
「・・・やはり警察に・・・。」

「・・・いやいや・・・新聞沙汰になどなったら、左京さんの名前に傷が・・・。」

深夜を過ぎ、あたりは静まり返っている。
「・・・しかしこの家は・・・こんなに煌々と灯りをつけっぱなしで勿体無い・・・。節電、節電。」

と、田吾作は、この場所だけ残して、消灯して回った。
「これでよしっ。」

とにかく立ったり座ったり。
なにかしていないと落ち着かないし、それに・・・。
「・・・やっぱり左京さんを探しに行こうか・・・。」

その時、部屋の戸が開き、ロッタが出てきた。
「わ。暗ーい。なんで電気消えてるんだろ・・・。」
「節電です。」

「タゴさん・・・まだいたんだ・・・。」
「タゴさんって・・・。」

「・・・あなたはこんな深夜に何を?」
「エッチしたら身体軽くなったから、踊ろうと思って。タゴさんも一緒に踊る?」

「えっち・・・。」

実は田吾作は、眠気が限界に達していた。
左京のことは心配だったが、黙って座っているだけでは、睡魔に負けて陥落してしまいそうだったのだ。
「・・・お付き合いしましょう。」

なので、ロッタの誘いに乗って、踊ることにしたのだ。
「ん~・・・やっぱ暗いなぁ。電気、つけるよ?」
「勿体無い。これで十分です。」

「タゴさんって変な人だね~。」
「そうでしょうか・・・。名前は変だとよく言われますが・・・。」

「しかし・・・ロッタさん、あなた、こんな夜中になぜダンスを・・・?」
「あたし、夜のお仕事だからさぁ。夜中帰ってきて、いっつも踊ってるもん。」
「夜のお仕事とは・・・歌舞伎町の女王かなにか?」

「ゴースト・バスター!!」
「ご・・・ゴースト!?」
「幽霊退治屋なの!今もそこにいるよ?」
「え・・・えええええっ!?」

実は田吾作は、幽霊とか怪談といった類いのものが苦手だった。
「ゆ・・・幽霊・・・。」
「コワイ?」
「こここ怖くなどありませんっ!!踊っていれば・・・忘れます!!」

「思いっきりノリノリの曲を!!」

眠気と怖さを忘れる為に、田吾作は思い切り踊った。
「♪寄せて寄せて」

「あげてあげて♪」

「そ~れ」

「そ~れ」
「そ~れ」

「そ~れ!!」

「・・・変な曲~。」

田吾作が、妙な踊りを踊り始めたので、さすがのロッタも興が冷めてしまった。
「やっぱり電気、つければいいじゃん。」

「・・・あたし、お風呂入ろうっと。」
「ヘイ!ヘイ!」

そう言ってロッタが立ち去ってしまっても、田吾作はまだ踊っていた。
妙に気分が高揚する。
限界を超えて、ナチュラル・ハイになっていた。
「おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい♪」

「でかいヤバイ♪」

「夢いっぱい♪」

「鶴は千年!」

「亀は万年!!」

「おっぱい」

「だけは!Fuーーー!!」

「♪永遠だか~ら~っ!!!」

「あっ!まだ踊ってる!!あたし、もう寝る~。」

それでも田吾作は踊り続けていたが、やがて暗闇が去り、夜明けが訪れた。
「あ~・・・」

「・・・っと・・・ととと・・・。」

「いかん・・・ねっ・・・眠い・・・っ・・・。」

徹夜で踊り続けたのである。
すっかり疲れきって、朝の光が眩しくて目の奥がチカチカする。
「い・・・いや・・・ここで寝ては・・・。」

しかし・・・
バタンっ!!
「ぐーーーーっ・・・。」

米沢田吾作、陥落。
「さぁ。メシ、メシ~。」

「うぉっ!なんだ、コイツ!こんなとこで寝てやがる・・・。」

すっきりとした目覚めを迎えたギルだったが、田吾作がぶっ倒れているのを見て驚いた。
こんなところで寝なくとも、せめてソファーで寝ればいいのに・・・と、ギルは仕方なく、田吾作を左京の部屋に運び込んだ。
「橘花・・・おはよ。」
「ん・・・。」

