれがいい。生命の果実。」
「そんなのないよ。お店に売ってないんだもん。」
「う~ん・・・畑でも作るか・・・。」
「今度、ガーデニングの授業受けてこようかな。」
けど、中身がなんであれ、橘花が作ったもんはうまい!!
「いやっほーー!!」
「お前・・・前から思ってたんだけど、その程度で大喜びなんて、安い男だねぇ。」
「好物なんですっ!」
「・・・まぁ、うまいのは確かなんだけど。」
「だったらいいじゃないですか。」
圭介さんは何かというと俺に絡んでくる。
それを娯楽にしているみたいで、辟易するが、別に喧嘩を売っている風でもないし、本人がそれが趣味なら、まぁ、仕方がないかと今では半ば、諦めている。
「橘花、ちょっとそこ、座れよ!カクテル作ってやっから。・・・あ。」
「うへっ。落としたっ。」
「大丈夫?危ないよ?」
「平気だって!・・・たぶん。」
「・・・あと、これとこれをミックスして・・・っと。」
「よしっ。」
「飲んでいい?」
「うん。」
「ん~・・・。」
「どう?」
「美味しい!」
「もちょっと甘みあった方がいいかな?」
「さっぱりしてて、飲みやすいよ?」
「う~ん・・・もう一つだなぁ。」
「美味しいと思うけどな~。」
「・・・。」
『・・・あれ・・・?』
その時、橘花の顔色がちょっと悪いことに、俺は気付かなかった。
「・・・なんか・・・気持ち悪い・・・。」
「カクテルのせい・・・?」
「・・・じゃないな・・・。」
「・・・な、橘花。」
「ん?」
「明日さ、米沢んとこ行くんだけど、一緒に行こう?子供がだいぶ大きくなったから見に来いって、アイツ、うるさくってさぁ。」
「あ!行きたい!久しぶりに京子さんにも会いたいなぁ。」
「子供見せたかったら自分が来りゃいいのにさぁ。」
「その後、二人で外で食事でもする?それとも、バーでも行く?」
「行きたい!美味しいもの食べたいなぁ。」
「橘花。また一緒に風呂、入ろうよー。」
「え~。」
「なっ。いいじゃん。」
「ん~っ。」
「・・・あ・・・左京・・・ちょ・・・ちょっと待って・・・。」
「ん?」
「ちょっと・・・。」
「・・・どうしたんだ?」
「・・・。」
「・・・なんだ?」
「なんか・・・変だな・・・。生理中かな・・・?」
橘花が俺の腕をすり抜けていったことで、俺が考え付く理由といえば、そのくらいだった。
「橘花・・・大丈夫か?」
「ん?何が?」
「今日・・・米沢のとこに行くの。具合でも悪いんじゃないか?それとも、行きたくないとか?」
「なんで?行きたいよ!」
橘花は一晩経つとけろっとしていた。
「食べたら出掛けようよ。」
「よしっ。」
「穂乃香ちゃん、だいぶ大きくなっただろうね~。まだ生まれたばっかりの時に会ったっきりだもん!」
「どっちに似たか楽しみだな。」
「遺伝子ってミックスされるもんじゃないの?」
「女の子は父親に似るってよく言うだろ。」
米沢たちの間に産まれたのは、女の子だ。
出来れば京子さんに似て欲しいと思ったのだが・・・。
「あ!京子さん!」
「橘花ちゃん!久し振りね!!」
「あれ?どこか行くとこだったんですか?」
「ちょっとおしょうゆ切らしちゃってね。買ってすぐ戻るから、上がって待ってて。」
「はい。」
『確かに・・・京子さんより米沢さんの血が濃いような・・・。』
二人の子供は、米沢にそっくりだった。
どこからどう見ても、誰が見ても、米沢の子供だ、とはっきり分かるほどに。
京子さんの遺伝子は、どこにいったんだろう?
