どうして道路を渡るの?

ようこそ、いらっしゃいませ!

こちらでは、EAのTHE SIMS 3での擬似日常をだらだらと綴っています。

*改めてごあいさつ*

長きにわたり、放置していてすみませんでした。

いつかは戻ってくる、と決めていたので、
移転や閉鎖もせず、けどいつの間にか2年半も経っていました。

やっと戻ってこれましたので、イチから出直します。

「君がいた世界」は、未完のまま終了です。
また、別館は閲覧できない状態にしています。

本当に、長い間留守にして、申し訳ありませんでした。

お気に入りリンクの整理、やっとしました。
リンク切れサイト様もいくつかあって、
2年半と言うのは長かったな・・・と改めて実感しています。

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主役ふたり、やっと揃いました。

Calico Capriccioso
第2話 新しい出会いとか再会とか

最終更新日 2015.04.03

木曜日, 8月 21, 2014

プロローグ Side_K①

- そしていつしか時は流れ・・・

 

                   ・・・十数年後 -



「今日のゴハンは~♪何作ろっかな?~♪」

「野菜があるから、シチューでも作ろうかな?あれ?でも、肉あったっけ?」


ケイは成長し、高層ビルが立ち並ぶ、ブリッジ・ポートの街で暮らしていた。

「む~・・・やっぱりない・・・。」

「しょうがない。パスタにするか。ベーコンならあるし。」

ケイは、このブリッジ・ポートの高層アパートの一室で、姉の桐野アイと二人で暮らしていた。
アイは政治家の秘書をやっている。
仕事、仕事で帰りも遅い。
だから家の中のことは、ケイがすべてやっていたのだ。


「美味しくな~れ♪美味しくな~れ♪」

おばあちゃんから直々に教わったおかげで、ケイは料理がうまかった。
ケイは、子供のころ、おばあちゃんの側で、おばあちゃんが料理をするところを見ていたし、手伝ったり、ちょっとしたコツを教えてもらったりしていたのだ。

「ん。美味し。」

けれども、こうやって一人で食べる食事は味気ない。
どれほど年月が経とうと、慣れることができない。

「・・・ああ・・・イヤだな・・・。」

「空が重い・・・。空気が悪い・・・。車の音がうるさい・・・。」

「狭いよー息が詰まるよー。」

アイと暮らすようになってから随分経つが、ケイはどうしてもこの街に馴染めなかった。
アイの手前、生活できればどこでも一緒だ、と表情一つ変えなかったが、一人でいる時は、耐え切れずに、叫び出しそうになる。

そんな時は、ピアノの前に座る。


「んん~♪」

「む・・・ここで転調か。」

こうやって楽譜と向き合って弾いていると、気が紛れる。

ピアノの音に身を任せて没頭し始めると、ふ、っと身体が軽くなる。
ずっとこうやって弾いているせいで、我流ではあるが、ケイのピアノは、かなりの腕前になっていた。




「ケイ、あんたまた昨夜、ピアノ弾いてたでしょ。」
「あ。聞こえてた?ゴメン。ゴメン。」

「ゴメンじゃないわよ。夜中は弾かないで、って言ったでしょ。」
「んー。弾き始めたら時間忘れちゃってた。」

「あんた、いっつもおんなじこと言ってるじゃない!あたし、仕事で疲れてんの!」
「おねえちゃんも、いっつも同じこと。うぁ。雨、激しくなってきたよ?」

「あれ。ホントだ。」
「続きは中でやろ。」



「おねえちゃん、怒るとコワイんだもんなー。」

アイの機嫌の悪さは、仕事の忙しさのせいだけではないのを、ケイは知っている。

「この街、雨の日だけは好きなんだけど・・・。」

雨が、澱んだ埃っぽい空気を洗い流してくれる。
雨が上がれば、びしょぬれになったビルや道路が、シャワーを浴びた後のようにすっきりして、輝いて見えるような気がする。

「おねえちゃんを怒らせないようにしなくっちゃだな。」

アイには恋人がいる。
その恋人と、なんだかうまくいってない時は機嫌が悪いのだ。
だからといって、腫れ物に触るようなデリケートな振る舞いは、ケイには出来ない。


「だったら外で練習すればいいんだよね。」

雨が上がったので、ケイは近くの公園にやってきた。

「さーて。」

お祭りの会場が設営されているが、平日の昼間ならほとんど人はいない。
それに、スピーカーからガンガン音楽が流れていて、ケイが鍵盤を叩いても、周りに迷惑をかけることはないだろう。

「ふんふふふ~ん♪あー・・・楽譜がないと、ますます我流になるなぁ。」

「そうだ。かぼちゃに聞かせてやろう。」

目の前にかぼちゃ畑がある。
いつも観客などいないが、音楽で作物の成長が促されるというのも聞いたことがある。
せっかくなので、かぼちゃを観客に見立てて弾いてやろうと思ったのだ。


ケイがかぼちゃに向かってピアノを奏でていると、一人の男が足を止めた。

「へぇ・・・。」

「なかなかいいノリじゃん。」


「あれ・・・なんか見られてる・・・?」

その男の視線に、ケイは気付いた。

「なんで見てんだろ。あたしはかぼちゃに聞かせてんのに・・・。」

あくまでも観客はかぼちゃ、である。

ひとしきりピアノの練習をして、そろそろ帰ろうか・・・と立ち上がると、じっとケイがピアノを弾くところを見ていた男が近付いてきた。

「ね。キミ、この街の子?」
「うん。」
「見たことないねー。名前なんて言うの?」
「ケイ。」

「俺、ジェイってんだ。ねぇ、ケイちゃんは いっつもここでピアノ弾いてんの?」
「ううん。初めて。」

「うまいなぁ。驚いたよ!音楽活動とかやってんの?」
「音楽活動?」
「どっかの楽団に入ってるとか、バンドやってるとか。結構練習してるだろ?」
「楽団?そんなもの入ってないよ。いつもは家で弾いてるだけ。今日はかぼちゃに聞かせてただけ。」

「かぼちゃ?そんなもんに聞かせるなよ!もったいない!人に聞かせろよ。人に!十分金取れるレベルだぜ?」
「だってかぼちゃの成長促進になるでしょ?」

「きっとかぼちゃも喜んでるよ!」
「あのさー・・・。」

「かぼちゃは拍手してくんないだろ?俺さ、バンド組んでんだ。一回俺たちのバンドで弾いてみない?」
「えー。ヤダ。」
「お・・・っと・・・。」

「もう帰る。ゴハンの用意しなきゃ!」
「そっか。」
「じゃあね。」

「変わったヤツだなぁ。かぼちゃかぁ。」

「しまった・・・。俺としたことが連絡先も聞いてないぞ。」


「あーびっくりした。」

ケイは逃げるように公園を後にした。

家から近い、というだけでここに来てみたが、あんな風に声をかけられるなんて、思ってもみなかった。

「次は違うとこ行こう。」

彼・・・ジェイと名乗った男は、『金が取れるレベル』と言ったが、ケイにはどうしてもそうは思えない。
ピアノを弾くことと、お金を稼ぐということがどうしても結びつかない。

しかし、彼とは今後、長い付き合いになるのだった。




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大人編、始まりましたが、まだプロローグ。
本編はまだまだ先であるのだった。

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