「初めまして。ケイっていいます。」
「有住ディーンです。あんまりアイちゃんと似てないね。」
初めて会う姉の恋人。
以前は・・・ディーンと付き合う前は、よくボーイフレンドを連れてきていたアイだったが、ディーンに限っては、会わせてくれたことは一度もなかった。
ただ、話しはしょっちゅう聞かされていた。
仕事熱心で真面目で、でも空気が読めなくて、でもとても優しいのだ、といつも言っていた。
「あっ・・・あの、あたし、飲み物でも用意するから、くつろいでて。」
「そんなに気を遣わなくってもいいよ。」
「でも・・・。」
「じゃ、ボクは麦茶で。」
「・・・コーヒーか紅茶じゃダメ?」
アイがキッチンへ行ってしまったので、必然的に、ケイとディーンは二人きりになった。
ただし、キッチンはすぐそこなので、二人の話しは筒抜けだ。
「ケイちゃん。それ、可愛い服だね。」
「でしょ?」
「素晴らしい。」
「ディーンさんはおねえちゃんのどこが好き?」
「全部。」
「顔も?」
「身体も。」
「性格も?」
「全部。」
「雪ダルマ、好き?」
「大好き。」
「後で一緒に作って?」
「いいとも。」
この人とは気が合う・・・面白そうな人だ、とケイは思っていた。
「そうだ。アイちゃんの部屋が見たいな。」
「おねえちゃんの?いいよ。」
「こっちだよ。」
「アイちゃん、お邪魔するね。」
「どうぞー。」
アイがお茶の用意をする間、ケイはディーンに部屋の中を案内した。
と、言っても、狭いアパートの部屋だ。
見せる場所などさほどありはしない。
「ここがおねえちゃんの部屋だよ。」
「ほぉ・・・キレイにしてるな。」
「慌てて掃除してたもん。いっつもは服とか脱ぎっぱなしだし。」
「アイちゃんらしいな。」
「ディーンさんはおねえちゃんのそういうとこも好き?」
「お兄様と呼んでくれてもいいぞ。いや、むしろ呼んでくれないか。」
「お兄様かぁ。家族になるんだよね。」
「その通り。」
なんだかジーンとした。
『おにいさん』と呼べる人が出来るのだ。
だからアイは、この人がちゃんとプロポーズしてくれるまで、ケイに会わせてはくれなかったのかもしれない。本当に家族になる人でなければ、ケイががっかりするだろう、と思ってくれたのだろうか。
けれど、今まで会わせてくれなかったのは、そんな理由ではなかった。
「ところでケイちゃん。」
「んー?」
「ケイちゃんはボクの妹ちゃんになるわけだが。」
「うん。」
「我が家には古くからのしきたりがあって。」
「なに?」
なんだか重たそうな話をディーンがし始めた、と思ったが・・・。
「結婚する相手に姉妹がいる場合、一緒にいただくことになっているのだ。」
「いただく?一緒に結婚するの?」
「重婚はよろしくないので、おいしく味見するだけだ。」
「おいしく?味見・・・?。・・・あ。」
振り返ってみると、ディーンが半裸でベッドに寝そべっている。
「さぁ、妹ちゃん。ここに来たまえ。」
「そういうことかー・・・。」
そんなしきたりがあるとは知らなかった。世間は広いな・・・とちょっぴり感心した。
「さぁ!」
「うーん・・・。」
ここはしきたりに従うべきだろうか。
そうでないと、アイが結婚できなくなってしまうかもしれない。
「むー・・・覚悟決めるか・・・。」
「さぁ!遠慮することなどないぞ。カモン!」
「仕方ないなぁ・・・。」
覚悟を決めて、この人に抱かれるしかないか・・・とケイは服を脱ぎかけた。
「人のベッドでなにやっとんじゃ。なにがカモンだ。この変態。」
「ごふっ。」
「あ。おねえちゃん。」
アイの鋭い蹴りが炸裂していた。
「バカなことしてケイをからかわないでっ。」
「いやー・・・。」
「アイちゃんの蹴りはいつもながらキレがいい!」
「バカもの。」
「ボクは君に蹴られたくて、ついバカな真似をしてしまうんだ。」
「・・・おねえちゃん。」
「ケイも真に受けないでっ。」
「しきたりってウソなの?」