「ねぇ、穂乃香ちゃん。お姉ちゃんにちょっとだっこさせて?」
「わ!結構重たーい!」
「子供って・・・ちっちゃくって柔らかくってあったかいんだな・・・。」
橘花は、米沢のところに行った後、どこにも寄らずに家に帰りたい、と言った。
「・・・橘花、メシも食わないで帰りたいなんて・・・どうしたんだ?」
「うん・・・。」
「俺、なんか作ってやろうか?フルーツパイは?」
「なんか・・・あんまり食欲なくなっちゃって・・・。」
「じゃ、カクテル、飲む?」
「うん。軽いのならいいかな?」
『・・・なんだろう・・・。』
カクテルを作ってみたものの、橘花は手を出そうとしてやめた。
「ワタシ・・・やっぱりもう寝る。」
「ちょっと待った!橘花!」
「なぁ・・・。どうしたんだよ。ホントに、身体の具合でも悪いんじゃないのか?」
「う~ん・・・。」
「だったら病院行かなきゃダメだよ!俺、連れていってやるから!」
「病院は行くけど・・・。」
「病気じゃないよ!きっと。」
「え?じゃ、なんなんだよっ。」
「ん~・・・。」
「なんだよ。」
「だから・・・まだ分かんないんだけど・・・。」
「なに?」
「ビックリしないでね?」
「なんで・・・。」
「ワタシ・・・赤ちゃん出来たかも・・・。」
「え・・・ええっ!?」
「・・・ビックリした?」
俺は迂闊だった。
どうして気付かなかったんだろう。
「ワタシもそうなんだけど、左京・・・子供あんまり好きじゃないみたいだし、なんか・・・困っちゃったな・・・。」
「な・・・何言ってんだよっ!!」
「喜んで・・・くれるの?」
「あ・・・当たり前だろっ!!・・・いや~・・・俺・・・。」
「まだ、種、あったんだな!」
「なくなるもんなの?」
「だって・・・あんだけやってんのに出来ないからさぁ!」
「え?」
「俺・・・避妊したのって、最初の時だけだったんだよなぁ。」
「そうだったの?」
「別に、出来るんなら出来てもいいって思ってたし・・・。」
「産んで・・・いいの?」
「当たり前だ!お前にそっくりな女の子を産んでくれ!」
「ワタシ、左京によく似た男の子がいいな。」
「男はもういらんっ!!」
「へへっ。」
この心境の変化を、なんと言い表せばいいんだろう。
「ぽんぱしぇ~な~・・・」
まさかこの年になって、また子供が出来るとは思わなかった。
「・・・どぅ~♪」
俺と橘花の遺伝子を継いだ子供が出来る。
相変わらず、どうやって育てていいものか見当もつかないのは確かだが、なんだか・・・鼻歌でも歌ってしまうくらい、嬉しかったんだ。
・・・重大な事実に気付くまでは。
「お腹・・・触っていい?」
「まだほんの数センチだよ!」
「・・・動いた!」
「クスっ。まだ動かないってば!」
「どんな子だろうなぁ。楽しみだ!」
「元気な子が産まれるといいな。」
「身体・・・大事にしろよ。」
「ん・・・。」
「・・・だから親の前でやるなって・・・。」
「あのさ。橘花。」
「ん?なぁに?」
「俺・・・そろそろ・・・。」
「限界なんだけど・・・。」
「ダメよ。左京ったら・・・。」
「いつまでダメなんだよー。俺、もう何ヶ月も我慢してんのに・・・。」
「もうちょっと。赤ちゃんがビックリしちゃうよー。安定期に入ったら大丈夫ってお医者さんが言ってたから。」
そう。
子供が出来たと分かってから、俺は橘花を抱いてない。
「そーっとやるからさぁ・・・。」
「ダーメ。」
「じゃー・・・途中まで!」
「余計ツライよ?」
「うっ・・・。」
「ねぇ、左京。それより・・・。」
「なに?してくれるの?」
「そうじゃなくて!」
「あのね。子供の名前・・・左京が考えて!」
「えっ!?」
「お・・・俺、そういうの・・・苦手なんだよな・・・。」
「左京につけて貰いたいの!だってあんないい歌詞とか書くんだもん。」