「・・・おはよ。」
「よく眠れた?」
「うん。」

もう日が高い。
二人とも、ずいぶんとぐっすりと眠り込んでしまったようだ。
「あー・・・俺・・・幸せだ・・・。目が覚めたら、お前の顔が目の前にあるなんて・・・。」

ずっと、こんな朝を迎えることを夢見ていた。
橘花が眩しそうに目を細める。ただそれだけのことなのに、そんなしぐさが愛おしい。
「ね、ギルの結婚式って・・・明後日だよね?」
「あ、そうだ。・・・忘れてた。」

「忘れてたの?ひどーい。」
「この一昼夜は忘れてた。そんなこと考えるヒマ、なかったし。」

「今日は帰らなきゃ・・・ダメだよね?」
「ん~・・・別に帰らなくてもいいと思うんだけど・・・。」
「だって・・・誰にも連絡してないよ?」

「平気だよ。携帯も鳴らないし。誰も心配なんかしてないって。」←だから電源入れ忘れてるんだってば・・・
「そうかなぁ・・・。ワタシ、携帯の充電、切れちゃってるんだけども・・・。」

「んー・・・じゃ、1回帰るか・・・。」
「うん・・・。」

「ずーーーっとこうやってたいんだけどなぁ・・・。」
「仕事は?」
「いいんだよ。もう本番のライブにしか行かないってマネージャーに宣言したんだから!」

「え~っ?強気ーっ!」
「ウザイんだもん。あいつ。」

「だからさぁ・・・もうちょっと・・・。」

「・・・俺・・・勃ってきちゃったんだけど・・・。」
「こんな朝から・・・?」

「朝だからだよ。・・・あと貯金、3回分、あるだろ?」←1回しか出来なかったらしい・・・
「えー・・・。・・・ね、行きたいとこあるんだけど・・・。」

「行きたいとこ?」
「・・・うん。もう一度・・・。」

「あの場所に行きたい。」
「ん?野外劇場?」
「うん。あそこで左京のギター、聴きたい。」

「ん~・・・じゃ、パンケーキ、作って?」
「フルーツ、なんにもなかったと思うよ?」
「なんにも入ってなくていいから。」

「分かった!じゃ、作る。」
「よしっ。」

「ん~・・・なんにも入ってなくっていいとか言うけど・・・。」

↑昨夜のシチュー、腐ってるけど気にしないでね!
「美味しいのかな?」
「毒味、毒味っ。」
「あっ!なんだよ!先に食べるなってば!」
「だって、美味しいかどうか分かんないんだもん。」

↑シチュー・・・
「いや・・・うまそう!」
「そう?」

「どれ・・・。」

「・・・美味い・・・。」
「それ・・・好きだからなんでも美味しいんじゃないの?」

「何言ってんだよ!俺が美味いって言ってんだから美味いの!!」
「う~ん・・・(なんか違う気がする・・・)」

なにも入っていないパンケーキが美味しいとも思えなかったが、左京が喜んでいるのだから、それでいいのだろう、と思った。
そして、またこの場所にやってきた。
「ね!ギター弾いて!!」
「何がいい?」

「楽しい曲がいいな。」
「じゃ、新曲、歌ってやろうか?」
「うんっ!」

「こんなんだぜ?」

「ふふっ。」

左京の声が、ギターのリズムが、空間に広がり、空気に溶けていく。
自分たちは、ここから始まった。
だからもう一度、ここで左京が歌うのを見て、あの時のいい知れぬ高揚感と、ときめきを思い出したかった。
『・・・カッコいい・・・。』

自分は一番、左京の傍にいて、そして一番のファンであり続けたいと思う。
生身の左京に抱かれるエクスタシーとは違う、夢のような興奮とドキドキ感も、合わせていつまでも持ち続けていたいと思っていた。
・・・またやっちまった田吾作オンステージ。
やめようやめようとは思うんだけど、つい。
田吾作が踊っているのは、『爆乳音頭』。
実存する歌です。つべでググっていただければ、いっぱい出てきます。
あと、おまけ。