どうして道路を渡るの?

ようこそ、いらっしゃいませ!

こちらでは、EAのTHE SIMS 3での擬似日常をだらだらと綴っています。

*改めてごあいさつ*

長きにわたり、放置していてすみませんでした。

いつかは戻ってくる、と決めていたので、
移転や閉鎖もせず、けどいつの間にか2年半も経っていました。

やっと戻ってこれましたので、イチから出直します。

「君がいた世界」は、未完のまま終了です。
また、別館は閲覧できない状態にしています。

本当に、長い間留守にして、申し訳ありませんでした。

お気に入りリンクの整理、やっとしました。
リンク切れサイト様もいくつかあって、
2年半と言うのは長かったな・・・と改めて実感しています。

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主役ふたり、やっと揃いました。

Calico Capriccioso
第2話 新しい出会いとか再会とか

最終更新日 2015.04.03

水曜日, 8月 13, 2014

プロローグ 過去編⑥

アールがメドウ・グレンの町にやってきてから、もうすぐ1ヶ月が経とうとしている。


アールが来た日に初雪が降ってから、屋根も地面も真っ白なままだ。


「ケイちゃん、この辺って冬が長いの?ずーっと雪降ってるよね。」
「うん。でも、夏は夏で暑いよ。」

「夏はなにして遊んでんの?」
「釣りとか。」
「泳いだりしないの?」
「んー。ちょっとくらいは泳ぐけど。」

「俺、住んでるトコ港町でさ、海がすっげぇキレイなんだよ。」
「ホント?いいなぁ。」

「夏はさ、今度は俺んち遊びに来なよ。ばぁちゃんも一緒に。」
「それいいね!ばぁちゃんにおねだりしてみよっと。」
「な。いいだろ?」
「じゃーさ。ダイビングとか出来るの?」
「ダイビング出来る場所なんて、いくらでもあるよ!」

「アールくん、教えてね。」
「お・・・?おぉ・・・。」

アールはダイビングなどやったことはない。
けれどもケイに、こんな風に顔を覗きこまれて、教えてね、と言われてしまうと、強がるしかなかった。

「(・・・ま、帰ってから泳ぎも猛特訓するか・・・。)」

でも、ケイに、自分が生まれ育った街のキレイな海を見せてあげたい。
ケイと一緒に、海で泳いだり、潜ったりしたら、さぞ楽しいだろう、と思うのだ。


「う・・・。にゃんこ・・・。」

すっかり雪遊びにも慣れたアールが、この前ケイと二人で作ったイグルーで遊んでいると、ネコが近寄ってきた。

「ま・・・また飛び掛かるのかな・・・。」

そういえば、ケイが、ネコにも人の言葉が分かる、と言っていたのをふと思い出した。

「あ・・・あのさ・・・。飛び掛るのはナシで・・・。」

すると、ネコはアールの顔をちょっと見上げて、飛び掛りはせずに、鼻先を近づけてきた。

「え・・・?におい嗅ぐの?雪のにおいしかしないと思うけど・・・。」

アールが差し出した手を、ネコがくんくんとにおって、気が済んだのか、アールから離れていった。

ケイの言うとおり、言葉が分かるのかもしれない。

これはケイに報告しなければ、と思った。

「ケイちゃん、どこにいるんだろ?」



「あ。ピアノー。久しぶりだね。」
「たまには弾かないと、指がなまっちゃうからね。」

「ばぁちゃんのピアノの音、キレイだから好きなんだ。」
「そう?ピアノがいいのかもよ。」

ケイは、おばあちゃんがピアノを弾くところを見るのが大好きだった。
おばあちゃんは時々、思い出したようにピアノの前に座り、いろいろな曲を弾いては、ケイに聞かせてくれた。

「ケイもピアノ、覚えたいな。ばぁちゃん、教えて。」
「ばぁちゃんのは我流だからねぇ。覚えるならちゃんとした先生についたほうがいいよ。習いに行くかい?」
「ばぁちゃんに教えてもらいたいんだもん。」