「作詞は苦手なんだって・・・。」
「お前がつけた方がいいと思うんだけど・・・。」
「もし二人目が出来たら、その時はワタシが考えるから。・・・ねっ。お願い!」
参った・・・。
橘花を抱けない上に、こんな難題を仰せつかってしまったわけだ。
「あ~・・・。」
「う~ん・・・。」
「・・・お前さぁ・・・せっかく気持ちよく風呂に浸かってるのに、なんでうなってるわけ?」
「いやぁ・・・橘花に、子供の名前、考えてくれって言われちゃって・・・。」
「考えればいいじゃないか!」
「いや・・・それが全然思い浮かばなくって・・・。なんかいい案、ないですか?」
「そんなもん、お前。男なら右京、女なら桜花とかでいいんじゃないの?」
「そんな単純な・・・。」
「じゃあさ、前はどうやってつけたの?儀助くんと宗太くん。」
「ありゃ、親父がつけたんですよ。俺、考えてないもん。」
「だから今回も、僕に頼ろうって?」
「圭介さん、作家なんだから、いい名前、思い浮かぶんじゃないですか?」
「橘花に頼まれたんだったら、自分で考えなさい。」
「・・・ですよねー。」
「じゃ、橘花、って名前、なんでつけたんですか?」
「ああ。僕が奥さんと初めて出会ったとき、彼女、まだ学生でさ。」
「年、離れてたんですか?」
「三つくらいね。・・・僕はまだ、自分で物を書く仕事を始めたばっかりで、彼女が通う学校に取材に行ったわけ。」
「ふむ・・・。」
「そこで迷子になっちゃってさ~・・・。学校の敷地の奥まで入り込んで行ったらさ~・・・。」
「・・・おっと!」
「これで詰みだ!」
「あっ!」
「・・・学校の敷地の端に、タチバナの木があってね。春だったなぁ・・・。その香りに釣られて、側まで行ったらさ、小さな白い花をいっぱいつけたタチバナの木の下で、彼女が本を読んでたんだよ。」
「だから、『橘花』。」
「初めて会った場所・・・か・・・。」
圭介さんは、案外ロマンチストだ。
作家なのだから、当然か。
俺は、愛の歌はせっせと書くが、別にロマンチストでもなんでもない。
相手が橘花でなければ、気恥ずかしくって、歌うのを躊躇うくらいだ。
けど・・・圭介さんの話を聞いて、俺の頭の中に、ふと名前が思い浮かんだ。
それしかないような気がした。
「ね。左京。赤ちゃんの名前、考えてくれた?」
「う~ん・・・一応・・・。」
「なになに?」
「んーっと・・・。」
「ねぇ。なぁに?」
「ん~・・・。・・・ユウ。」
「ユウ?」
「男でも女でも・・・結ぶに雨って書いて・・・結雨。」
「結雨・・・。」
「なんか・・・恥ずかしいんだけど・・・。」
「雨の日に出会った俺たちの・・・子供だから・・・。」
「素敵・・・。」
「ホント?」
「うん!」
「結雨ちゃんかぁ。やっぱりさすがね!左京、センスいいんだもん!」
「気に入った?」
「うん!」
橘花がそう言ってくれたのでホッとした。
「あ!パパ!左京が赤ちゃんの名前、考えてくれたよ!」
「ほう。決まったか。なんだ?」
「男の子でも女の子でもね、結ぶ雨で、結雨ちゃんだよ!」
「へえ!結雨か!なかなかいい名前だなぁ!」
「しかし、ずいぶんでかくなったなぁ。」
「元気なんだよ。いっつもお腹、蹴るんだもん。」
「もうすぐだなぁ。えっと・・・予定日は・・・。」
「あ・・・。」
「・・・あ?」
「い・・・痛いっ!!陣痛、きたっ!!」
「え?」
「ええーーっ!?」
「うーーっ!!」
「え!?え!?」
「た・・・大変だぁーーっ!!」
「ど・・・どどどどのくらい痛いっ!?」
「死ぬほど痛いっ!!」
「えっ!?死んじゃイヤだぁぁーーっ!!」
「さ・・・左京・・・車・・・。」
「く・・・車!?」
「あーーーっ!!そうかっ!!病院!病院ーーっ!!」
そして・・・
