どうして道路を渡るの?

ようこそ、いらっしゃいませ!

こちらでは、EAのTHE SIMS 3での擬似日常をだらだらと綴っています。

*改めてごあいさつ*

長きにわたり、放置していてすみませんでした。

いつかは戻ってくる、と決めていたので、
移転や閉鎖もせず、けどいつの間にか2年半も経っていました。

やっと戻ってこれましたので、イチから出直します。

「君がいた世界」は、未完のまま終了です。
また、別館は閲覧できない状態にしています。

本当に、長い間留守にして、申し訳ありませんでした。

お気に入りリンクの整理、やっとしました。
リンク切れサイト様もいくつかあって、
2年半と言うのは長かったな・・・と改めて実感しています。

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主役ふたり、やっと揃いました。

Calico Capriccioso
第2話 新しい出会いとか再会とか

最終更新日 2015.04.03

月曜日, 8月 25, 2014

プロローグ Side_K②

見知らぬ男に声をかけられ、訳の分からないことを言われたケイが、『今日は厄日だ』と思いつつ家に帰ると、テーブルの上に黒焦げの物体があった。

「おねえちゃん・・・。」
「な・・・なにかな?」
「これは・・・なに?」
「わ・・・ワッフル?」

「キッチンに立たないでって言わなかったっけ?」
「・・・食べるものがなかったから・・・。」
「せめてサラダくらいにしといてくんないかな。」

部屋中が焦げ臭いと思ったら、アイが黒焦げの料理を作っていた。
アイは、料理センスが皆無である。
ついでに、片付けもヘタである。
なので、無闇にキッチンには立たないでくれ、とケイは以前から言っていたのだ。

「だってサラダだけじゃ・・・結婚したらカレに手料理食べさせてあげたいし・・・。」
「そのカレとやらはいつ会わせてくれんの?」
「だって、まだプロポーズしてくんないんだもん。」

アイがピアノの音に文句を言ったり、時に酔っ払って帰ってきて暴れたり、はたまた、こんな風に突然料理を作り出したりするのは、すべて恋人がなかなかプロポーズしてくれない腹いせだった。

「プロポーズしてくんなくったって、会わせてくれてもいいじゃん。」
「ヤダ。家族になるのとならないのとじゃ大違いなんだから。」
「そのうちしてくれるよ。タイミング、見計らってんじゃない?」

「タイミングって・・・もう5年もつきあってんのに・・・。」
「男の人だって、決心つけるのに勇気いるんじゃないの?一生のことなんだし。」
「だって、あたし、もうアラサーよ。アラサー。」

「じゃ、おねえちゃんからプロポーズしちゃえばいいじゃん。」
「・・・ケイ、それ食べるの・・・?」
「食べるに決まってんじゃん。もったいない。」

「それ・・・さっきハエがたかってたよ・・・。」
「ハエがたかるってことは食べられるってことじゃん。」

ケイは、自分自身は料理がうまいが、食べられるならなんでも食べる。
けれど、出来れば食べたくはない。
そのためにも、アイの恋人がさっさとプロポーズしてくれて、アイを落ち着かせてくれればいいのに、と事あるごとに思っているのだ。


「あのね、それでケイったらね。」
「・・・あーお腹空いた。オニオンリングください。」

「ん?なにか言ったかな?アイちゃん。」
「なんでもないよっ。」

「そう?・・・あー。もう少し塩味が欲しいな。」

これがアイの恋人のディーン。
軍人である。

夜が遅い仕事のアイと、朝が早い仕事のディーンは、なかなか時間が合わないのだったが、ほんの少しの合間を割いては、デートを重ねていた。
そうやって重ねて重ねて5年。

お互い、結婚するのに早い、ということはない。

なのにディーンがまったく結婚の話を持ち出さないので、アイは焦れている。

「ね、ディーン。」
「ん?アイちゃんも食べたい?」
「あたしは食べてきたから。そうじゃなくって・・・。」

ケイの言うとおり、こっちからプロポーズしてしまおうか、とも思った。
けれど、もしディーンにその気がなかったら・・・。
なにか結婚の支障になるものでもあるのだろうか、とあれこれ勘繰ってしまう。


