「終わった・・・。」
「終わったぞ!!橘花!!」
「長かった・・・。」
「今、行くからな!!待ってろ!!」
左京は、ツアー最終日のライブを終え、それが終わったその足でライブホールを飛び出し、そのまま飛行機に飛び乗って、カスケード・ショアーズにやってきた。
約束の三ヶ月がようやく過ぎた。
すぐにでも橘花をさらって行きたかった。
「しかし・・・。」
「・・・眠い・・・。」
無理もない。
時間は、深夜三時である。
「橘花・・・そりゃ寝てるよな・・・。」
橘花は気持ち良さそうに寝息を立て、深い眠りについていた。
「俺も・・・とりあえず、寝よ。」
さすがの左京も、体力が限界だった。
とにかく寝顔でも、橘花の顔が見られた。
今夜はそれだけでいい。
「おやすみ・・・橘花・・・。」
「・・・ん?」
ツインブルックでの式典に参加し、記念館を見てから、圭介は起きているほとんどの時間、パソコンに向かって、執筆を続けていた。
「左京・・・来たのかな?」
玄関を出入りする物音を聞いて、圭介は手を止めた。
・・・いや、それと同じタイミングで、原稿が仕上がったのだ。
「ライブって・・・今夜が最終じゃなかったっけ?終わってすぐ来たのかよ・・・。」
「・・・ったく、こらえ性のない男だねぇ。」
橘花の部屋を覗いてみると、左京がそのまま転がって、眠り込んでいた。
「あーあ・・・。そんまま寝てんのかよ・・・。」
「しょうがないなぁ。左京、風邪引くぞ。ちゃんと寝なさいよ。」
「うーん・・・。」
「・・・まっ、仕方ないか。この日を待ってたんだもんな!」
この三ヶ月間、橘花と左京を見ていて、やはりこの二人は、こうなるべくしてなったんだ、と圭介は得心していた。
この前、ダニエルや宗太の顔も久し振りに見たが、橘花のパートナーとしてはどうしても役不足のような気がする。
自分の息子にするなら・・・やはり左京だな、と思っていた。
「ん・・・よく寝た・・・。」
朝、目覚めると、ベッドに左京がいる。
「なんで!?」
来るなら、今日の昼頃だろうか、と思っていたのに、あまりにも早い出現に、驚いてしまった。
「・・・夢かな・・・。シャワー浴びて、目、覚まそう・・・。」
左京の行動には、毎度驚かされるが、今朝も、夢だろうか、と思ってしまうほどだった。
「ん・・・橘花・・・。」
自分の傍から、橘花の気配が消えたのに気付き、左京も目を覚ました。
「どこ行った・・・?」
橘花の姿を探すと、バスルームでシャワーを浴びようとしているところだった。
「橘花。」
「あ、左京!ライブ、昨夜終わったんじゃ・・・?」
「終わってすぐ飛んできた。」
「どうやって・・・?」
「飛行機に決まってんだろ。」
「・・・来るの早いからびっくりしちゃって・・・。」
「そりゃま、お前に会いたい一心よ。」
「ホント?嬉しいな。」
「だったらさ・・・あのさ・・・。」
「なぁに?」
「キスして・・・。」
「なんで今更照れるの?」
「なんか・・・寝惚けてんのかな・・・。これからもう、ずっと一緒にいていいんだ、って思ったら、夢みたいで・・・。」
「夢かもよ?」
「そんな意地悪なこと言うなよ・・・。泣くぞ?」
「確かめてみれば?」
「橘花・・・。」
「ん・・・。」
「・・・。」
「あ・・・。」
「・・・どう?」
「お前の舌、チェリーコーラの味がする・・・。」
「そんなの飲んでないよ。やっぱ寝惚けてんじゃん。」
「いや、刺激的!目ぇ、覚めた!」
「やっとお前をさらいに来れたぜ。圭介さんは?」
「まだ寝てるんじゃないかなぁ。」
「その隙に、引っ越そうか?」
「やることが突拍子もなさ過ぎ!」
「冗談だってば・・・。」
圭介が起きだしてくるまでの時間、二人でなんとはなしに、時間を潰すことにした。
「ね、しばらくお休みなの?」
「うん。1ヶ月くらいオフくれ、って言ったんだけど、二週間しか貰えなかった。」
「じゃ、その間に引っ越しかぁ。」
「俺は今日にでも引越したかったんだけどさぁ・・・実はさぁ・・・。」
「ん?」
そんな話をしているところに、圭介が起き出してきた。
「よっ!左京。お前、来んの早いんじゃない?」
「パパ。起きたの?」
「何時だよ。今。」
「圭介さん。」
「ん?」
「約束、守りました。今すぐ橘花を連れて行きます。」
「今?」
「今です。」
「マジで?」
「ダメですか?」
「ちょ・・・ちょっと待った!!急すぎっ!!昨夜来て、今日!?」
「はい!」
「・・・と言いたいとこなんですが・・・実は新居がまだ完成してなくって・・・。」