無事、俺たちの子供が産まれた。
「橘花・・・大丈夫?」
「うん。でも・・・疲れちゃった・・・。」
「今夜はゆっくりお休み。俺が結雨の面倒見るから。」
「うん。」
「ありがとう。左京。」
あれ・・・。
こいつ・・・。
なんだか優しい顔になった・・・。
「橘花・・・。」
ゆっくり休め、と言いながら、俺は彼女を抱き締めずにはいられない。
「左京・・・。」
「あ・・・ゴメン・・・。疲れてるのに・・・。」
「いいの。左京に抱き締めて貰ったら安心するから・・・。」
「でも、ホント・・・よく頑張ってくれた・・・。二人で、一生懸命育てような!」
「うん!」
「橘花、身体は・・・大丈夫か?」
「大丈夫よ?なんで?」
「うん・・・。お前のママは、お前を産んだ後、すぐ・・・。」
「ワタシ、丈夫に生まれついたみたいだから大丈夫よ。」
「そこはママに似なかったのね。」
「似なくてよかったよ。」
圭介さんは、飄々としているように見えて、橘花の身体をずいぶん案じていたようだった。
けど、圭介さんよりも、俺の方が心底ホッとしていた。
橘花が無事に、元気な男の子を産んでくれたことに、だ。
「しかし・・・また男か・・・。」
俺の子供は、三人とも男、ということになる。
「・・・ま、いいけどな!」
男の子は、母親に似る、というから、橘花に似てくれるだろう。
「可愛い・・・。」
「結雨くん、左京にそっくりのイケメンに育ってね!」
そして、数ヶ月・・・
圭介さんは、まだウチにいる。
圭介さんが書いた、『クレメンタイン・シェア・ハウス』は、出版してから、じわじわと売れ始め、今年のベストセラーになり、賞まで取った。
そのおかげで、今後は、ロスの出版社から本を出すことになり、こっちに移り住むことになった。
ただ・・・
本の印税が入るのは、まだ先の話なので、まとまった金が入るまでは居候させてくれ、と言われた。
おそらく・・・一生、居候するつもりだろう。
「結雨くん!」
「ママー。」
「うふっ。いい子ねー。この子・・・。」
「左京にそっくり!!」
結雨は・・・
「ほれ。結雨。腹減ってるか?」
イヤになるくらい、俺に似ている。
「あっ!左京!ワタシが結雨くんの面倒見るから、いいよ!」
「いいんだよ。」
「お前に、俺以外の男、抱かせたくないのっ。」
「何言ってるの。自分の子供じゃない・・・。」
「いいや。子供でも油断ならないね。お前のこと、独占しようとするんだからな。コイツ。」
「ワタシは左京のものだよ?」
「ホントに?」
「分かってるくせに。」
こうやって、俺たちはこの先何年もずっとずっとお互いを見つめて生きていくんだろう。
「あ、橘花。今度、久し振りにライブ、見に来いよ!結雨は圭介さんに預けてさ。」
「うん。チケット、取ったよ?」
「また・・・なんで自分で買うんだよ・・・。」
「だって、ファンクラブの先行予約の通知が来るんだもん。」
「ファンクラブなんかやめろって・・・。」
「いろいろ特典があるんだよ?」
橘花は、一番傍にいて、一番俺を理解してくれるファンだ。
「俺が抱いてやる以上の特典があるのかよ。」
「左京の裏も表も、全部知っていたいの。」
「いっつもこんなに近くにいるのに?」
だから俺は、歌い続ける。
「だって、仕事してるときの左京の顔は知らないもん。」
「じゃ、今度連れてくよ。レコーディングも、打ち合わせも、取材も、全部!」
「そんなことしていいの?」
「いいに決まってんだろ?誰にも文句、言わせねぇよ!」
いつまでも、いつまでも、ずっと。
その、強い光を湛えて、キラキラと輝く瞳で、俺だけをいつも見つめてくれている
お前のために、最上級のラブソングを。
『Clementine Share House』 完
yuzuさん、こんばんは☆
返信削除そして改めまして.....