「アイちゃん。」
「な・・・なぁに?」

ケイに言われた一言のせいで、プロポーズしようかそれはアリなのかやっぱり待とうかどうしようかと、ぐるぐる考えていた。
考えている時にふいに話しかけられたので、アイはちょっと挙動不審になっていた。

「あのね。」
「う・・・うん。」

ディーンがいつになく真剣な顔をしている。
これは・・・と胸が高鳴ったが・・・

「トイレ行ってくる。漏れそう。」
「・・・やっぱり・・・。」

いつもこうだ。
いつもこうやってはぐらかされる。
ディーンは、アイが挙動不審だろうがなんだろうがお構いなしに、常にマイペースなのだ。

「なんなの・・・あの男・・・。」

アイにはディーンの真意が読めない。
でもこの人しかいない、と決めている。

「くっそ・・・飲んでやる・・・。」

これも毎度のこと。
いったいいつになったら決めてくれるのか・・・。
やはりこちらからもっと、ガンガンアピールするべきなのかもしれない。


「おねえちゃん、デート?」
「今日こそ決めてやるんだから。」

「よしっ!」

数日後、またしても気合を入れて、アイが出掛けて行った。
しかし、ケイには嫌な予感しかしない。

「あたしも出かけよっと。今日はちょっと遠出するか。」

アイが家にいなくとも、ピアノを弾き始めたら、ケイは時間が経つのを忘れてしまう。
アイがイラついて帰ってくれば、また怒られる。
それに、この前公園で弾いてみたら、存外気持ちが良かったので、少し遠くの場所に行って弾いてみようと思ったのだ。

「二区画くらい行けばいいかな?」

地下鉄に乗って、港の側まできてみると、広い公園があった。

「なんかキレイな公園!」

「ここなら大丈夫かも♪」

あたりに人影はない。
ここなら思う存分ピアノが弾ける。


しかし・・・

「やー。雨だ・・・。」

ケイが弾き始めて程なくして、雨粒が落ちてきた。

「キーボードがダメになっちゃ・・・う。」
「やぁ、ケイちゃん。」
「げ。」

キーボードを片付けていると、またしてもこの男が現れた。
もしかすると、ケイが気付かなかっただけで、ずっと見られていたのかもしれない。

「ジェイさん。なんでここにいるの?」
「偶然通りかかったんだ。」
「ストーカー?」
「偶然だって言ってんじゃん。」

「それはそうと、やっぱキミ、うまいなぁ。誰かに聞かせたいとか思わない?」
「思わない。」

「なんで?」
「ヘタだもん。」
「ヘタじゃないって。」

「一回、俺とセッションしてみない?」
「ヤダ。人と合わせたことなんかないよ。」

「雨でびしょびしょだから、もう帰る。」
「ちょっと待った。雨宿りしていかね?」
「ヤダ。」

なぜこの男は、こうも自分に執着するのだろう。
ケイには分からない。
だが、次の一言に目を見張った

「じゃー・・・グランドピアノ、弾きたくない?」
「グランドピアノ・・・?」
「そ。雨宿りに付き合ってくれたら、グランドピアノ弾かせたげる。」

「ホントに?」
「ホント。ホント。行く?」
「ピアノ弾くだけだよ。」
「OK。」

ケイはグランドピアノを弾いたことがない。
機会があれば弾きたい、どんな音が出るのだろう、と以前から憧れていたのだ。
ケイは、ジェイに連れられ、一軒のバーにやってきた。


「ここにピアノ、あるの?」
「あるある。」
「飲んでないで早く弾かせてよ。」
「まぁ待て。一杯くらい・・・。」

「じゃ帰る。」
「分かったって・・・。そこの向こう側。」

「こっち?」
「俺も行くから待てって。」

「わ!」

「ピアノ!」

「俺とセッションしよう。」
「だから人と合わせたことなんかないって。」
「俺が合わせる。なんでもいいから軽めの曲、弾いてみな。」

「じゃあ・・・。」

ケイが鍵盤に指を落とすと、ジェイがそれに合わせてギターをかき鳴らした。
グランドピアノの、重厚でいてけれども澄んだ音色と、アコースティックギターの弾けるような軽妙な音が重なり合い、空間を支配していく。

ケイは胸が高鳴った。

こんな感覚は初めてだった。




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長くなりそうなので続く。
ちなみに、ディーンさんのモデルは、もちろん某調査兵団の団長さんです。

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