「なんだ・・・脅かすなよ!」
「でも、約束の期日は今日ですよ?」
「それでもさ!」
「ま、あと1週間くらいはここに居させてもらいます。いいですか?」
「いいよ、いいよ~。いくらでも居てくれて構わないから!!」
「・・・家が完成したら引っ越しますって・・・。」
そう。
実は新居の完成が遅れていて、引っ越せないのだった。
「俺、ホントなら今日にでも引っ越すつもりだったのにっ。」
「そう焦るなって!実は原稿が完成したから、お前にも読んでもらいたいんだよね~。」
「出来たんですか?そりゃまぁ、読みますけど・・・。」
「あとで見せるからさ!今日は?どっか行くの?」
「今日は1日、身体休めますよ。」
「いや~、でもホントよかった!」
「良くないですよ・・・。」
と、左京はふてくされていたのだが・・・
「だって・・・いてくれなきゃ、僕の計画、おじゃんだもんね!」
いつも左京に驚かされているばかりではつまらない。
今回は、左京をあっと言わせてやる!と圭介はほくそ笑んでいた。
「おっ。橘花、その絵、いいじゃん!また描いてるんだな!」
「うん。こっち戻ってきてから、ちょこちょこ描いてるんだぁ。」
「それ、売るの?」
「う~ん・・・どうしようかなぁ。」
「お前さ、絵も彫刻もプロだけど、そんなに稼がなくていいぜ?気に入ったやつは手元に置いとけよ。」
稼ごう、というつもりはない。
左京と結婚する、と決めてから、なんとなく仕事から遠ざかっていて、けれど、カスケード・ショアーズに戻ってきてから、ちょっと絵筆を持ってみたくなり、イーゼルを買ってきて、小さな絵を描き始めた。
彫刻台は、この家は狭いので置く場所がなくて諦めたのだ。
「・・・ねぇ、左京。」
「ん?」
「あのね・・・気の向いた時に、絵とか彫刻とかしちゃ・・・ダメかな?」
「なんでダメなんだよ。」
「俺、お前が絵描いたりしてる時の真剣な顔、好きだからさー。また、俺の彫刻、作ってくれよ。」
「うん。・・・ありがと。」
「なんで礼なんか言うんだよ。仕事、辞める必要ないぜ?好きな時にやっていいんだよ。」
左京が自分の仕事を認めてくれていた、と気付き、橘花は胸が熱くなった。
ロックスター佐土原左京の妻となるからには、左京を支える為に、仕事など辞めて、家庭を守ることに専念しなければならないのではないか、と勝手に思っていたのだ。
「出来た。」
「それ、いいじゃん。とっとけよ。」
「うん!お腹すいた。なんか食べてくるね。」
「あ。フルーツパイ、作ってあるぜ。」
「左京って・・・考えてないようで、ちゃんと肝心なことは考えてるんだよね・・・。」
「・・・ん!美味しい!生命の果実だ!!」←また・・・
・・・と、左京の思慮深さに改めて感心した橘花だったが、目の前の、もっとも大事なことは二人とも考えていないのであった。
「む。電話だ。」
「はい。佐土原・・・」
ディスプレイには、田吾作の電話番号が表示されていた。
無視しようかとも思ったが、つい、出てしまった。
「米沢っ!お前かっ!!オフの初日に電話してくんなっ!!仕事ならしないからなっ!!」
しかし、新たな仕事の話ではない。
「・・・仕事じゃない?じゃ、なんなんだよっ!」
「ご機嫌伺いなんかいらねぇっての!!・・・今?カスケード・ショアーズだよっ!橘花んちっ!!分かってるくせにいちいち聞くなっ!!」
「明日?しばらくいるって言ってんだろっ!!」
「う ざ いっっ!!!」
ぶち。
「・・・ったくなんなんだ・・・。ご機嫌伺いなんかいらねぇっての。」
「橘花、どこ行ったかな?橘花~。」
田吾作がなぜ、今更、『ご機嫌伺い』などと称して電話をしてきたのか、左京は深く考えてはいなかった。
「あ。なぁなぁ、左京。読んでくれた?」
「まださわりだけですけど。長いから、そんなにすぐは読めませんよ。」
「だろ?やっぱりさぁ~・・・読破するのに1ヶ月や2ヶ月はかかるんじゃない?」
「そんなにかかりませんって・・・けど・・・。」
「あの話し、主人公は橘花でしょ?」
「うん。」
主人公の女の子は、美術の専門学校に入るために、ツインブルックの街を訪れた。
初めて訪れたその街で、彼女は奇妙な出会いを体験する。
「相手役の男ですけど・・・。」
「ああ。あれは左京、お前がモデルだよ。」
専門学校の理事長だ、という紳士に、女の子は一軒の家の鍵を託される。
自由に使っていい。
但し、絵を描き続けることと、彫刻を作り続けることを条件に・・・。
「俺がモデル?・・・いや、あの相手役の男・・・あれは、あなただ。圭介さん。」