こんなステキな物語を作って頂いてありがとうございました!
これで『Clementine Share House』完結なんですね・・
寂しいな・・・・・
久しぶりに遊びにきて一気に読み進めていると、
今までのお話しが走馬灯のように頭をよぎり、
なんだか胸がムギュ~となりました:;
考えてみたら左京さん誕生から橘花と出会い2人のハッピーエンドまで、
人様の人生の半分を見ているんですもんね!
結婚式とっても感動的でした。
圭介パパさすがです!
今までの人生で関わった大好きな人達が集まって祝福してくれる結婚式。
これほど幸せな瞬間ってないかも、と思いました。
やっぱり左京さんは泣いてしまいましたね(^_-)
左京さんはこれからも結雨君に嫉妬しながら(笑)
橘花を愛し続けるんですね。
橘花、やっぱり羨ましいぞぉ!
今回のお話しに出てきた全ての人に幸せになってもらいたい。
左京さんと橘花、ギルとロッタ、田吾作と京子さん、それぞれの家庭。
ダニエル、宗太、エリック、圭介パパのこれからの人生。
全てが幸せでありますように・・・。
そんな風に物語は完結してもまだまだ私の中にはみんなが離れてくれません^^
yuzuさん、お疲れさまでした~!!
PS.やっぱり田吾作の遺伝子は強いのですね(笑)
Naonさん、こんばんは!!
返信削除長い長ーい間、このお話にお付き合いいただいて、ありがとうございました!!
ようやく完結しました!!
寂しいって言っていただけて、本当に嬉しいです!!
そうなんですよね。
左京ってシムの世界で生まれて、その成長をずっと描いてきたんですよね。
その左京が、やっとホントの幸せを掴んだ半生を皆さんに見ていただいてるわけなんですよね~。
ワタシにとって、左京っていうのは、いつの間にか本当に特別な存在になっていて、その左京の物語がいったん完結してしまったので、寂しくもあるんですが、やっぱりホッとしてます(^-^)
感動の結婚式で最終回でもよかったんですが、やっぱりどうしても二人の子供が見てみたくって。
結雨くん、可愛いです!
儀助も宗太も、産まれたときは可愛いなぁ~・・・って思ってたんですが、結雨は、今まで見て来た子供たちの中で、一番可愛いかもしれない。
左京にそっくりだしww
でも、左京ってばだからこそ自分の子供にまで嫉妬しちゃうんですよね~。
血は繋がってても、男は男だから(^-^;)
橘花を取られるのが悔しいんですよー。
ギルとロッタちゃんの子供、ちょっと話の流れ上、お披露目できませんでしたが、これもまた可愛いです!!
どっちかっていうとギルに似てるかな?
あ、男の子です。あとがきでお披露目しますね~!
田吾作の娘・・・まことんさんのところで拝見した、田吾作と京子さんの子供に、やっぱり似てる・・・。
両親が同じなので、やっぱり子供も同じ顔なんですね・・・。
しばらくはワタシも、この物語の余韻に浸っていたいです!
みんな、みんな幸せになりますように!!
どうも、ありがとうございました!!
ユズさんここでは初めまして、まことんさん・ぽよ~んさんの
返信削除ページでお見かけして飛んできました⊂二二二( ^ω^)二⊃
タママと言いマス、よろしくおねがいします~
やっとここまで追いつきました、ついに橘花ちゃん出産ですか★
子供の頃からの憧れの人と結婚&出産なんて本当にうらやましいっ
でも結雨くん、左京さんにほんと瓜二つですねw
田吾作と京子さんもお約束で笑っちゃいましたーー
これって普通に二人の子作りでこうなったんですよね?すごい...
