カスケード・ショアーズで成長し、ハイスクールも卒業した橘花は、アルバイトをしながら日々を送っていた。
定職に着かないのには訳がある。
「うふふっ。左京、カッコいい~。」
子供の頃から、ミュージシャンの佐土原左京の大ファンで、ライブツアーの度に追っかけをするので、時間に自由が利くバイトの方が都合がいいのだ。
そして、いつかは左京の住むサンセット・バレーに行って暮らしたい、と思っていたのだったが・・・。
「え?」
ワイドショーで、左京が言った一言が、橘花の運命を大きく揺り動かした。
圭介も、同じニュースをネットで見ていた。
「・・・ん?・・・なんかイヤな予感がする・・・。」
圭介は、この頃は、たまには本を書くこともあったが、出版社から仕事を貰い、取材記事を書くことで生計を立てていた。
「橘花、ご飯出来たぞー。」
「わ。また焦がしたの?」
「文句言うんだったら自分で作んなさい。」
「ワタシが作ってもいっしょだもん。あーあ。料理ヘタなのは遺伝だなー。」
「でも、不思議と不味くはないんだよね~。」
「お前・・・舌がおかしくなってんじゃないか?不味いよ。」
父娘二人の生活は平穏で、ゆったりと時間が流れていた。
けれど、その時間の流れが狂う時が迫っていた。
「ねぇ、パパ。ワタシ、ツイン・ブルックに行きたい。」
「ツイン・・・ブルック・・・?」
「あのねー、左京がね、今度からツイン・ブルックを活動の拠点にするんだって!」
「だっ・・・ダメダメっ!!危ないからダメっ!!」
「えー。大丈夫だよ。バイト代もちょっとは溜まってるし。」
「ダメですっ。」
「えー・・・。」
「お前、左京、左京って、ありゃ、おっさんじゃないか。」
「パパとおんなじくらいだもん・・・。」
「む・・・。」
圭介が反対しているのは、もちろん左京のことが原因ではない。
もう20年近く前にエリックと約束したこと・・・橘花が自分の意思で、ツイン・ブルックに行く、と言い出したら、その時は・・・と言った一言。
まさか、本当に橘花がそんなことを言い出す日が来るとは、圭介は半分は信じていなかった。
しかし・・・橘花は今、ツイン・ブルックに行きたい、と自分から言い出した。
信じていた半分・・・圭介は驚いていた。
「あの子・・・本当にクリストファー・クレメンタインの魂を継いでいるのか・・・?」
「いったい、なんの運命だ・・・。まるで、本当に引き寄せられたみたいに・・・。」
あの時エリックにそう言ったのは、そうでも言わなければエリックが帰りそうになかったし、圭介自身も本当に運命なんてものがあるのなら、橘花は言い出すはずだ、その方がドラマチックだ、と思ったからだ。
「・・・パパが反対するなんて珍しい・・・。今まで左京の追っかけで遠くに行ったって、なんにも言わなかったのに・・・。」
「・・・やっぱり、引っ越すっていうのがまずいのかなぁ。でも、反対されても行くもんね。」
橘花自身も、なぜだか妙な気分だった。
なぜか、『ツイン・ブルック』という街の名前を聞いた瞬間、どうしても行かなければ、という思いに捕らわれていたのだ。
「ねぇ、パパったら~。なんでダメなの?」
「ツイン・ブルックはダメー。」
「行ったことあるの?そんなに治安の悪い街じゃないと思うけど・・・。」
「ここよりは悪いよ。」
「そりゃあね。でも、それだけじゃないでしょ?」
「なんとなく、ツイン・ブルックって響きがダメー。」
「それ、ツイン・ブルックの人に失礼よ。」
「おかしい・・・。なんであんなに訳もなく反対するんだろ・・・。」
「認めてもらえなかったら家出してやるっ。」
いつまでも反対し続けるわけにもいかない。
そんなことは圭介にも分かっていた。
しかし、すんなり認めるのも、エリックの得意満面な顔が浮かんできて嫌なのだ。
「おっと・・・出版社から電話か・・・。」
「はい。・・・ええ。分かりました。・・・はい。」
「なんてタイミング悪いんだ・・・。」
「しかし・・・仕事じゃしょうがあるめえ・・・。」
このタイミングで取材旅行に出なければならなくなった圭介。
家を空ければ、橘花はその隙にツイン・ブルックに行ってしまうかもしれない。
それなら・・・認めた方がマシだ、と思っていた。
うおおーー!
長くなってしまったんで、いったん切ります~。
次回、ようやく過去編終了です!
ところでこの圭介パパ、本当にどこかにいそうな感じではあるんですが、
この顔、本当に人間臭いです。
こんばんわ~♪
返信削除いよいよ現代に近づいて来ましたね!
ふむふむ…そう言う事だったのか…。
って事はエリックは橘花が来るのを手ぐすねひいて待っていたんですね。
んで最初の方に続くんですね。
こうして見るとエリックの気持ちも分からないでもないです。
そうですね、彼は終わらせたいのかもしれませんね。
けれどそんな彼もまた、結局は今までの祖先と同様、
どこかでハマってるのも事実のような気がします。
ハマってると言いますか…何て言うんでしょう?
うまく説明出来ませんが、そんな感じです。
そして橘花にも何か感じるものがあったようですね。
ツイン・ブルックの街に行かなくちゃと思ったって事は
血が騒いだのでしょうか。
ちょっと鳥肌が立ちました。
面白い。
一緒に物語を作るという話、マジですよ!
そう出来たらいいな~なんて思ってました。
もちろんおたがいが暇な時とかにでもやりたいです。
誰も見なくてもいいですよね。自己満足で(笑)
私とユズさんさえ満足すればそれでOKです♪
気楽に楽しい感じでやりたいです。
マジで暇になったらやりましょうね!
なんだか楽しくなって来ましたよ♪
今夜はその夢を見そうです(笑)
又遊びに来ますね(*^^)v
まことんさん、こんばんはー!
返信削除そうそう。
こんな風に繋がってたんですね~。
話の流れは頭の中で作ってはいたけど、目に見える形にするのって、本当に難しい・・・。
たぶんこれ、最初っから読み返したら、細かい設定とか狂ってるんじゃないかなぁ。
ちょっと間が開いちゃったし・・・(^_^;)
でもこれで、その通り、最初に繋がるんですよね~。
エリックはかなり必死ですよ。
きっと橘花が遺言の通りの人物だ、って思ってはいるものの、確信はなかったし。
誰よりも遺言に囚われているのはエリックなんですよ。
だって、遺言を果たさなかったとしても、誰も責める人はいないんですよ。
でも、アーネストから続く、エヴァンス家の祖先の思いが、エリックに乗り移ってるといったらいいのかな?
そんな感じ。
このあと橘花は、自分がクレメンタイン家の血筋の人間だ、ということをちょっと考えちゃったりします。
いろいろ思い悩んだりして。
こういう、過去が絡んでくる話って、初めて作ったんですけど、難しいけど面白~い!
お話を作るのって、本当に楽しいですね♪
一緒にお話し、ぜひ作りましょう!!
そうそう。別に自分たちが面白ければいいんですよね~(^-^)
嬉しいなぁ♪なんだかわくわくします!
今の物語が終わったら、時間空けますので、ぜひ!!
どんな話しがいいか、ホントに夢見そうです(笑)