「あ、気付いた?まださわりだけしか読んでないのに?」
託された家を、女の子はシェア・ハウスとして開放した。
そこに現れた、大学の助教授と名乗る男。
大学で美術史を教える彼は、どこからかこの家にまつわるいわく因縁を聞き込み、その謎を解くためにやってきた。
「・・・ま、お前と僕をミックスしたような設定だけどね。ロックスター佐土原左京そのまんまじゃマズイだろ?」
20歳以上年の離れた二人。
託された家の謎に触れ、解き明かしていくうちに、二人の間には恋の感情が芽生え始める。
そして・・・。
「まぁ、そうですね。」
「じっくり読んでよ!」
「ええ。」
「けど、これは・・・売れますね。」
「だとありがたいけどね!」
まだ、ほんの少ししか読み進めてはいなかったが、続きが気になって仕方がない。
実際に自分が体験したことなのに、まるで、初めて知った事実に触れるような・・・そんな不思議な感覚がする。
今まで、圭介が書いた文章は幾度も読んできたが、今までの取材記事とは明らかに違う。
読者を惹きつけ、その世界観に引き込み、魅了する・・・そんな力のある文章だった。
「左京!パパとなに話してたの?」
「圭介さんが書いた原稿のことだよ。な、明日、本屋に連れてって?」
「いいよ。街の中、案内してあげよっか。」
「俺、海が見たいなぁ~。」
「灯台の近くまで行けるんだよ?行ってみる?」
「ん~・・・橘花・・・もう一回・・・。」
「・・・だから親の前でやるなっての・・・。」
だが・・・明日か。
いいタイミングだ、と圭介は顔には出さずにそう思っていた。
ううっ・・・せっかく一度更新したのが消えてしまいました・・・。
どんな文章書いてたかとか、微妙な台詞のニュアンスとか思い出せなくって・・・。
無料のブログなんで文句は言えないけど、せっかく書いた記事が消えるというのはよくないよなぁ。
あ。
ちなみに、パパが書いた物語のタイトルは、『クレメンタイン・シェア・ハウス』である(^-^)
おはようございます♪
返信削除コメント欄が復活してる!
実は先週、コメントをしようとしたら出来なかったんですよ。
んで次に見たら、今回の記事が無くなってて。
ブログが不調だって言ってたからそのせいだったんですね。
とりあえずは直ったようでよかったです♪
私もはてなを始めた頃は結構不調がありました。
メンテナンスがしょっちゅうで、ブログの管理に入れなかったんですよ。
今ではそんな事はほとんどなくなりましたが。
無料とはいえ、困りますよね。
私なんか最初の時は、ブログが無くなるんじゃ…と、かなりビビリましたwww
さてさて物語の方なんですが、相変わらず左京たちが親の前でイチャイチャしてますね(笑)
パパの気持ちも分かるわwww
が、しかし…パパが何かをやらかそうとしてすね?
それはきっと…すごーく粋な事のように思えます♪
あのパパの事だもの…ねっ♪
楽しみ、楽しみ♪
にしても相変わらず田吾作はうざい(笑)
左京に電話を切られるのも無理はないwwww
まことんさん、おはようございます!!
返信削除ブログの不調で、ご迷惑をおかけしました・・・m(_ _)m
せっかく更新したのに、翌朝見たら消えちゃってて、でも、途中まで保存できてたので、せっせと書き直しましたよぉo(;△;)o
そしてまた、今、マウスの調子が悪い・・・orz
悪いことは続くもんだなぁ・・・。
コメント欄もなくなってたとは!!
なんだか、書きたくてたまらない時に書けないのって、ストレスですね~。
もう大丈夫かな?
Bloggerって、日本では、他に大手のブログサイトがいっぱいあるんで、あんまり使われてないけど、Googleとかと連動してて、便利なんですよね~。
同じアカウントで、何本もブログの立ち上げが出来るし、倉庫みたいなサイトも持てるし。
最初は使い勝手がよく分からなかったんですけど、(説明が全部英語なんだもん・・・)今ではお気に入りなので、今回のような何かのトラブルがあると、非常に困ります!
左京と橘花ですが・・・ほっといたらパパの前でも構わずにいちゃついてますwww
いくら温厚なパパでも、ちょっとイラっとくるくらい(ノ∇≦*)
パパの計画、もうお分かりかと思います!
二人には内緒で、こっそり進めてます♪
左京が驚く顔見るのが楽しみだわ~(^-^)
田吾作、なんでわざわざ電話してきたんでしょう・・・
彼は、心配性なんですね~。
この後1本更新します!
どうなるかな?イヒ♪