自分はおよそ似つかない子供ばかり産まれるから、そういう仕様かと思ってました;
ミステリー要素もあって、特に昔話~地下探索シーンあたりから
この辺まではすごく夢中になって読みました、面白い話でしたよ!
橘花ちゃんってすごくキレイですよね、実際に会社に高嶺の花として
一人ぐらいいる、リアルなミステリアス美人で惹かれました。
変にブリブリしてなくてさっぱりした性格だし、同性からも人気出そう。
まだ来て間もないけれど、もうエピローグなんですね。
ラストまでと、次回作も楽しみにしてます★
タママさん、こちらでは初めまして!!おはようございます!!
返信削除うひゃ~っ;;全部読んでくださったのですか!!
お疲れ様でした・・・。でも嬉しい♪ありがとうございます!!
とうとう橘花、出産しました(^-^)
ホントに左京にそっくりです!
普通に赤ちゃんを作ってもらって、こうなりました。
左京は、シムの世界で生まれて育ったから、遺伝子が確定されてるのかもしれません。
けど・・・田吾作と京子さんの娘は・・・田吾作に似てるなぁ・・・。
大きくなったらどうなるのか分かりませんが、そういえば、宗太も左京にそっくりでした。
おお・・・橘花を褒めてくださって、ありがとうございます!!
なんだか現実に、いるようないないような、そんな性格ですね~。
今回は主役だったので、橘花の心情を書き込んでいったのでこういう性格だ、ってわかりますけど、脇役だったら、何考えてるか、さっぱり分からないと思います(^-^;)
実は・・・
この話でラストなんです・・・。
せっかく見ていただいてたのにゴメンなさい~(>_<。)
この後、おまけとあとがきになります。
次回作は・・・現在、構想を練ってますので、お待ちくださいませ~。
コメント、ありがとうございました!!
ユズさん、お疲れ様でした!
返信削除凄く面白かったです。
左京を子供の頃から見てたので、感無量です(TT)
題名もよかった!素敵!
なんか色々な事が思い出されて、ツーンときちゃった…。
左京の語りがまたいい!
はあ…よかった…。
なのに…田吾作の子供~~~!!!!
吹き出すどころの話じゃないですよ!
ぶふって感じ?爆笑しちゃいました(笑)
やっぱり田吾作の遺伝子って濃い~んですねwwww
せっかく最終回だと思ってジーンとしながら見てたのにあれだもんな~
あーウケた(笑)
それはそうと、この物語が終わっちゃうんですね。
私も凄く淋しいです…。
左京の追っかけをやりながらずっと見てましたからね…。
でも、左京が幸せを見つけてよかった。
橘花と出会えてよかった。思えば、彼は色々な事がありましたもんね。
あまり感情を表にだすタイプでもなかったし、愛に執着するタイプでもなかった。
そんな左京が一人の女性と出会い、すべてが変わりましたよね。
愛は人を変えるんだな~と改めて思いました。
二人とも…幸せにね。
それと、二人の子供が可愛い~~!
でもやっぱ男の子だったか(笑)
って言うか、子供にまで妬いてるし(笑)
けど、私もそんな風に愛されたいな~。
子供にまで妬いちゃうぐらい、愛されたい!
やっぱいい男だわ…。いつまでも愛してるからね!
ユズさん、本当に、お疲れ様でした。
追伸、左京の動画…夜帰ったらみます。
チラっとは見たんですが、笑いそうなので家に帰ったら…。
ぷっ…楽しみ…♪
まことんさん、こんにちは!!