「いやぁ。ウソじゃないさ。妹ちゃん。」
「黙れ。さっさと服着て来い。変態。」
「了解。」
「おねえちゃん・・・。」
「あ・・・あのね・・・いつもは真面目くさってんだけどたまにあんな風におふざけが・・・。」
アイが、ディーンを今まで家に連れてこなかったのは、これが原因だった。
普段は真面目で、ちょっと人と感覚がずれていることもあるが、人当たりのいい青年なのだが、妙な性癖があるのだ。
実は、アイとはその辺りもピッタリと合っていて、女王様気分を満喫させてくれる人なのだが、世間的に見れば変態だ。
しかし、まさかいきなり初対面のケイに、それを暴露するとは思わずに、アイは動揺した。
だが、ケイはそんなことで動じる子ではない。
「な・・・なによそれ・・・。」
「いいよ。おねえちゃん、すごくいい!」
「ど・・・どういう意味よ。」
「さすがおねえちゃん!あの人、面白い!」
「それ褒めてんの?けなしてんの?」
「褒めてるに決まってんじゃん。あの人がお兄さんになるなんてサイコー。」
「気が合うとは思ったけど。あんたたち・・・。」
「幸せになって。」
「え・・・うん・・・。」
「ケイったら・・・あ・・・ありがとう。」
「うん。」
ケイが急に真顔になって祝福してくれたのが、アイには照れくさかった。
「ねーねーおにいさまー。でっかいの作ろうよ。」
「よしきた。」
「このくらいかな?」
「いいね!」
ケイはすっかりディーンのことが気に入り、一緒に雪ダルマを作ろう、とせがんだ。
ディーンはそれに快く応じたのだ。
「はぁ。寒いのに二人ともよくやるわ・・・。」
「でも・・・。」
二人とも、お互いを気に入ってくれてよかった。
なんとなく・・・あの二人は気が合うような気はしていた。
けれど実際のところは、会って話をしてみないことには分からない。
もしかすると、ケイがディーンのことを知って、嫌悪することも考えられる。
もしケイに反対されたら・・・
それでもアイは、ディーンの側を離れたくなかったし、けれど、ケイと疎遠になってしまうのもイヤだった。
たった一人の妹・・・そして、たった一人の生涯の伴侶。
アイは、どちらも失いたくなかった。
「妹ちゃん、君はなかなかスジがいい!」
「当然。寒いトコで育ったんだもん。」
「おや?この街の生まれ育ちではないのかい?」
「生まれたのも育ったのも違うよ。」
「アイちゃんはずっとブリッジポートで暮らしていると言っていたが?」
「おねえちゃんとは一時期離ればなれだったんだよ。」
「そうか。ご両親は早くに亡くされたのだったな。」
「うん。親がいなくなってから、あたしだけばぁちゃんと一緒に暮らしてたんだー。」
「ふーむ・・・。ま、ウチも似たようなものだがな。」
「ディーンさんもご両親、いないの?」
「そうだ。やはり子供の頃亡くなってな。弟がいるのだが、二人で生きてきたんだ。」
「弟さんいるの?」
「君より年上だから、お兄様がもう一人増えることになるな。」
「そういえば、ここに呼んであるのだが・・・遅いな。」
「どんな人?」
「ま、ひとことで言えば、女好きのちゃらけた奴だ。」
「似てないの?」
「全然似てない。」
二人がそんな話をしている時、呼び鈴が鳴った。
「あれ?誰か来た。」
「・・・ああ、しまった。アイちゃんに、弟が来ることを言っていなかった。」
「雪ダルマ、も一個作ろ?」
「いいとも。」
ケイとディーンはすっかり打ち解け、再び、せっせと雪ダルマを作り始めたのだった。
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ディーンさんはMです。
それというのも、団長さんのヌードコスプレがあまりにも衝撃的だったからです。
↓こういうヤツです。(閲覧注意)
コスプレ写真はベルトだけつけてました。だってコスプレですもの(^^;)
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