「これ、なんていう曲?」
「”春の歌”っていうの。」
「へー。キレイなメロディ・・・。」

「ケイもこんな風に弾きたいなぁ。」
「このピアノ、ケイちゃんにあげるよ。」
「ホント?」

「ばぁちゃんが弾けなくなったらね。」
「・・・じゃ、いらない。」
「あら、どうして?」

「だって、ずーーっとばぁちゃんに弾いてて貰いたいもん。」
「ふふっ。そうかぁ。」

ピアノは覚えたいし、おばあちゃんがくれる、というのなら、このピアノを譲り受けたい。
けれどそれが、おばあちゃんが弾けなくなったら、というのであれば、話は別だ。

だったら、ピアノはケイのものにならない方がいい。

こうやって、ずっと側で聞いていたい。

そして、いつかピアノが弾けるようになったら、おばあちゃんと一緒に弾きたい。


・・・そんなことを考えながら、キレイなメロディに耳を傾けていた。




「ん・・・?ピアノの音・・・?」

ケイを探していたアールだったが、おばあちゃんの部屋の前を通りかかると、部屋の中からピアノの音が聞こえてきた。

「ケイちゃんもいるのかな?」

アールはそっと部屋の戸を開けてみた。

「ケイちゃん、いる?」

「ケイちゃ・・・。」

おばあちゃんがピアノで美しい曲を奏でている。
そして側では、ケイがうっとりとした表情でそれを眺めている。


「・・・。」

アールは言葉が出なかった。

ここには、自分が入っていけない世界がある。

ケイとおばあちゃんだけの空間だった。

それがなんだかたまらなくうらやましい。

アールがここにいるのに、二人ともまったく気付かずに、鍵盤から零れ出る音符の洪水に、二人の姿が霞んでいく・・・そんな気さえしたのだった。



「(ケイちゃん・・・)」

ケイといろいろな話をして、秘密を共有し合った。
いろいろなところに遊びに行って、ケイにいろいろなことを教えてもらった。

ケイとは、親友とも呼べる仲になったのではないか・・・なんて考えていた。

だけど、やっぱりケイは、自分とは違う世界の住人みたいだ、と思った。

「(ケイちゃんって・・・どういう子なんだろ・・・)」

この家は不思議だ。

自分の家にいるよりずっと自由に振舞える。

だけど、ふと我に返ると、アールは考えてしまっている。
『なにかが違う』、と・・・。

「(一緒に暮らせたら・・・。)」

それでもアールは、ずっとここにいたい、と思うのだ。
もっと、ずっと長い時間を、ケイとおばあちゃんと一緒に過ごして、自分もここに馴染みたい、と強く思うのだ。



「外が明るいな・・・。」

春が近付き、夜が明けるのが早くなってきた。
じきに雪も溶けるのだろう。

「あ。電話。」

「おとうさん・・・か。」

父親からの電話。

用件は分かっている。

アールがここを離れる時が近付いてきたのだ。

「もしもし。・・・うん。元気。おとうさん、仕事終わったの?」

「うん。・・・うん。ん?・・・うん、分かった。」

出張先での仕事を終えた父親が迎えに来る、という電話に、アールはうなずくしかなかった。
本当はここを離れたくない・・・ということは父親には言えない。
急に現実に引き戻されたような気がした。


「ケイちゃん、あのさ・・・。」
「ん?」

「おとうさんから、迎えに来る、って電話あったんだ。」
「あ、そっかぁ。もうすぐ冬休み終わりだもんね。」

「そっかぁ・・・。帰っちゃうんだね。」
「(あれ・・・?)」

ケイがちょっと寂しげな表情をした。
それがアールには意外だった。
ケイなら、あっさりと、『じゃ、元気でね。』などと言うかと思っていたのだ。

「あのさ、俺、手紙書くから。」
「うん。ケイも書くね。」

「また遊びに来るし、こないだも言ったけど、夏になったらウチにおいでよ。」
「うん。行くよ。」

ケイがちょっぴり元気がなくて、言葉数が少ないのは、自分との別れを惜しんでくれているのだ、とアールにも分かった。
ケイが自分と同じ気持ちでいてくれたことが、とてつもなく嬉しかった。




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過去編、次で終わりです。

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