返信削除いろいろと大変で、そして、いろいろ学ぶことの多かった物語でした。
思えば、本当に左京の半生を見守ってるんですよね、ワタシたち。
ちょっと、普通より波乱万丈の人生だけど、佐土原左京っていう一人の男を追いかけまくって、やっと幸せに辿りついたところまで見届けた、っていう満足感でいっぱいです♪
以蔵とヒイナさんの物語が終わった時は、二人とも天寿を全うして亡くなってしまって、すごく虚脱感みたいなものを感じたんですが、今回は、書きあげた!!・・・っていう達成感の方が大きいです(^-^)
左京はまだ生きてるし、この後も話はいくらでも作れますもんね。
左京と橘花の子供、自分でいうのもなんなんですが・・・すっげー可愛いっ!!
あ~・・・どんな大人になるんだろうか、と楽しみではあるんですが、そうなると、左京がじいさんになってしまうんで、それもイヤで・・・。
別に、子供だけ成長させればいいんですけどね。
ゲームなんだし。
それと、田吾作の子供!!
いや・・・意外と可愛いんですよ?
ちょっと今、田吾作世帯をアクティブに切り替えて続きをプレイしてたんですが、穂乃香、小学生になったらすっごく可愛くなりましたよ!!
子供用のスキンも入れてるし♪
で、田吾作夫妻、二人目を出産させてみたんですが、また女の子・・・。
田吾作は女の子しか出来ないのかな・・・。
それとも、京子さんが女腹?
今日の夜か、明日の朝にあとがきをアップします。
その後、ちょっと後日譚をやって、新しい物語への準備をします♪
あ、今はそんなわけで余裕があるので、ベッドシーンの相談、いつでもどうぞww
もう、作っちゃったのかな~?
あ・・・あの動画はですね・・・左京が主役じゃなくって、田吾作が主役ですよ~。
絶対に会社で見てはいけません!!
こんにちわ(*^^)
返信削除いや~…終わっちゃいましたぁ、そしてお疲れ様でした(^^)
途中からの参戦でしたが…もう…色々よみがえって感動ですよ(T_T)
素敵な物語をありがとうございます…あぁみなさん大好き(*^_^*)
寂しくなりますが…また次回作も楽しみにしています♪
結雨くんかわいいですね(*^^)v
左京さん似♪♪橘花ちゃんに似てもかわいいと思うし…
あ~シムの子供かわいいですねヽ(^o^)丿
あとすみません…田吾作さんの子供に笑って…いや、すみませんww
そして動画…サムネみて決心しました
「これは絶対家で見るべきだ!!」と(笑)
あぶないあぶない…ふぅw
なので帰ってみたらもう一度書き込みにきます!!
こくいさん、こんにちは!!
返信削除終わっちゃいましたよ~とうとう!
結構、自分的に捻りに捻った物語だったので、かなり苦労しました(゚ー゚;A
でも、それだけに、無事に終わって、ホッとしています。
次回作はあれですよ。あれ。
また、左京と橘花でやりますよ!!
ちょっと今、いろいろと考え中なので、お待ちくださいね♪
結雨、可愛いです♪
いや、ホント、左京にそっくりで・・・。
恐るべし、左京の遺伝子。
橘花に似た女の子も欲しいんですけどね~。
ちょっと後日書きますが、二人目は無理かもしれません。
田吾作夫妻の娘は、まぁ、田吾作にそっくりで!!
これまた、田吾作の遺伝子、恐るべし。
でも、小学生に成長させたら、京子さんに似てきたかも♪
これもまた、後日譚で・・・。
動画は、絶対に会社で見ちゃーダメです!!
じゃ、なんで月曜の朝にアップするんだ!!とか言われそうですが、ワタシは土日休みの仕事ではないので、月曜がワタシの日曜日♪・・・と言い訳してみたりします(^_^;)ゝ
実はこの動画、ずいぶん前に作ってあったので、早くお披露目したかったんですよぉ。
でも、結婚式の前後とかに挟むのがアレだったので、最終回を迎えるまで、我慢に我慢を重ねていた、というわけで・・・。
ぜひ、家で一杯引っ掛けながらご覧ください(^-^)